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2026.02.27 08:57

VRはエンターテインメントを超えてインフラになれるか

AdobeStock

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長年、バーチャルリアリティ(VR)は目新しいものとして扱われてきた。一度試してみるもの。楽しいもの。必須ではないもの。しかしここ数年、私は変化を感じている。技術そのものというより、都市や組織がVRをどう捉えるかという点で起きている変化だ。

最近、バーレーン王国の観光省が、当社のVRアリーナの1つを観光客向けの推奨スポット一覧に正式に掲載した。一見するとローカルなPRの話に見えるかもしれないが、これはより大きな潮流を示すサインだと私は考える。VRはゆっくりと「エンターテインメント」からインフラへと移行しつつある。

「呼び物」から「当然の存在」へ

新しい娯楽フォーマットの多くは、同じ道筋をたどる。最初は実験として登場し、早期採用層を惹きつける「珍しい何か」になる。次に馴染みのある存在となり、やがて都市が「あるのが当然」と期待するものへと変わっていく。

博物館や科学館のインタラクティブ展示は、実験から中核的な呼び物へと進化した。そしてVRもいま、同じ段階にあると私は見ている。観光局がVRアリーナを、博物館や文化施設、家族向けの観光スポットと並べて掲載し始めたとき、それはVRがもはや「追加オプション」ではないことを意味する。目的地体験の一部として捉えられ始めているのだ。

見た目以上に重要な理由

この変化は、VRビジネスの採算性とポジショニングを、いくつもの重要な点で変え得る。

1. 信頼性は積み上がる。 地方自治体や観光機関がVR施設を認知すると、地主、ショッピングモール、行政担当者との対話の質が根本から変わることを私は経験してきた。VRは一時的な設置物としてではなく、長期的資産として扱われ始める。

2. 対象顧客が広がる。 観光主導の地域は、地元客のリピートだけに依存しない。海外からの訪問者は、天候に左右されず、一定の枠組みがあり、信頼できる体験を積極的に探している。VRは、その需要に自然に合致する——プロフェッショナルに構築され、運営されていれば。

3. インフラとしての発想が期待値を変える。 VRが都市の提供価値の一部として扱われるようになると、目新しさよりも安定性のほうが重要になる。信頼性、稼働率、アクセシビリティ(利用しやすさ)、体験の分かりやすさが、「すごい」と思わせる瞬間以上に重視される。

広がりつつあるパターン

この移行を観測したのは今回が初めてではない。ロケーションベースVRは、ゲームセンター的な形態から、世界各地の観光施設やエンターテインメント施設に組み込まれたアトラクションへと成長してきた。これはインフラ化への移行を示唆している。

移行のタイミングは市場によって異なるが、方向性は概ね同じだ。私が見てきた限り、それを加速させるのは、より良いヘッドセットや高解像度ではない。システムである。都市は実験を支援しない。理解可能で、再現可能で、予測可能なフォーマットを支援する。

インフラに必要なマインドセット

VRをインフラとして捉えることは、創業者にビジネスのつくり方を再考させる。私が学んだのは、インフラは恒常的な値引きに依存せず、流行の波に依存せず、一度きりの来訪で成り立つものでもないということだ。代わりに、ピッチデックでは地味に見えるが、ビジネスを何年も生かし得る要素に支えられている。

1. 再現可能な体験

スケーラブルなVRプロジェクトにおける重要な戦略転換の1つは、セッションを、唯一無二の手作り体験としてではなく、再現可能な運用単位として扱うことだ。標準化されたフリーローム(自由移動)シナリオ、統一されたソフトウェアロジック、事前定義された空間レイアウトを用いて、拠点や地域によるばらつきを抑える。これにより体験品質の予測可能性が高まり、稼働率が改善し、実験的な会場の域を超えてVRをスケールさせるための運用基盤を築ける。

2. 明確な顧客セグメンテーション

私の経験では、効果的なVR運営は、抽象的な人口統計ではなく利用シナリオに基づく明確なセグメント設計に依存する。観光客、地元のプレイヤー、企業チーム、団体予約向けにそれぞれ異なるフォーマットを用意し、専用のスケジュール規則、価格ロジック、セッション運用を設計するとよい。この分離は、期待値のミスマッチや運用摩擦を避けつつ、会場の処理能力(スループット)とゲスト満足度を最適化する助けとなる。

3. プラットフォーム主導のコンテンツ進化

VR施設を持続可能にするには、絶え間ない作り直しに頼るのではなく、コンテンツを段階的に進化させることが重要だ。ハードウェア能力と実際のパフォーマンスデータに合わせ、段階的なソフトウェアロールアウトを通じて、新しいゲーム、メカニクス、バランス調整を導入する。私が見てきた限り、このアプローチは初回訪問者にとっての「馴染み」を保ちながら、リピート客をつなぎ留めるだけの新規性も提供できる。通年で稼働する都市部や観光主導の立地では、特に重要である。

4. 運用の規律

スケール段階では、運用の信頼性は技術的な細部ではなく戦略的資産になり得る。日次のキャリブレーション(較正)手順、安全プロトコル、スタッフの認定基準、パフォーマンス監視を、立ち上げプロセスと継続運用の双方に組み込むべきだ。このレベルの規律は、ピーク需要時にもVR施設を安定稼働させ、没入型エンターテインメントを「一度きりの呼び物」ではなく、信頼できるインフラとして位置づける助けとなる。

最後に

没入型エンターテインメントに取り組む創業者にとって、もはや問うべきは「VRに未来があるか」ではない。より重要なのはこういう問いだ。あなたはアトラクションをつくっているのか、それとも都市が頼れるものをつくっているのか。なぜなら、VRがその一線を越えた瞬間、ルールは変わるからだ。そして早く適応した者は、後になって市場を説得する必要がなくなることが多い。

forbes.com 原文

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