欧州

2026.03.02 07:00

NATOとEUに求められる戦略転換 米国が欧州防衛から手を引く中

イタリア南部シチリア島で実施された北大西洋条約機構(NATO)主催の軍事演習。2026年2月23日撮影(Baris Seckin/Anadolu via Getty Images)

一方、欧州の視点から見れば、80年間にわたり安全保障負担の大部分を米国に依存してきた経緯を踏まえると、この戦略的再調整は大きな不安をあおるものだ。米国は大西洋で隔離されているが、欧州はロシアと直接接する形で無防備な状態にある。ロシアが占領しているウクライナ東部ドンバス地方、南部のアゾフ海沿岸部とクリミア半島が同国の領土のわずか5分の1に過ぎないとしても、ロシア軍の進撃は欧州の中心部に不快なほど接近している。当然のことながら、欧州の首脳は、ロシアが経済力や軍事力を回復すれば、再び西進を図ろうとするのではないかと懸念している。

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したがって、欧州諸国にとっての差し迫った課題は、いかにして安全を確保するかだ。これほどの規模の変化は大きな不安をあおるものであり、国家とその国民が新たな現実を認識し適応するには時間を要する。現状は慣れ親しんで安心できるものだが、変化は不確実性とリスクをもたらし、極めて厄介なものになり得る。これが旧体制への執着と、トランプ政権の行動は永続的なものではなく、任期が終われば事態は元に戻るだろうという期待を説明している。

願望はさておき、欧州の首脳は元の状態に戻ることは不可能だと理解している。さらに、ボールは自分たちの側が握っており、自らの地域のために新たな安全保障の枠組みを構築しなければならないことを認識している。あらゆる形態の集団行動に対する最大の課題は、単一の主権主体である米国とは異なり、欧州連合(EU)は27の国民国家の集合体であり、それぞれが独自の義務と制約を抱えている点にある。米国に追随するのは容易だが、欧州の指導体制について合意に達するのははるかに困難だ。

北大西洋条約機構(NATO)が効果的に機能したのは、主に米国が組織原理として機能し、EU軍最高司令部(SHAPE)と米国主導のEU軍最高司令官(SACEUR)の機構を通じて制度化されていたためだ。欧州諸国の軍隊は、自国の指揮官の下で行動するより米指揮官の下で行動する方がはるかに容易であり、これは歴史的な対立関係を抑えるのに役立った。だが、米軍による指揮がなくなった際、果たして英軍がフランス軍の指揮官の命令を受け入れるのか、あるいはフランス軍がドイツ軍の指揮に従うのかは、全く不透明だ。さらに事態を複雑にしているのは、ポーランドをはじめとする中東欧諸国の台頭だ。これらの国々はロシアに近接していることから、西欧諸国よりはるかに深刻な脅威を感じている。

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翻訳・編集=安藤清香

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