起業家

2026.03.02 18:30

「おもてなしデータ」に勝機あり AI時代の世界での戦い方|SBIインベストメント 仁位朋之

SBIインベストメント海外投資部長 仁位朋之(写真=平岩 享)

──AIの次に大きな変革が起きると考える領域は何でしょうか。

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仁位:SBIグループとのシナジーを生むテーマという意味では、決済領域のゲームチェンジャーとなりうるステーブルコインや、RWA(リアルワールドアセット:不動産や債券などの現実資産)のトークン化といった領域に引き続き注目しています。

また、量子コンピュータには、1990年代のインターネット黎明期のような熱狂を感じており、大きな期待を寄せています。海外で上場している主要なプレイヤーはいずれもピーク時に1兆円以上の時価総額をつけています。実用化には5年ほど要するかもしれませんが、AIとの掛け合わせで、これまで不可能だった複雑な課題を、高速に解決できるようになる可能性を秘めています。

日本が世界で戦えるのは「高品質な接客データ」

──日本のスタートアップ・エコシステムや起業家層の変化をどう捉えていますか。

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仁位:私がスタートアップ投資を始めた2006年当時と比べると、外資系金融機関やコンサルティングファーム出身の優秀な人材が起業することはごく当たり前になりましたね。一方で、スモールIPOが目立つ状況は依然として課題です。

十数年前、ユニコーン企業がほとんどなかった英国やドイツは、政府が後押ししてエコシステム整備を進め、今やシリコンバレーのような環境をつくり上げています。日本ではグロース市場の上場維持基準の厳格化が注目されていますが、他にも、エンジェル投資の税額控除を充実させてリスクマネーの裾野を広げる、海外投資家やグロースファンドが参入しやすい環境を整えるといった施策を国を挙げて進めていくことで、時価総額500億円以上で上場するスタートアップを増やしていく必要があります。

──日本のスタートアップがグローバルで戦う上での「勝機」はどこにあると考えますか。

仁位:歴史的に見ても、ゼロイチの破壊的なイノベーションは海外から生まれることが多いです。しかし、それを改善し、顧客に寄り添ったかたちにする「すり合わせ」や「おもてなし」の技術は、日本人が世界で最も得意とする領域です。車は日本で発明されたわけではありませんが、乗りやすい車を最終的に作り上げたのはトヨタでした。AIエージェントの時代において、この「かゆいところに手が届く」ラストワンマイルの作り込みこそが、日本のチャンスになります。

その鍵を握るのが「データ」です。例えば、海外の接客サービスは、日本ほどきめ細かくありません。だから、そもそもAIに学習させるための「高品質な接客データ」が存在しないのです。世界一厳しいとされる日本の消費者を満足させてきた経験と、そこに蓄積された独自のデータを言語化してAIに組み込むことができれば、日本企業は世界で戦えるポジションを築けると思っています。


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文=加藤智朗 編集=露原直人

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