かしわぎつきこ 漫画家からカフェ経営へ IPを拡張するZ世代の多角化戦略

かしわぎつきこ|漫画家、イラストレーター、衣装デザイナー、カフェプロデューサー

かしわぎつきこ|漫画家、イラストレーター、衣装デザイナー、カフェプロデューサー

漫画家として活躍しながら、衣装デザインやカフェプロデュースまで手がけるかしわぎつきこ。創作を自己表現に閉じず、柔軟にビジネスと接続して自己を拡張している。 


まるきり自身の描くイラストから抜け出したようなかわいらしさだ。漫画家にしてイラストレーターのかしわぎつきこ。経営するカフェ「atelier renard」は連日満員御礼、さらにアイドルグループ「iLiFE!」の衣装デザインを担当するなど、創作を複数の事業へ横断的に接続する。創作の外側にも自ら関与しながら、作品や場の認知を広げてきたZ世代のクリエイターだ。

札幌生まれのかしわぎは、幼少期から絵は好きだったものの、10代はクラシックバレエに集中していた。漫画を描き始めたのは大学に入ってからだ。

「親からは医療系の大学に進みなさいと言われていたのですが、高3の夏にいきなり『絵が描きたい!』と思い立ち、美大予備校でデッサンを学びました」

大学では美術を専攻し、そこでサブカルチャーに触れた。浅野いにおやティム・バートン監督、ギレルモ・デル・トロ監督の世界観などに影響を受けた。そして漫画を描き始めるきっかけとなる友人と出会う。

「彼女はBL漫画を描いていて、同人誌で人気があったんです。『自分にもできるかな』と思って」 

2016年からX(当時はTwitter)にイラストを発表し始める。固定ファンがつき始めたころ東京の同人誌即売会のひとつ「コミティア」に出品。女の子ふたりを主人公にした作品が『コミック百合姫』の編集者(現・編集長)の目に留まり、デビューが決まった。現在の担当編集者は分析する。「かしわぎ先生は技術があるのと同時に“作家性”がしっかり出ている。そこにポテンシャルを感じたのだと思います」 

『陰キャ ギャルでもイキがりたい!』。皮肉屋な九蘭と内弁慶の市子の会話はポップでありつつエッジが効いていて、ふたりの仲の良さも楽しめる作品だ。
『陰キャ ギャルでもイキがりたい!』。皮肉屋な九蘭と内弁慶の市子の会話はポップでありつつエッジが効いていて、ふたりの仲の良さも楽しめる作品だ。

22年から同誌で連載中の『陰キャギャルでもイキがりたい!』はサブカル好きで陰キャな女子高校生コンビの日常を描いたGL作品だ。目指しているのは「誰もが知っていて、食べておいしいジャンキーな味」だという。「以前は『私の味がわからないなら食べなくていい』と思っていました。でも編集者のアドバイスを聞くうちに自分が満足しているものが必ずしも“良いもの”として他者へ伝わらないことに気づいた。ならば味付けはカップ麺やマックのポテトのようにわかりやすくしたほうが、みんなに届けやすいのだと」

表現の核を変えずに“伝わり方”を調整できる点は、クリエイティブとビジネスを行き来する彼女ならではの特徴だ。 

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文=中村千晶 写真=若原瑞昌

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