経営・戦略

2026.03.01 08:11

病気をきっかけに100万ドル企業を築いた起業家 毎日「贅沢なクッキー」を夢想する日々

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アディソン・ラボンテが2018年、グルテンフリー・ベーキングの試行錯誤をInstagramに投稿し始めたとき、自分が100万ドル規模のビジネスを築くことになるとは思ってもみなかった。

しかし彼女は昨年、2024年にダラスで立ち上げた手作り焼き菓子ブランドSweet Addison'sで売上100万ドルを突破した。キャラメルを詰めたクッキーやヴィーガン・チョコチップクッキーなどの甘い焼き菓子で知られる同社は、今年は売上200万ドルに届く勢いだ。成長があまりに速く、彼女は700平方フィート(約65平方メートル)のアパートと、その後に利用した業務用キッチンで、1人で4万枚のクッキーを焼き上げたのち、5人を雇う必要に迫られた。

「半年ほどの間、あまりに早く仕事に行っていたので、太陽を見ない時期があった」とラボンテは振り返る。「窓のない業務用キッチンに1日中いて、夜9時に帰宅して夕食を食べ、寝る。それだけ。それが私の生活だった」

このベーキング企業の成長を支えているのは、Instagramページ「Organically Addison」(@organicallyaddison)と「Sweet Addison's」(@sweet.addisons)である。前者は2018年以来フォロワーが26万3000人に増え、後者は2万6000人を抱える。Organically Addisonは、同名のサイトで運営するフードブログへ読者を誘導し、そこでブランドが有料広告を出稿する。

Business Conceptorによれば、米国の小規模ベーカリーの平均売上は従業員4人で32万5000〜45万ドルだという。だがラボンテはD2Cブランドを運営しているため、収益化において有利な点がある。たとえば、無料で売上を押し上げるインフルエンサーとしてのプラットフォームを持つこと、そして従来型の店舗ではなく業務用キッチンを利用することで間接費に柔軟性を持てることなどだ。

謎の診断が新たなキャリアへ導く

Sweet Addison'sは、個人的な危機から生まれた。10年前、予期せぬ診断を受けたラボンテは食生活とライフスタイルを抜本的に見直すことになり、その過程で見いだしたものが、Sweet Addison'sで築いたすべての土台となった。

彼女の試練は大学卒業後に始まった。元NCAA Division Iのサッカー選手だった彼女は長距離走を始めた。「競争心が有り余っていて、自分はすごくいい状態だと感じていた。ただ、時間と労力を注ぎ込む対象が必要だった」と彼女は振り返る。

しかし走行距離を重ねるうちに、歓迎できない異変が起きた。脚に奇妙なしびれを感じたのだ。医師はコンパートメント症候群と診断した。筋肉内の圧力が危険なほど血流を制限する状態である。医師は手術を勧めた。彼女はクリーンイーティングを試すことにした。少なくとも、頻繁に起きていた激しい頭痛などの問題には役立つかもしれないと考えたからだ。

「打ちのめされたが、手術は絶対にしないし、ランニングも絶対にやめないと決めていた」と31歳のラボンテは言う。「だから代わりに、頭痛や消化に少しでも効けばいいという程度の気持ちで食事を全面的に見直した。脚やランニングに効くかどうかは分からなかった。でもグルテンをやめたら、3日で普通に走れるようになった」

彼女はその6カ月後、初めてのマラソンを走った。それが10年前のことだ。

当時のラボンテは気づいていなかったが、健康を取り戻す過程で学んだことが、のちに金融のキャリアからフルタイムのインフルエンサーへの転身につながる。メイン大学で数学を専攻し、ヘッジファンドのアナリストとして働いていた彼女は、Instagramページで年10万ドルを稼ぐというインフルエンサーに出会った。ラボンテはほどなく、その水準に到達することを自らの使命に据え、アスリートとして自分を突き動かしてきた精神と競争心を呼び覚ました。「可能性を知った瞬間、それが私の目標になった」と彼女は言う。

ラボンテにはフルタイムの仕事があったが、インフルエンサーとして成功するための時間を必ず捻出すると決めていた。「『毎晩、仕事の後と、毎週末は、コンテンツ制作とこのプラットフォームを育てることに捧げる』と言った」と彼女は振り返る。

強力なプラットフォームを築く

ラボンテがインフルエンサーとしての基盤づくりを進めたタイミングは、急成長する2つのトレンドと重なった。1つはクリエイターエコノミーの拡大である。データ企業ElectroIQによれば、世界のクリエイターが2025年に生み出す金額は1850億ドルと見込まれ、2024年から20%増となる。しかし、フルタイムで生計を立てられるのは少数派だ。ファイナンシャルプランニングのサイトEdvisorsの調査によれば、年10万ドル以上を稼ぐのは13%にとどまる。

彼女はまた、グルテンフリー料理の広がりの恩恵も受けた。エラ・ミルズ(Deliciously Ella)、ミカエラ・ヴァイス(Elavegan)、ダニエル・ウォーカー(Against All Grain)といった大物インフルエンサーが普及を後押ししてきた分野である。Precedence Researchによれば、世界のグルテンフリー食品市場は2024年に129億5000万ドルと推定され、2034年には335億9000万ドルへ成長すると見込まれている。

ただし、ラボンテのコンテンツはグルテンフリーの食事にとどまらない。「単にグルテンフリーというより、すごくクリーンな食材、精製糖なし、人工着色料なし、シードオイルなしという点に重きを置いている」と彼女は言う。ランニングなどのテーマも扱っている。

投稿にさらに力を入れたことは報われた。5つの材料で作るスイートポテト・ブラウニーのレシピのように、バイラル化する投稿も出てきた。再生回数は670万回に達し、そこから広告収入につながった。Instagramの読者が投稿のコメント欄に「recipe」と書き込むと、彼女は自身のウェブサイトに置いてあるレシピのリンクを送る。読者がサイトに来ると広告をスクロールして通過するため、フードブログにおける広告の契約を果たせるという仕組みだ。

レシピが広がるにつれ、広告主から自然流入の関心が集まるようになり、要望に応えて、蜂蜜会社が自社ブランドをレシピに組み込んでほしいと依頼したような有料投稿も導入した。現在、彼女は有料投稿で数千ドルを受け取ることもある。当初は自らブランドにコールドアウトリーチしていたが、いまはブランドマネジャーがこれを管理している。

インフルエンサーからベーカーへ

ラボンテは最終的に、フォロワーからの要望に応える形で、自身が書いてきた焼き菓子の販売を始めた。当時のフォロワーは約5万人だった。最初は700平方フィート(約65平方メートル)のアパートで、のちには業務用キッチンで、クッキー作りのすべてを1人でこなした。The Ed Mylett ShowやHow I Built Thisといったポッドキャストを聴き、モチベーションを保った。初年度の売上は25万ドルだった。

ベーカリーは、人気のプロテインクッキーなど新商品の投入によって成長した。いまやチームが背後にいることもあり、ラボンテに減速するつもりはない。

彼女は、メイン州のナーシングホームに入居したばかりの祖父母と、12月の休暇の大半を過ごすなかで、機会に飛びつくことの大切さを強く思い起こしたという。

「恐れに足を引っ張られないでほしい」と、起業を望む人々に助言する。「あれをするのもこれをするのも怖い理由はいくらでもある。でも心に夢があるなら追いかけるべきだ。人生はとても短い。いつかナーシングホームで車椅子に座り、自分の人生を振り返って『安全策を選んだ。他人の目を気にした。あの夢を追わなかった』と思いたくない。振り返って『なんてこった、私の人生はすごかった。全部やってみた。全部やった。ここへ行って、あの人たちに会った。失敗したかもしれないし、成功したかもしれない。でも少なくとも挑戦した』と言いたい」

同じ精神で彼女は12月、10年前に診断を受けたにもかかわらず、ウルトラマラソンのDallas 50Kを走った。「その週は、ビジネスにとって年間で一番忙しい週だった。それでもトレーニングしてレースを走る方法を見つけた」と彼女は言う。「人生でも指折りの日だった。本当に楽しかった」。彼女はいま次のレースに向けてトレーニングしている。

forbes.com 原文

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