スコット・ベッセント米財務長官は2026年に入っても多忙を極めている。米経済の減速、中国との競争、米連邦準備制度理事会(FRB)の期待ほど速くない利下げペース、ドナルド・トランプ米大統領による貿易戦争、さらには新たに持ち上がった関税払い戻し要求と、数々の課題への対応を同時にこなしている。
それぞれに動きがあるこれらの難題を抱えながら、ベッセントはどうにか時間を捻出してドル円相場の細かな管理にも関わっている。トランプの過激な衝動や中国の野心に歯止めをかけるという骨の折れる仕事を考えれば、ベッセントの日々のスケジュールに日本関連の課題がしっかり組み込まれているというのはやや意外に映る。だが現にそうなっていることからは、ベッセントが世間から思われている以上に世界の金融システムを懸念していることがうかがえる。
日経アジアの報道によると、1月の円相場下落を食い止めるのに寄与した「レートチェック」を主導したのはベッセントその人だった。外国為替トレーダーは、日本の財務省と米財務省が取引現場に電話で照会を始めると、間もなく大規模な為替介入が行われる可能性があることを知っている。
ベッセントが日本について懸念する理由は3つある。1つ目は、円安は中国に対して、人民元安を追求しても問題ないという印象を与えかねないこと。2つ目は、日本が米国債の最大の保有国であること。その額はおよそ1兆2000億ドル(約187兆円)にのぼり、2位以下を大きく引き離す。3つ目は、強力な「円キャリー取引」が存在し、為替相場が急激に変動すればそれが破綻するおそれがあることだ。
1つ目のリスクはけっして机上の空論ではない。中国ではデフレがすでに4年目に入り、国内総生産(GDP)の伸びは鈍り、若年層の失業率も依然として憂慮されるほど高い。為替レートを元安方向に設定することほど、中国を迅速に安定化させる方策はないと言っていいかもしれない。
とはいえ中国の習近平国家主席には、この措置を避けたい理由がいくつもあるはずだ。為替レートを引き下げれば、巨額のオフショア債務を抱える不動産開発業者のデフォルト(債務不履行)リスクを高めかねない。人民元の国際化という習の目標も遠のくおそれがある。さらにはトランプを激怒させるかもしれない。



