かしわぎつきこ 漫画家からカフェ経営へ IPを拡張するZ世代の多角化戦略│20 HOT CREATORS

かしわぎつきこ|漫画家、イラストレーター、衣装デザイナー、カフェプロデューサー

“世界観”を詰め込んだカフェも経営

漫画やイラストという一次創作を起点に、空間やファッション、体験へとIPを展開する。SNSにアップしていたイラストがきっかけで、アイドルグループ「iLiFE!」から声がかかり、メンバーのイラスト制作や衣装デザインを手がけることに。衣装はファッションデザイナーが考えつかないような漫画家ならではの発想力を生かしたデザインで、今や彼女たちのアイデンティティのひとつとなっている。また、25年には舞台衣装のみならず、誰でも着られるようにアパレルにも進出した。 

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アイドルグループ「iLiFE!」の衣装。新作はパフェをモチーフにデザイン(製作協力:合同会社udonfactory)。
アイドルグループ「iLiFE!」の衣装。新作はパフェをモチーフにデザイン(製作協力:合同会社udonfactory)。

さらに「コンセプトや名前から誰に頼むかまですべて『私がかわいいと思うものだけを許す場所』をつくりたい」と24年夏、渋谷にカフェ「atelier renard」をオープンし経営も担う。淡いブルーにこだわって空間をつくり込み、レースやお花、食器、アートなどでかしわぎらしい世界観を表現。スタッフの制服デザインも手がけている。

淡いブルーを基調とした「atelier renard」。ドーナツや紅茶、アフタヌーンティーを楽しめるカフェ。作品展示スペースもあり、フォトスポットやメニューの細部までこだわりが詰まった空間だ。月間売り上げが1000万を超えることも多い。
淡いブルーを基調とした「atelier renard」。ドーナツや紅茶、アフタヌーンティーを楽しめるカフェ。作品展示スペースもあり、フォトスポットやメニューの細部までこだわりが詰まった空間だ。月間売り上げが1000万を超えることも多い。

SNSやマスメディアを通して話題になり、連日かしわぎが生み出した世界観に共感する若者たちでにぎわう。なかでも利用が多いのが、アイドルやアニメなどの「推し活」をする人たち。推しのイメージカラーに合わせた装いや小物を持参し、アクスタやぬいぐるみをとともに写真を撮る光景は、この店の日常風景のひとつ。25年9月には2店舗目の「atelier renard harajuku」を原宿に開店。こちらは「赤」をコンセプトカラーにしたゴシックな世界観だ。

「私の創作はオリジナルというより、コラージュだと思っています。自分のなかにある『好きなもの』を引き出して、組み合わせてアウトプットしているんです」。多くのコンテンツを愛してきた蓄積と、ほかのクリエイターへのリスペクトがあるからこそ唯一無二の世界観がつくれるのだろう。

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また、プロデューサー思考をもち、クリエイティブコントロール力にも長けている。「『これはいい』『これはダサい』のバランス感覚や、『どうやったら目指すアウトプットの最大値が出るか』を選び取る作業は得意なんです」。こうして生み出される彼女のクリエイティブは多くの共感を集め、多様な分野にどんどん拡張している。その中心にあるのは漫画だ。

「漫画だけは少し特別なんです。ひとりの人格から純粋に生まれたものが、そのまま人に届く力に引かれています」

ビジョンを聞くと「長期的な目標を立てるのはあまり得意じゃないんです。『今これできるじゃん!ならやろう!』という感じで」と返す。漫画を主軸に、ゲームや音楽の世界にも自分の表現を広げていく。


かしわぎつきこ◎2016年にSNSを中心にイラストレーターとして活動を始める。22年から『コミック百合姫』で『陰キャギャルでもイキがりたい!』を連載。漫画家だけでなくアイドルグループ「iLiFE!」の衣装デザインやカフェのプロデュースなどマルチに活躍している。

文=中村千晶 写真=若原瑞昌

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