AI

2026.03.06 13:30

批評家・東浩紀 × 起業家・桂大介 「リベラルテック」視点から見る今

東浩紀(写真左)・桂大介(同右)

AIによって人間が見えてくるという面白さ

東:本来、人文系の人が語るべきは、AIによってあらためて人間が見えてくるという点です。例えばLLM(大規模言語モデル)によって言語の本質が明らかになった。言語には本来、日本語であるか英語であるかという概念はなく、ある単語が来たら似たものを返すということの繰り返しであるということが間接的に実証されてしまった。AIに言語の壁はありませんが、子どものうちに複数の言語に触れるとバイリンガルやトリリンガルになれるというのは、おそらく人間の言語習得も似たようなものだったからでしょう。LLMによって人間の言語習得の仕組みが理解できるようになるのは、実に面白いことですよ。

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「僕たちの社会、人間ってこういうものだったんだ」と知るきっかけをコンピューター、IT、AIは与えてくれる。その面白さを話そうよ、と僕は言いたい。 

例えば最近、「町中に熊が現れたという報道に使われた画像が、実はAIで生成されたものだった」という事件がありましたね。これは報道だから問題になったけれど、この手の「がっかり」は山ほどありますよね。僕はこれをすごく面白い現象だと見ています。人間って、やっぱり「本物」かどうかが気になるんだなと。いくらすぐれたイラストでも、AIが描いた絵だと知ると怒る人も多い。 

桂:僕がディープラーニングが進化して画像のレタッチがはやったときに驚いたのは、「ゴッホ風の画像が生成できる!」と話題になったことです。「ゴッホなんだ」と思って。音声にしても美空ひばりや松任谷由実の歌声を再現するというプロジェクトがあります。もちろんわかりやすくはあるんだけれど、本来は人間では発声できない美声だったり、見たことも聞いたこともないような未知のものをつくり出してもいい。しかしそうではなく、人がつくってきたものを再現する方向へ行く。結局、「人間の魅力」に勝るものはないということなんでしょうね。

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東:生成AIが人間と完全に同じアウトプットを返したとしても、多くの消費者は人間の制作物と同じようには評価しないかもしれない。それが人間の癖です。これはビジネスでAIを使う人にも必要な視点だと思います。その境界を知ることで、AIで置き換え可能なジャンルと、そうでない分野が見えてくる。 

桂:テクノロジーの進化によって法律や倫理、文化や常識も変化してきたように、AIの進化によって社会や人々の感性がどのように変わるのか。「リベラルテック月報」ではそこを扱いたいですね。

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文=梶原麻衣子 写真=平岩 亨

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