リーダーシップ

2026.02.26 22:16

なぜ大学は若いリーダーを必要としているのか

Wangkun Jia - stock.adobe.com

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大学1年の秋に入寮したとき、私は多様な若者9人のフロアに配属された。人種も主要な宗教も一通りそろい、3人はゲイであることがわかり、2人はSigma Alpha Epsilon(シグマ・アルファ・イプシロン)だった。政治的立場も千差万別だった。出身地もまた多彩で、ブルックリン、コネチカット、バージニア、メリーランド、ワシントン州から2人、ロサンゼルスの高級私立校出身が1人、そしてホッケーのリクルートではないカナダ人が1人──それが私で、キャンパスでもかなり珍しい少数派の1人だった。そして、スリランカ出身のレイがいた。

レイは「見知らぬ土地の異邦人」だったが、陽気で礼儀正しく、いつも紳士そのものだった。だからこそ、いたずらの標的になることもあった。たとえば、ブルックリン出身のクリスが廊下の向こうからやって来て、私の電話を借り、ルームメイトのレイに電話をかけたときのことだ。クリスはボストンの上流階級風に声を作り、「ハーバードのジョン」を名乗った。

クリス:ご機嫌いかがでしょう。ハーバードのジョンです。クリスとお話しできますか?

レイ:いいえ、ジョン。クリスは今、ここにおりません。

クリス:なんてことだ! それは困りました…… できれば、ハーバードのジョンができるだけ早く話したがっていると伝えていただけますか?

レイ:はい、ジョン。伝言をお伝えします。

数日間にわたり、クリスは同じ電話を6回ほど繰り返した。毎回「ハーバードのジョンがクリスと話す必要がある」と言い張り、その切迫度は増していった。そして、レイが伝言を適切に伝える努力をしていないのではないかとほのめかすところから、断定するところへと移り、「ハーバードではそんなことはあり得ない」とまで言うようになった。最後の電話はこうだ。

クリス:レイ、またハーバードのジョンだ。クリスはどこだ?

レイ:ここにはおりません。あなたの伝言はすべて伝えました。

クリス:彼を探して、直ちに電話口へ連れてきてください。

レイ:(長い沈黙……)くたばれ、ハーバードのジョン。くたばれ!

その言葉が自然に口をついて出る人物らしく、レイは天文学を専攻し、やがて天体物理学者となり、系外惑星の発見者となり、ついには彼の名を冠した小惑星までできた(小惑星4668 Rayjay)。コーネル大学とジョンズ・ホプキンス大学で指導的ポストを歴任したのち、レイ・ジャヤワルダナは、このたび第10代のカリフォルニア工科大学(Caltech)の学長に指名された。

レイを知る私からすれば、これはCaltechにとって素晴らしいニュースだ。彼は、たとえ私の「理想のCaltech像」(たとえばReal Geniusで描かれる「Pacific Tech」の学生たちのように、寮の床を凍らせてスケートパーティーを開いたり、シリアルの箱の懸賞に何千件もの応募を自動化したり、宇宙レーザーとポップコーンで邪悪な教授の不正な家を破壊したり)は実現しなくても、見事な仕事をするだろう。高等教育にとっても教訓的である。なぜならレイはまだ若く、これからの仕事に必要なエネルギーと野心を備えているからだ。

それが必要になる。というのも、大学学長は世の中でも最も過酷な仕事の1つだからだ。学校の長であるだけでなく、ヘッジファンドのマネージング・ディレクター、規制業種の最高コンプライアンス責任者、病院のCEO、そして生活のあらゆる側面に関わる機能を持つ小都市の市長を同時に務めるようなものだ。学長は教員をなだめ、保護者を安心させ、議員を出し抜き、理事会を取りまとめ、日々の論争のただ中で前進を維持しつつ、同窓生の支持をつなぎ止め、「本物のボストン上流階級」から資金を集めねばならない。

この常時稼働の仕事に最も近い比較対象は、NFLのヘッドコーチかもしれない。シーズン中、選手人事や戦略の管理に加え、練習、分析、コンディショニング、けが、フロントオフィス、メディア対応に追われ、ヘッドコーチは週100時間働くことで有名だ。月曜は映像分析、選手評価、負傷確認、メディア対応で16時間。火曜は──選手にとっては一応オフだが──コーチは次の対戦相手に集中し、働くのは12時間程度かもしれない。水曜から金曜は、計画と練習の16時間が続く。土曜は移動を伴うことが多く、12時間で終わる。試合当日もまた長丁場だ。

だからこそ、NFLのコーチは若返り続けている。スーパーボウルLXの覇者シアトル・シーホークスの指揮を執るのは38歳のマイク・マクドナルドで、40歳未満のヘッドコーチは5人いる。20世紀の典型的なフットボールコーチが「年配で寡黙」(たとえばダラスのトム・ランドリーのフェドラ帽)だったのに対し、新たなパラダイムは分析志向で若く、活力とエネルギーにあふれる。その結果、NFLコーチの平均年齢は50代半ばから40代半ばへと下がった。

高等教育はそのヒントを得ていない。米国教育評議会(American Council on Education)によれば、大学学長の平均年齢は60で、過去20年ほとんど動いていない。70代の学長を任命する例も知られている。バークレーの前学長は72歳で選ばれた。カリフォルニア大学(UC)システムの新学長は69歳である。ウェストバージニアの指導者で、立派なE・ゴードン・ジーは、昨年81歳で退任した。数年前、Inside Higher Edは核心を突く問いを投げかけた。「大学学長にとって、70歳は新たな50歳なのか?」学長職の激務は高齢の指導者に負担を強い、平均在任期間が6年未満で、さらに短くなり続けている理由にもなっている。

これは巨大な問題だ。なぜなら、NFLチームは短期間で立て直せる(たとえば、シーホークスに敗れたばかりのニューイングランド・ペイトリオッツは昨季4勝13敗だったが、選手の58%を入れ替えて今季は14勝3敗で終えた)のに対し、大学はより長い時間を要するからだ。学長は10年どころか1年で教員・職員の58%を入れ替えることなどできない。共同統治(shared governance)により、学長が全面的に統制できるわけでもない。認証機関はプロセス、使命への準拠、安定性を重視する。同窓寄付者は、学校を「自分の記憶のまま」に保つことに執着する。そして理事会は同窓生が多数を占め、資金開発の目的で意図的に大規模であることが多く、そのぶん扱いづらく、新しい方向へと行進させるのは難しい。急速な変化を歓迎する文化があると説得力をもって主張できる機関がほとんどないのも、驚くには当たらない。

Caltechは立て直しを必要としないが、必要とする(あるいは必要とするようになる)機関は何百もある。高等教育の中核的な価値提案──そして、5年後や10年後に今と同程度の人数の学生を引き続き惹きつけられる可能性──は、学費負担可能性と雇用可能性という二重の危機に直面している。

過去20年で名目授業料が概ねインフレ率の約2倍のペースで上昇し、寮費・食費・各種手数料のコストはさらに速いペースで上がった。その結果、77%が「大学は手が届かない」と答え、63%が「4年制学位は費用に見合わない」と答えている。多くの選抜的な大学は、まもなく年間総費用10万ドルというルビコン川を越え、さらなる望まれざる注目を集めるだろう。

すべての学生が、大学1年分と同じだけの賃金を得られる仕事に卒業と同時に就くのなら話は別だ。だが現実はそこから程遠い。デジタル変革により、良質なエントリーレベルの仕事は、教室では身につけにくい特定の技術スキルとビジネススキルを求めるようになった。同時に、経験ギャップも生まれている。雇用主が、すでに仕事をこなせることを示した候補者──たいていは、すでにその仕事、またはそれに近い仕事を経験した者──しか検討しないためだ。その結果、深刻な不完全就業や、拡大する失業が生まれ、大学はキャリアの立ち上げを保証しないどころか、高校卒業者にとって小売や接客の現場職に代わる唯一のスケールした選択肢であるという事実そのものが、「ハーバードのジョン」にふさわしい悪ふざけだという空気さえ漂っている。

こうした課題への対応はデジタル変革を要しないかもしれないが、劇的な変革は必要だ。より速く、より安く、実務に根差したプログラムを提供するために、機関全体を再設計する必要がある。前述の変化へのアレルギーを踏まえると、Caltechが長期を見据えて学長を採用するなら、多くの大学はさらに長期を見据えて採用すべきだ。なぜなら、成果を刈り取る時期まで組織にいない学長は、必要なリスクを取りにくいからである。

ロースクール卒業後の最初の職場で、私はコロンビア大学で、マイケル・クロウという猛烈な仕事ぶりのエグゼクティブ・バイス・プロボストの下で働いた。彼は当時43歳で、厳密な思考、コミュニケーション能力、深い献身で周囲を感心させた。3年後、彼はニューヨークを離れ、もっと地味な場所へ向かった。アリゾナ州立大学(ASU)である。当時のASUはパーティースクールと見られ、学術的評判は「ムラがある」と表現するのが最も近かった。だが、多くが砂と女子学生クラブ(そしておそらく、屋内ビーチパーティーのせいで地下に砂が残っている女子学生クラブも)を見るところに、彼は機会を見出し、仕事に取りかかった。彼のビジョン──New American University──は、卓越性を「何人を排除したか」ではなく、「何人を包摂し、彼らがどう成功したか」で定義し直すことだった。

この英雄譚はおそらく多くが知っているだろう。クロウ学長の下で、ASUは研究強度を高める一方で、学術分野の命名に従うのではなく現代の課題に基づいて学部やプログラムを再編し、対面とオンラインの両方で学生数を増やした。ASUは企業、政府、慈善団体との提携を数百件立ち上げ、地域のニーズに応え、市場機会を攻めた。今日、ASUは最も革新的な大学とみなされている。従来型の指標でも勝っている。研究助成金は約10倍、R1の新規ステータス。入学者数は約3倍となり、全国メリット奨学生の数はごく一部の超選抜機関を除くすべてを上回る。ペル給付資格のある学生の入学者数は4倍で、卒業率は、彼が舵を握った当時のASUの平均卒業率を上回る。運営予算は7倍、基金は8倍だ。

マイケル・クロウは先見の明を持つ人物である。だが、もし自分が「24年目に突入し、なお続く」長期政権を見通していなかったら、これほど野心的でエネルギッシュではなかったかもしれない。彼は働き、リスクを取り、ASUを模範となる公立大学へと変革した。それが彼のレガシーであり、彼のリーダーシップの恩恵を受けた何十万人もの学生、教員、職員とともに残る。46歳で始まったリーダーシップである。

これは経験の重要性を貶める意図ではない。20代でコロンビア大学で彼と働いていたころ、私はリーダーの役割を得ることに焦っていた。知性と努力があれば、10年や20年経験のある者よりもプロジェクトに資すると考えたが、彼らは半分ほどしか熱心に見えなかった。今の私は、それが未熟さの産物だとわかる。とりわけリーダー職では、状況を以前に見たことがあること──過去の経験のパターンという利得──が非常に役立つ。特定のビジネス課題にとっても、候補者を評価し役割に適合させることにとっても、さらには人格タイプを見抜きそれに応じて振る舞うことにとっても、極めて重要だ。それが、機能する組織と機能不全の組織を分けることが多い。多くのスタートアップで見られる混乱と頻繁な崩壊が、その証左である。

同時に、経験がすべてではないし、多くの場合決定打でもない。状況によって変わる「ちょうどよい均衡点」がある。たまたま、多くの大学・カレッジという状況は、より長い時間軸を持ち、大胆であることに強いインセンティブを持つ指導者に大きく傾いている。46歳のマイケル・クロウのような指導者であり、階段を上り、チェックボックスを埋め、「安全な選択」に見える候補者ではない。これまで以上に多くの機関が、安全策を取る余裕を失っている。

先週、オハイオ州立大学、コロラド大学、ブラウン大学、ヴァンダービルト大学、ウェストバージニア大学の元学長であるゴードン・ジーがオハイオ州立大学のキャンパスに戻っていたところ、ドキュメンタリー映画の制作者がインタビューを求めて近づいた。元学長を守ろうとした助教が、インタビュアーの手からカメラを叩き落とし、地面に組み伏せた。映画制作者はオハイオ州立大学の卒業生で、首と肩の負傷で救急外来に搬送された。

70代や80代の学長採用をやめる理由がもう1つある。教授たちが彼らを守ろうとしてトラブルを起こさないためだ。よりよい理由はAIである。あらゆる産業がAIで変貌し、高等教育も例外ではない。製品・サービスの開発、提供、マーケティング、販売、顧客対応、管理部門とその従業員が激しく揺さぶられる中で、嵐を乗り切り、船を浮かべ続けるには、他業界ではすでに、AIネイティブで「初心者の心と適応力をより多く備えた」CEOを好む傾向が顕在化している。つまり、若返り、X世代の候補者を飛ばしてミレニアル世代を選ぶということだ。Kickstarter、Lime、Red Lobsterはいずれもそれを実行した。エビで傷ついたシーフードチェーンは、36歳のCEOを任命した。

高等教育が若い指導者の魅力に無頓着であり続けるなら、ダグ・レダーマンは逆の提案をする。キャリア末期の暫定学長を1〜2年招き、最も困難な案件を片付けるというのだ。レダーマンは、2024年11月に暫定学長として就任した後、昨夏、浮ついた理事会によって「暫定」の肩書を剥奪されたブランダイス大学の77歳の指導者アーサー・レヴィンを引き合いに出しつつ、「改革では不十分だ。多くの大学に必要なのは再創造、変革だ」という点で同意する。問題は、アーサー・レヴィンのような人物が十分にいないことだ。ましてや、「持ち帰り注文を革命化するAI搭載の電話注文エージェントをRed Lobster全店舗で展開する」ようなことをやり切れる、70代の高等教育ベテランはなおさらである。

悲しいことに、多くの大学・カレッジは、今後数十年のリーダーシップについて厳しい決断を下す段階にすら近づいていない。価値提案が色あせている現実と向き合ってこなかったからだ。彼らは、予測不能な連邦政府による前例のない動きに気を取られてきた──それらの問題は、4カ月足らずで80歳になる大統領がもたらした産物である。そうした問題が、ノースウェスタン大学に86歳の暫定学長を呼び戻させた。老人同士の戦いだ。

先月、シカゴ前市長でホワイトハウス首席補佐官も務めたラーム・エマニュエルは、大統領、閣僚、議員、連邦判事に対して75歳の強制引退年齢を求めた。Logan's Runほどではないが、数年前にこの一歩を踏み出していれば、何百もの学校が、より刺激的ではないがより存亡に関わる課題に取り組んでいたかもしれない。そして理事会も、それに対処する時間軸を持つ若い指導者の選定に、いままさに踏み出していたかもしれない。

この不幸で不要な遅れについて、Caltechの新学長が何と言うか、私はだいたいわかる。

くたばれ、クイーンズのドナルド。くたばれ!

forbes.com 原文

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