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2026.02.27 08:41

マーベル再生の立役者が語る、AI時代に必要な4つのリーダーシップ教訓

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「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。『スパイダーマン』の名ゼリフである。同作は2002年5月に公開され、マーベルの復活とスーパーヒーロー映画時代の幕開けを告げた。ピーター・キュネオは、まさにこの転換点でマーベルの舵取りを担った人物だ。「再建の専門家」として名高いキュネオは、1999年7月から2002年12月までマーベルを率いた。重要な意味で、この『スパイダーマン』のセリフは、AI時代に真のリーダーシップに何が求められるかというキュネオの信念を体現している。

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だからこそ、ナショナル・リーダーシップ・デーは彼と語るのにふさわしいタイミングである。マーベル以外にも、キュネオは6社の企業再建を率いてきた。旧来のやり方が根本から覆されるという前例のない時代を見極めるうえで、彼は理想的な人物だ。実例を挙げれば、今月だけでもClaude Coworkのプラグイン公開が引き金となり、「SaaSポカリプス」と呼ばれる2850億ドル規模の暴落が起きた。一方、AIオンリーのソーシャルプラットフォームMoltbookは、エージェント型システムがどれほどの速さで進化しているのかをめぐる議論を活性化させている。

こうした動向などを踏まえると、リーダーが責任をもって力を行使するにはどうすべきか、キュネオの洞察に学ぶ価値は大きい。意外かもしれないが、キュネオは決してAI反対派ではない。新著『Superhero Leadership: 28 Ways to Lead with Courage, Strength, and Compassion(スーパーヒーロー・リーダーシップ:勇気、強さ、思いやりで導く28の方法)』の著者である彼は、数年前なら超人的に見えたであろう形で自身の影響力を拡大するため、AIを活用したリーダーシップアプリにも踏み込んだ。「助言を求める人からの依頼が絶えない。全員と話したいが、数が多すぎる。このアプリは、そのギャップを埋める1つの方法だ」

知見を共有するというキュネオの姿勢を踏まえつつ、彼は、もしAIが経営を担っていたならおそらく推奨しなかったであろう、マーベルの4つの示唆的なリーダーシップ判断を挙げている。いずれも、人間味を損なうことなくこのテクノロジーを活用したいと考える、明日のリーダーへの教訓となる。

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教訓1:前例を破る覚悟を持て

「AI予測の重要な限界は、予測に使用する入力、つまり『原材料』が過去のデータ──AIが学習したデータ──であるという事実に由来する」と、査読付き学術誌『Communications of the ACM』は説明する。「したがってAIは必然的に常に過去を向いている……」

これは、トニー・ロビンズの言葉を想起させるリーダーシップ上のジレンマを生む。「いつも通りのことをしていれば、いつも通りの結果しか得られない」。もしマーベルが過去の成功したキャスティングに頼っていたなら、ウルヴァリン役にヒュー・ジャックマンを起用することはなかっただろう。アーノルド・シュワルツェネッガーのような、屈強な元ボディビルダーではない。ジャックマンは、ブロードウェイで歌って踊る二枚目俳優であり、マーベルは、長い爪を持つ獰猛で醜い動物をモデルにしたキャラクターに彼を抜擢した。

過去に機能したやり方を打ち破り、マーベルのリーダーシップは完全に予想外の決断を下し、キャスティングの大成功につなげた。期待を裏切る形で、ジャックマンはいまなお、この象徴的な役を約25年にわたり見事に演じ続けている。この事例は、AIが過去データから将来のパターンを外挿することに長けている一方で、これまでうまくいった方法を捨て、新たで斬新なアプローチへ踏み出すには、人間のリーダーシップが依然として必要であることを示す。

教訓2:アルゴリズムではなく直感を信じよ

キュネオは、年長世代が若者にバトンを渡す準備を十分にさせていないことを懸念していると私に語った。「若者はリーダーシップを学んでいない。最良の学び方は、多様な人々との対面のやり取りだ。そうやって直感が育つ」

多くの若者がスクリーン越しに人生を媒介していることは周知の事実である。自分の能力を信じるために必要な直感を育むほど、現実世界の社会的状況に触れていない。そうした自信が欠けているからこそ、多くが答えをアルゴリズムに求めるのは自然な流れだ。

もしマーベルが思考を機械に明け渡していたなら、アイアンマン役にロバート・ダウニー・Jr.を起用し、あれほどの成功を収めることもなかっただろう。トニー・スタークになる前のダウニーは、ハリウッド究極の問題児だった。2001年には裸足のダウニーが薬物影響下の疑いで逮捕され、TVドラマ『アリー my Love』の役も降板となり、裁判所命令によるリハビリへ送られている。

キュネオは、書類上はそれだけでマーベルがダウニーを検討対象にする余地はないはずだったと言う。「ここでリーダーは、AIが何に優れているのかをしばしば誤解する。AIはリスクの可視化が得意だ。あらゆる危険信号を見つける。変動性について警告する。弁護可能で、繰り返し可能で、統計的に安全な意思決定へと押しやる。それはリーダーシップと同じではない」

キュネオが考える真のリーダーシップとは、常識に逆らってリスクを取ることだ。ダウニーに複雑な過去があったことは問題ではなかった。マーベルのリーダーシップは、ダウニーが持つカリスマ性と魅力を表現できる人物が地球上にただ1人しかいないことを理解していた。そして結果はどうなったか。大成功である。

教訓3:主体性を引き出せ

見出しの一部はAGI(汎用人工知能)が近いことを示唆するが、今日のシステムには自発性がない。AIはいまだに「指示待ち」である。指示待ちは、マーベル・スタジオの立ち上げのような大きなリスクは取らない。「それまでのマーベルは大手スタジオとの提携で成功していた」とキュネオは説明する。「会社にとって『合理的』な道は、ライセンス供与を続け、小切手を受け取り続け、エンジンを作るコストとリスクを避けることだった。だが我々は、所有、支配、そして長期的なレバレッジを選んだ」

これは大胆な一手だった。キュネオによれば、「投資家でさえ、リーダーシップチームは狂っていると思った」。それでも構わなかった。賭けは成功した。スタジオ設立のためにマーベルが調達した資金は5億2500万ドルと推定されている。2009年までに同社の価値は40億ドルに達した。

ここでの教訓は、リードすることとマネジメントすることは違うという点にある。AIは、人間のために物事を管理するのが得意だ。たとえばサプライチェーンの追跡や、スマートホームのサーモスタットの管理である。だが、リードすることはできない。キュネオの言葉を借りれば、「人間を導けるのは人間だけだ」。そしてそれにはまず、主体性が必要となる。

教訓4:最後に必要なのは「センス」である

LinkedInを見回すと、憂慮すべきことに気づく。文章が均質化しているのだ。投稿には生成AI特有の特徴が散見され、同じ書き手が書いたかのように聞こえるコンテンツが、私たちの言説を平板にしている。TV番組『Pluribus』のように、人々は思考を止め、AIの群知に頼って自己表現するようになっている。

真のリーダーシップとは、機械ではなく内側から生まれる人間のセンスと価値観に基づいて、創造的な決断を下す自信を持つことだ。2000年代にマーベルのコンテンツが大衆の心をつかんだ大きな理由の1つは、キャラクターのオリジンストーリーを語り直すという勇気ある創造的判断を下した点にある。

これは容易な選択ではなかった。熱心なファンの感覚を逆なでしかねなかったからだ。彼らは、コミックで楽しんできた連続したストーリーラインに沿った映画を望んだかもしれない。だが、影響力の大きいこの層に迎合するのではなく、マーベルは創造的信念を貫き、愛されるキャラクターたち全員を「最初から」描き直した。

このこともまた、人間の真のリーダーシップとテクノロジーの二項対立を示している。キュネオはこう説明する。「AIは分析ツールだ。だがAIが提供しないものがある。それは判断、責任、そしてリスクを取る勇気だ。これこそがリーダーシップの本質である──善し悪しを問わず結果に向き合う力だ」

ナショナル・リーダーシップ・デーにあたり、キュネオのもう1つの知恵も考慮する価値がある。いまやAIにどんな答えでもプロンプトで引き出せるようになり、私たちは思考のより多くを、ますます洗練された機械に明け渡したくなるかもしれない。

それは誤りである。

マーベルがこれほど鮮やかに示しているのは、真のヒーローはマントを翻して飛び回る存在でも、彼らが参照するスーパーコンピューターでもないということだ。不可能な課題を背負いながらも、それでもなお勇敢に導く道を見つける、あなたや私のような日常の人々こそが、本当のヒーローなのである。

forbes.com 原文

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