スキルと挑戦が交差する深い没入状態であるフロー状態は、執着と共存できないことに気づくまで何年もかかった。執着はそれを「逆フロー状態」にしてしまう。競技フィギュアローラースケーターだった時代を振り返ると、私には好奇心のマインドセットが欠けていたことに気づく。完璧でなければならないという確信に囚われすぎて、プロセスへの興味を忘れていた。得点に執着していたから、フロー状態を見つけられなかったのだ。
リュウが焦点を「金メダルを獲ること」から「自分のアートを表現すること」へと移したとき、内側のノイズは減った。身体は、すでに知っている動きを実行できた。メダルは推進力ではなく、副産物になったのである。
野心と執着
期待される結果を手放すことは、基準を下げることではない。自分の準備を信頼することだ。ハイパフォーマーはしばしば、次を混同する。
・野心:健全で前向きな規律(トレーニングの原動力となる)
・執着:恐れに駆動され、結果に取りつかれること(不安の原動力となる)
リュウの五輪の演技は、野心は残しつつ、執着を手放したときに何が起きるかを示した。この方程式で「野心」の側を極めながら、「執着」の罠に落ちないために、私はよくタイムボクシングという手法を使う。これにより、設定した時間内はプロセスにコミットし、タイマーが止まったら結果を手放すことができる。
経営層への示唆:野心をコントロールする方法
●「脅威」目標ではなく「プロセス」目標を設定する:「100万ドルの契約を絶対に成立させなければならない」(脅威)ではなく、「このクライアントの課題を解決する提案を実行したい」(プロセス)と考える
●コントロールできることに集中する:重要な会議でCEOの機嫌はコントロールできない。だが、呼吸、準備、明瞭さはコントロールできる。
・呼吸のリズム:神経系を「パフォーマンス状態」に保つ。これは私のセルフトークのABCDの第一歩である
・準備の質:すでに積み上げた仕事を信頼する
・つながり:結果ではなくメッセージに焦点を当てる
●5分間の振り返り:プロジェクトの終わりに「成功したか?」と問うだけではない。「プロセスから何を学んだか?」と問う。
本当の金メダル
アリサ・リュウが身につけるメダルは目に見える。しかし本当の金メダルは、彼女の内なる支えにあった。リーダーが絶え間ない評価、変動する指標、競争的な比較にさらされる今日の職場において、支えとなるものを持つことは最大の競争優位である。リュウの演技は、単なるアスリートとしての卓越ではない。世界が見守るなかで地に足をつけ続けることのマスタークラスだった。
リュウは勝っただけではない。金メダルを追いかけるのをやめたとき、ようやく金メダルが追いつく余地が生まれることを示した。リーダーにとっての支えとは、足を引っ張る重りではない。市場という「氷上」が滑りやすくなったときにも揺るがない、地に足のついた好奇心である。


