経済・社会

2026.03.02 08:30

イランのホルムズ海峡封鎖の脅しは、現実より誇張の可能性がある

ホルムズ海峡(Shutterstock)

なぜ起きない、起きても長続きしない可能性があるのか

第一に、封鎖は米国の海軍・空軍によるほぼ即時の対応を招く可能性が高い。そうなれば、イラン自身の沿岸線とすべての港湾が、はるかに優越する米国の航空・海上打撃力の前で脆弱になり得る。近隣のバーレーンには米海軍第5艦隊が置かれており、すでに敵対行為の一部となっている。

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さらに、この作戦はそもそも実行段階にすら至らない可能性がある。第5艦隊の統合任務部隊のうち少なくとも4部隊がペルシャ湾と海峡を日常的に哨戒しており、その監視が奇襲の効果を失わせうるからである。現在、2つの米空母打撃群もこの地域に展開している。

第二に、この動きはイランにとって自滅的になり得る。封鎖はイラン自身の原油輸出にも影響するからだ。産業データの集約・調査会社Kpler(ケプラー)によれば、イランは原油とガス・コンデンセートを平均で日量165万バレル輸出している。

制裁下で割引価格となっているイラン産エネルギー輸出の大半(90%)は中国向けである。さらに、海峡を通過するエネルギー輸出のうち、イラン産であるか否かにかかわらず、半分超も中国へ向かっている。

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要するに、中国は世界最大の炭化水素(石油・天然ガス)輸入国である。海峡封鎖は、イラン産原油の最大の引き取り手である北京の圧力の下で、維持が極めて難しくなり得る。

第三に、こうした事態が仮に一時的に起きたとしても、その威力は一部薄れている。地域の原油輸出がすべて止まるわけではないからだ。主要輸出国のサウジアラビアとUAEには、輸送を切り替えるためのパイプラインという代替手段がある。

サウジの場合、最大で日量510万バレルを東西パイプラインで移送し、紅海側から積み出すことが理論上可能である。もっとも、このルートは現在、イラン支援のフーシ派反政府勢力(イエメン)による攻撃の影響を受けやすい。

UAEはより有利な立場にあるようだ。アブダビからフジャイラへ至るパイプラインは2012年に稼働を開始し、日量150万バレルの輸送能力を持つ。その終点であるフジャイラ港は、UAEを構成する7首長国のうち唯一、ペルシャ湾ではなくオマーン湾のみに海岸線を持つ港である。イランが繰り返し遮断すると脅してきたペルシャ湾側を回避できる。

海峡を迂回するフジャイラ港は、必要とあればUAEの総原油生産量の75%近くを出荷できる能力を備えている。

ただし、イランのIRGCによる海峡での小規模な衝突や妨害行為の可能性は排除できない。これには、例えばイランの主要顧客である中国向けではないエネルギー貨物への攻撃などが含まれるが、それに限定されるものではない。

さらに、海峡でのエネルギー貨物の無差別な拿捕の可能性もある。これには前例がある。しかし全体として、全面封鎖は始めること自体が難しく、長く維持するのはなおさら難しい。

すべてを考慮すると、イランは1979年のイスラム革命以来、ホルムズ海峡の封鎖を脅し続けてきたが、実際にそれを試みたことも、公式に実行したこともない。同地域は現在、未知の領域に踏み込み、はるかに広範な地域紛争の渦中にあるが、その事実自体が多くを物語っているようだ。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

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