経営・戦略

2026.03.01 08:36

BtoB企業も無関係ではない 消費者ブランドの成功法則5選

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消費者ブランドに助言する仕事をキャリアとして積むと、あるパターンが見えてくる。彼らは人に徹底的にこだわる。消費者こそが事業を動かす存在だと理解しているからだ。そのため、市場に投入するあらゆるものに、執拗に耳を傾け、テストし、磨き上げ、感情的知性を組み込んでいく。

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そのマインドセットはいま、消費財の枠をはるかに超えて広がっている。私たちが関わるほぼすべての分野──エネルギー、輸送、ライフサイエンス、さらには重インフラに至るまで──で、企業は最終消費者が価値の方程式の中心にあることに気づき始めた。最終消費者に直接販売しているかどうかは関係ない。

10年前、モバイルアプリが必要になると想像していた電力会社はほとんどなかった。だが今では、顧客はスマホで家庭のエネルギー使用量を追跡し、事業者を比較する。ライフサイエンス企業はかつて医師だけに焦点を当てていたが、今や患者は市場にあるあらゆる治療法について情報を得た状態で受診する。空港は以前、処理能力で成功を測っていた。いま評価されるのは体験である。

あらゆる企業は、ある意味で消費者企業になった。成長を加速させるために、非消費者向けブランドが消費者ブランドの教科書から取り入れるべきことを5つ提案したい。

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1. 最終消費者から始める

多くの企業は、人が必要としているものではなく、自分たちがつくれるものから出発する。電力、エネルギー、ライフサイエンスでは、工学や研究開発が歴史的に意思決定を主導してきた。しかし、消費者を起点にすると、すべてが変わる。

空港ターミナルを設計するなら、旅客数や搭乗者1人当たりのコストだけを考えてはならない。交通のボトルネック、分かりにくい案内表示、仕事や休憩ができる場所の不足といった、旅行者の不満を考え、それらの摩擦を取り除く設計にすることだ。たとえばポートランド国際空港は、再生素材と今では象徴的となったカーペットを用い、改装を地元文化の祝祭に変えた。結果として、人々がただ通り過ぎるのではなく写真を撮る、市民のランドマークになった。

デザイン思考は共感から始まる。サービスの対象となる人々の足跡をたどり、彼らの体験を、つくるものすべての組織原理に据えよ。

2. 自社ブランドが何を体現するかを定義する

何十年もの間、ブランドストーリーテリングに多額の投資をしてきたのは消費者企業だけだった。強いブランドは信頼を築き、消費者の選択を簡素化することを理解していたからだ。しかし今日、すべての企業はブランドである。違いは、それを意図的にマネジメントしているかどうかにすぎない。

テックを例に取ろう。ChatGPTとDuckDuckGoはいずれも情報を検索し収集する手段を提供しているが、価値観によって差別化している。一方は会話調を核に据えた新しい検索アプローチを定義し、もう一方はプライバシーに完全に焦点を当てたプラットフォームを構築した。どちらにも熱心な支持層がいる。消費者が企業の掲げるものを可視化できるようになるにつれ、その価値観は信頼の源にも、緊張の火種にもなる。

PA Consultingの「Brand Impact Index 2025」は、自らの価値観と一致し、世界に良い影響を与えていることを示す企業に対して、顧客のロイヤルティがはるかに高いことを示している。この期待は、エネルギーや保険から物流、ヘルスケアに至るまで、あらゆる分野に及んでいる。

ブランドが何かを明確に体現していなければ、消費者はそれを体現する別のブランドを選ぶ。

3. より良い意思決定のためにデータを貪欲に取り込む

消費者ブランドは、顧客ニーズを理解するために常にデータを収集している。たまにアンケートを取るだけではない。エコシステム全体で、人々が何をして、何を語り、何を見ているのかを理解することが重要だ。

メドテック企業は医師経由で販売しているかもしれないが、いま患者は調査や比較、好みを携えて診察室に入ってくる。最も成功している企業は、取引が仲介者を通って流れる場合であっても、最終消費者の声に耳を傾ける。

同じことは公共インフラにも当てはまる。有料道路、鉄道駅、スマートシティのプロジェクトをつくるとき、あなたは人間の体験を形づくっている。エスノグラフィー調査やソーシャルリスニングは、他のデータでは捉えられない不満や喜びを浮かび上がらせる。

自社の事業をブランドだと考えていなくても、どこかで自社ブランドについての会話は起きている。問題は、それに耳を傾けているかどうかだ。

4. 「パッケージング」を軽視しない

消費者ブランド企業は、パッケージングと販促が優れた製品を売る助けになることを知っている。複雑な便益を簡潔なコミュニケーションに落とし込み、美しい第一印象をつくることに長けている。

非消費者向け企業にとっての「パッケージング」は、顧客とつながるテックプラットフォームやアプリかもしれない。エネルギー料金の支払い、処方箋の管理、空港駐車場の予約は、いずれもアプリやポータルを通じて行われる。こうした接点は、消費者がブランドを体験する最も直接的な方法の1つであることが多い。あるいは、医療機器が届く物理的な梱包や取扱説明書である場合もある。明確なメッセージと継ぎ目のない美しさは、こうしたやり取りにおいて大きな違いを生む。

すべての企業は、自らが売る製品やサービスをどのように「装う」かを考えるべきだ。細部にこだわり、あらゆる顧客接点で提案価値を明確に伝えよ。アプリであれ箱であれ、パッケージングはブランドの最も目に見える表現になり得る。

5. AIで体験を高める

多くの企業はAIをオペレーションの観点──自動化、コスト削減、分析の高速化──で捉えている。しかし、AIを用いてエンドユーザーのデータを咀嚼し、体験をより個別化し直感的にするという、変革の機会がある。

AIは、数百万の行動シグナルから数時間に及ぶ顧客インタビューまで、大量・少量双方のデータを統合し、満たされていないニーズをより速く明らかにして、より良い設計へ導くことができる。消費者企業は、ソーシャルシグナルをファーストパーティデータや一次調査と統合し、インサイトを競争優位に変える強力なエンジンを構築している。

AIは、人々が製品を発見し比較する方法も変えている。私たちは、消費者がデジタルアシスタントに推奨を求める「エージェンティック・コマース」の時代に入った。そのAI媒介の世界で自社ブランドがどのように表示されるかを理解することは、つながる商取引における通貨になりつつある。

効率性は重要だ。しかし、データシグナルを活用して人々の現在地に寄り添い、日々の体験を高めることが、長期的なロイヤルティを築く。

供給側から需要起点のデザインへ

繁栄する消費者ブランド企業は需要から始める。顧客ニーズの最小単位を理解し、そこから逆算して構築する。同じパラダイムシフトがいま、非消費者向けブランドが他市場で差別化する力にもなっている。

GLP-1はその典型例だ。かつては内分泌科の診療に限定されていたこの薬剤クラスは、ウェルネス領域を変革し、医薬品販売のコンシューマライゼーションを加速させた。この変化により製薬会社は、需要創出やライフスタイルのポジショニングから、患者がすでにいる場所に合わせたD2Cのストーリーテリングに至るまで、ブランドのように考え始めざるを得なくなった。

最終消費者から始めれば、より良い製品をつくれるだけではない。より良い意思決定ができる。このマインドセットは、組織を人々が本当に価値を置くものへとつなぎ留め、R&Dからマーケティング、財務に至るまで、あらゆるチームに対して、壁の外の世界とつながり続けることを促す。

消費財であれ、交通ハブであれ、人命を救う治療法であれ、すべての製品が体験であり、あらゆる体験が瞬時に伝播する世界において、需要に最も近い「ブランド」こそが、人々の記憶に残る。

forbes.com 原文

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