この18〜24カ月、多くの組織が人工知能(AI)の導入を急いできた。エントリーレベルの仕事が削減される一方で、AIツールやデジタル能力への投資は大きく進んでいる。だが勢いがあるにもかかわらず、よく見られるパターンが現れている。初期のパイロットは成功するが、全社規模での採用が停滞するのだ。リーダーはしばしば、その原因をデータ品質、研修の不足、変化への抵抗に求める。しかし私の経験では、これらの要因が一定の役割を果たすとしても、必ずしも根本原因とは限らない。
現在のAI技術の多くは、正確なインプットに依存している。タスクや期待値が曖昧に定義されていると、うまく機能しない。一方、人間は曖昧さに対してより柔軟であり、判断を用いて意思決定を行う。AIが機能するためには、タスク、スキル、役割の明確化がより一層必要となる。その明確さが欠けていると、AIは質の低いデータを生み出してしまう。
したがって、AIに対する組織の準備状況を評価する際、制約要因となるのはテクノロジーではなく、組織設計や職務アーキテクチャである場合が多い。
脆弱な職務アーキテクチャはAI導入を損なう。手遅れになる前に、どう修復すべきかを示そう。
組織変革の真の通貨は「職位」ではなく「タスク」と「スキル」
仕事(ジョブ)は、原子のように組織の基本単位である。職位はインパクトを伝え、しばしばビジネスを進める上での通貨として機能する。職位は人々にとって感情的な意味合いを帯び、キャリアのアイデンティティを形づくる。規律ある職務ガバナンスを欠く組織では、職位が増殖してインフレを起こし、内部の不整合、期待値の不明確さ、コストの高い昇進慣行、そしてエンゲージメント低下を招く。
職位への過度な依存を避けるには、仕事を責任(タスク)とスキルによって明確に定義し、「何をすべきか」と「どうすればうまくできるか」の双方を明らかにする必要がある。
責任(タスク)が適切な粒度で特定されれば、それらは分解・分析・束ね直しが可能となり、再設計や自動化をより良く進められる。しかし多くの組織では、職務記述書が文体、形式、粒度のいずれも不統一で書かれており、分析や再編成が困難になっている。
仕事の2つ目の重要要素はスキルである。スキルは、人間の能力と機械による増強をつなぐ橋となる。だが近年、スキルという概念は希薄化し、採用、パフォーマンス管理、学習システムの間で一貫しない形で適用されてきた。組織がAIへの移行を成功させるには、スキルを適切な粒度で定義しなければならない。自動化を導くほど具体的でありつつ、役割の明確性を損なうほど過度に細分化されていてはならない。
原子から分子へ:より明確な役割が必要な理由
現代の多くのシステムはパターン認識と反復可能性によって動作する。そのため仕事は、実行可能な最小単位にまで分解し、まず自動化または拡張し、その後スケールに向けて合理化する必要がある。人間と機械の引き継ぎをより明確にするためにも、役割設計のプロセスは、原子(ジョブ)を分子(ロール)へと組み合わせていくようなものとなるべきである。そうすることで、役割の境界はより明確になり、プロンプトもデリバリーも高速化する。
職務アーキテクチャが強固であれば、役割は明確な成果に向けて一貫した「分子」として機能する。弱ければ、組織は仕事を導く意味のある構造を欠いた「原子」の寄せ集めになってしまう。
AI時代の人材移行:成功のための4つの戦略
これらの課題に対処するため、CHROは組織設計の守り手から、変革の触媒へと進化しなければならない。最も重要なのは次の4つの行動である。
1. 職務アーキテクチャを見直し、ジョブをロールに束ねる
意思決定を迅速化するため、階層を減らし、より明確な役割を備えた職務アーキテクチャを再構築する。長大なタスクリストを伴うような極小粒度でジョブを設計することは避けたい。補完的なスキルと責任を活かす「原子的」なジョブを「分子的」なロールへと束ねることに注力すべきである。
例えば、異なるプロダクトを支える複数の「シニアソフトウェア開発者」は別々のジョブである一方、単一のロール(シニアソフトウェア開発者)に属する。束ねることで説明責任が強化され、人員配置が加速し、自動化のための一貫した基盤が得られる。
2. 役割の定義方法を標準化する
一貫性はAIにとって重要である。役割が一貫して定義され、職位が整理され、不要なバリエーションが最小化されるほど、AIはより速く学習し、より良く機能する。標準化された役割プロファイルは、AI導入の迅速化と人材の流動性向上をもたらす。過剰なAIプロンプトが必要だったり、上書きや例外の想定が増えたりするなら、それはおそらく、組織設計の弱さ、オーナーシップの不明確さ、あるいは意思決定のボトルネックを示唆している。
3. タスクの実行と役割の説明責任を切り分ける
人間は判断と意思決定に優れ、AIはトランザクション業務により焦点を当てる。トランザクション業務と判断を要する業務を切り分けることは、より精緻なセグメンテーションと高い説明責任を促し、各役割を強化する助けとなる。
さらに重要なのは、人間を置き換えるのではなく、人間が担うべき役割をより高度化することに焦点を当てられる点であり、それによって職務満足度の向上にもつながる。
4. スキルフレームワークは、スキルに役割を合わせるのではなく、役割に合わせて設計する
スキル分類が失敗するのは、実際の仕事と関係のない一般用語の長いリストになってしまうときである。変革を支えるには、スキルを役割の期待値と熟達度レベルに直接結びつける必要がある。例えば「コミュニケーション」は、組織全体に単一のキーワードとして適用されるべきではない。下位レベルでは明確さや応答性を指すかもしれないが、経営層ではエグゼクティブとしての存在感、影響力、あるいはナラティブ設計を指す場合がある。精度が重要である。これが欠ければ、スキルフレームワークは洞察ではなくノイズを生み出す。
CHROは、過度に精緻で個別最適化された役割定義よりも、迅速なプロンプト、意思決定の流れ、引き継ぎを可能にする実務的な「十分に良い」役割の明確性を優先し、前進のための80:20の原則を採用すべきである。
結びに
AIは、壊れた職務アーキテクチャ、不明確な役割、分断されたスキル、曖昧な説明責任を補うことはできない。AIをスケールさせることに成功する組織は、職務アーキテクチャをHRの衛生管理ではなく、事業の中核インフラとして扱う組織である。役割を簡素化し、成果を軸に仕事を束ね直し、仕事の進め方にスキルを結びつけることで、リーダーはAIが求める明確性を生み出し、スピード、一貫性、価値を実現できる。
結局のところ、AIは単なる技術変革ではなく、組織変革である。その土台となるアーキテクチャを修復しなければ、スケールは現実ではなく、志のままにとどまるだろう。



