リーダーシップ

2026.02.27 23:03

見て見ぬふりの代償──オストリッチ効果が企業を滅ぼすとき

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もう心当たりはあるはずだ。怖くて開けていない数字がある。その数字が何を示すかを知るのが怖いからだ。受信箱には、急いでざっと目を通しただけで、まだきちんと読んでいない報告書がある。忙しすぎるからではない。読み込めば、自分が何をしなければならないかが見えてしまうのが怖いからだ。

これがオストリッチ効果である。不快だったり都合が悪かったりする情報を、意図的に無視する傾向のことだ。そしてそれは、リーダーとして本来、見て行動しなければならない情報そのものである。

2006年、行動経済学者のダン・ガライとオーリー・サデは、投資家の行動に見られたあるパターンを説明するために、オストリッチ効果という言葉を作った。市場が上昇しているとき、投資家は熱心にポートフォリオを確認する。市場が下落しているときは、確認しない。知りたくないのである。

比喩としては完全ではない。ダチョウは実際には頭を砂に埋めたりしない。しかし心理としては正確だ。現実が居心地の悪いものになると、私たちはしばしば視線をそらす。

ビジネスにおいて、その本能は致命的になり得る。

砂に頭を埋める

オストリッチ効果は、個人投資家だけに限られた欠点ではない。私が目にしてきたなかで最も広く浸透したリーダーシップの病理の1つである。経営陣はたいてい情報が足りないわけではない。足りないのは、それに向き合う意志だ。市場シェアの低下。存在感を失いつつある製品。皆が感じているのに、誰も名前をつけたがらない組織文化の問題。

真実は常にそこにある。問題は、その真実を直視し、行動に移す覚悟のある人がいるかどうかだ。

かつて、ある企業が業界の重要な転換点を逃したあと、私はCEOに何が悪かったのかと尋ねた。「心のどこかでは、変わらなければならないと分かっていました」と彼はため息をつき、戦略チームが6カ月前に用意していた計画を見せた。まさにその可能性に対処するためのものだったという。彼はそれを一度ちらりと見ただけで、受信箱の奥に埋もれさせてしまったことを認めた。「目の前の火消しに追われて、将来のことを考える余裕がなかったんです」

これこそ、オストリッチ効果が働いている状態である。

マーガレット・ヘファーナンは著書Willful Blindness: Why We Ignore the Obvious at Our Perilの中で、この危険な傾向を描いている。

「認めようとしない問題は、解決できない」と彼女は書いている。

組織において、オストリッチ効果が劇的に姿を現すことはめったにない。静かに現れる。

悪い知らせが伝わるのが遅い、あるいはまったく伝わらないときに現れる。

不快な傾向を和らげるために、ダッシュボードの指標が調整されるときに現れる。

たとえば私が2004年に記者としてフォード・モーター・カンパニーを取材し始めた頃、報告書はしばしば、受け手に「胃もたれ」を起こさせないよう手が加えられていた。当時ある幹部は私にこう言った。「ディアボーンでは、真実にもいろいろな味があるんだ」

その2年後、同社は破産寸前まで追い込まれた。

リーダーが不都合なデータを明確に禁じるとは限らない。単に、それを表に出しても報われない環境をつくるのだ。

時間が経つと、予測可能なパターンが生まれる。リスクは管理されるのではなく過小評価され、前提は検証されず、不都合な真実は一時的なノイズとして言い換えられる。問題は消えない。積み上がっていく。

コダックを考えてみよう。同社が失敗したのは、デジタル写真技術にアクセスできなかったからではない。むしろそれを生み出すことに貢献していた。コダックに欠けていたのは、自社の既存事業を自ら食いにいく制度的な勇気だった。

ブロックバスターも同様だ。Netflixを競争上の脅威として受け入れることを拒んだ。

2008年の投資家向け電話会議で、新規参入者が自社の市場シェアと利益を奪っているのではないかとアナリストに問われた際、ブロックバスターの会長兼CEOだったジム・キーズはこう言い放った。「競争という意味では、RedboxもNetflixもレーダーにすら入っていない」

どちらのケースでも、脅威は見えていた。欠けていたのは、それに向き合う意志だった。

オストリッチ効果は、ほかの認知バイアスも増幅させる。反証となる証拠が排除されれば、確証バイアスは存分に働く。異論に社会的コストが伴えば、集団浅慮は硬直化する。反証データがなければ、過信は勢いづく。やがてフィードバックループが形成される。欠陥のある戦略がネガティブな兆候を生み、その兆候が抑え込まれ、抑え込みが「戦略は健全だ」という錯覚を強化する。

現実が認めざるを得ない形で迫ってきたときには、修正の余地は狭まっている。ときには、完全に消えている。

オストリッチ効果の最も有害な帰結は、最初のミスではなく、そのミスを検証しようとしない態度かもしれない。

率直な事後検証を避ける組織は、同じ失敗を繰り返すことを自ら保証している。マクロ経済環境、予測不能な競合、予見できない出来事──意思決定プロセスに埋め込まれた前提以外の何かに責任を押しつける。構造化された振り返りがなければ、経験は洞察にならない。傷跡になるだけだ。

変動の激しい事業環境で、それは持続可能ではない。

砂から頭を引き抜く

オストリッチ効果を克服する第一歩は、リーダーの振る舞いにある。

アラン・ムラーリーが2006年にフォードの指揮を執ったとき、彼は色分けされた報告システムを導入した。緑は「計画通り」のプログラムまたは指標を意味する。赤は「計画から外れている」。黄は「計画から外れているが、軌道に戻す計画がある」を意味する。

直属の部下たちは、全員が「罠だ」と思ったと私に語っている。数週間にわたり、全員が「すべて緑だ」と報告した。

しかしムラーリーは、それが違うと分かっていた。会社は数十億ドル規模の赤字を垂れ流していたのだ。数週間後、彼は我慢の限界に達した。会議をキャンセルし、来週はもっとまともな報告をするようチームに告げた。

それに応えたのは1人だけだった。画面に最初の赤が現れたとき、ムラーリーは拍手した。その拍手には意味があった。真実は罰せられるのではなく報われる、という合図だった。率直さのインセンティブ構造を変えたのである。翌週もその幹部が席に残っていたことで、ほかのリーダー陣は、ムラーリーがフォードで本当に何が起きているのかを知りたがっているのだと理解した。

さらにその翌週、全員のスライドが赤になった──そしてムラーリーは大喜びだった。

ようやく、すべてがオープンになった。彼はそう思った。これで直し始められる。

「赤は宝石なんだ」とムラーリーは言う。「問題を直すために何をすべきかを教えてくれる。だから赤は祝うべきだ」

これが本物のリーダーの仕事である。どれほど醜くても、現実に正面から向き合うことだ。

戦略的な盲目状態を避けたい組織は、同様の仕組みを制度として根づかせなければならない。レッドチーミングは、そのための規律の1つだ。適切に実行すれば、反証となる証拠に向き合うことをリーダーに強い、前提をストレステストし、出来事が突きつけてくる前に2次・3次の影響まで探らせる。悲観するためではない。規律ある形で現実にさらされるためである。

プレモーテム分析も、もう1つの安全策となる。計画がすでに失敗したと仮定し、そこから逆算して理由を特定するようチームに求めれば、脅威認知を鈍らせる楽観バイアスを迂回できる。手法はシンプルだ。効果は非常に大きい場合がある。

しかしツールだけでは不十分だ。

より深い要件は文化にある。現場の従業員が恐れずに懸念をエスカレーションできる仕組みをつくること。大きな戦略的賭けに対して独立した検証機能を設けること。厳しい問いを、反抗ではなく忠誠の行為として当たり前にすること。

どれも心地よいものではない。心地よい必要もない。だがそれこそが、本物のリーダーシップに求められるものだ。真実を見る意志、真実を語る意志、そして真実に基づいて行動する意志である。

forbes.com 原文

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