アジア

2026.02.27 09:30

ベッセント米財務長官が円相場に気をもむ理由

スコット・ベッセント米財務長官(Nathan Posner/Anadolu via Getty Images)

この最後の変数は、トランプ関税に司法の最終判断が下されたいま、これまで以上に重要になっている。トランプは、関税を課す権限は議会ではなく自身にあるという主張を連邦最高裁に退けられたことに反発している。トランプが面目を保とうと躍起になるなか、次に何が起こるのかアジア諸国は身構えているのだ。

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ここで日本の立場に戻る。ここ何日かで高市早苗首相の2026年は一段と複雑になった。連邦最高裁の判断は日本政府の願いどおりだったとも言える。高市政権は先週、360億ドル(約5兆6000億円)規模の対米投資案を披露したが、日本政府としては、15%の関税と引き換えにトランプから要求された5500億ドル(約86兆円)の「契約金」など支払いたくないのが本音だろう。

どの国・地域も一律の関税率を適用されることになった(編集注:ジェイミソン・グリア米通商代表は、一部の国の関税率はトランプが表明した「15%」を超える可能性があると述べている)というのに、なぜ日本はこの途方もない額の経済的身代金を支払わないといけないのか。もちろん話はそう単純ではない。日本は安全保障を米国に依存しているため、高市のチームの選択肢は限られる。それでも、ルールが変わったあとも、タイの年間GDPに匹敵する金額を米国に送金するなどというのは正気の沙汰と思えない。

ベッセントが、円相場の急激な変動が世界の市場を揺さぶることを懸念しているのは明らかだ。

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26年にわたるゼロ金利政策のおかげで、日本は世界最大の債権国になった。あらゆる分野の投資家が低金利の円で資金を借り入れ、より高い利回りの資産への投資に回すようになったためだ。この戦略はニューヨークの不動産からアルゼンチンの国債、南アフリカのコモディティー(商品)、インドの債券、ニュージーランドドル、中国株、暗号資産(仮想通貨)まで、さまざまな資産価格を支えてきた。

その結果、円相場が急に一方向へ動くと世界中の市場は逆方向に振れやすくなっている。現在、市場が神経をとがらせているのは、円相場の急激な変動をきっかかに世界的な売りが誘発される事態だ。ベッセントにとって気がかりなのは、市場が一気にリスクオフ(回避)モードに切り替わり、AI(人工知能)バブルをめぐる懸念ですでに不安定になっている米国株に打撃を与えるという展開だろう。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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