悲観論がまたもや現れた。Citrini Researchが公表した新たなレポートは、人間の知性に対する需要が崩壊すると予測している。
しかし、スタンフォード大学のAI専門家の1人は異なる見方を示す。AIは仕事を増幅する点で優れている一方、少なくとも当面の間、人間の労働者を置き換える可能性は低いというのだ。課題の1つは、AIエージェントには常に人間の監督が必要であり、分析ツールの前例と同様に、事後的にしか物事を捉えられないことである。
そう語るのは、スタンフォード大学「Human-Centered AI」研究所のセンターフェローであり、『Shared Wisdom: Cultural Evolution in the Age of AI』の著者でもあるアレックス・「サンディ」・ペントランド氏である。人間は常にAIを注視し続ける必要があると、マイケル・クリグスマン氏がホストを務めるCXOTalkで、同氏は述べた。
AIは人間ほど賢くなることはおそらくない、とペントランド氏は考える。「AIは過去を振り返るデータで訓練されているので、未来に何が起きているのかを本当の意味で知ることはできない。だから『これが答えだ』と言ったとしても、それは過去に基づいているだけで、過去の結果は未来の答えを正当化しない」
AIは「世界の中にいるのではなく箱の中で生きているので、文脈や時事に対する感度が低い」と同氏は説明する。「私たちは皆、少なくとも短期的には、AIよりも未来をうまく予測できる」
AIの限界が際立って見える例として、同氏は金融サービスを挙げた。クオンツやヘッジファンドのマネジャーがAIをどう使っているかを考えてみるといい。「AIをセットアップして、あとは放置するのか。もしそれをやれば、大金を失う」。AIはバックテストや事後レビューに依存しており、顧客口座に影響を与え得る要因を理解するための文脈を欠くことが多い。たとえば、国際貿易における揺れ動く関税がもたらす予測不能な影響を考えてみればよい。
AIシステムに投入されるデータは「実際にはすべて過去を振り返るものだ」とペントランド氏は言う。「未来をうまく予測できない。だから人がそこに入り、直感を加える。するとリターンが改善する。人+AIはAIだけより良く、人だけよりも良い。そして変化が起きたりリスクが生じたりするとき、人が本当に重要になる」
もう1つの問題は、経営者がAIでどんな優位性を狙うべきかを把握していないことだ。AIの成果は従来の意味での生産性ではなく、AIがもたらす「集合知(collective intelligence)」として捉えるべきだとペントランド氏は主張する。多くの企業が犯す誤りは、労働者のスピードを測定することでAIの利点を求めようとすることであり、本来注目すべきは、協働を通じて達成している利益の総和である。
ペントランド氏が見出したところによれば、一部の組織は従業員のために「AIバディ」を作り、人間とAIの協働を確立しようとしている。AIバディはマニュアル、レポート、ニュースレターを読み込み、人々が仕事環境を形作る要因や目の前のタスクの理解を深めるのを助ける。「人は世の中にあるさまざまなマニュアルやレポートをすべて読むことはできないが、AIならできる。関連しそうなものを拾い出せる。非常に優秀な司書がいるようなものだ」
最終的に、AIの利用が進むにつれて、こうした単純なサービスから、プロセスの再設計を助ける方向へ移る必要があると同氏は言う。「プロセスを考えるうえで良い方法の1つは、データがどこにあるかだ。互いに会話していないデータがあるなら、そこに機会がある。AIは2つのデータセットを結合し、密接に関連するものを見つけ出せる」
さらに、「互いに関係のあるサイロが見つかったなら、そのサイロを代表する人々とAIの間で対話を始め、『これをどう再編する機会があるか』と問うことができる」
ここで重要になるのが人間という次元だ。成功した実装が雇用削減を意味するかのような示唆ではなく、報酬を提示すべきである。「『よし、こうしたデータセル、データストリームがある。どう組み合わせれば、より良いプロセスをつくれるか』と言いたいのだ」
これを「解雇のための手段ではなく、人々が協働してより良いプロセスを開発する機会として捉えるべきだ」と同氏は促した。



