経営・戦略

2026.02.26 22:02

中堅企業が「ISO不要」と考えることの代償

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Punit Bhatia - FIT4PrivacyやGrow Skills Storeなどのブランドを立ち上げた、基調講演者兼起業家。

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従業員50〜500人規模の企業のリーダーは、ISO規格の話になると「うちには規模が小さすぎる」と口にしがちだ。この反応は理解できる。ISO規格は、膨大な文書化、長期のプロジェクト、そして多額のコンサルティング費用と結び付けて語られることが多いからである。だが実際には、企業が「ISOには小さすぎる」と考えるのは誤解であり、コスト高につながり得る。この発想は、不必要なリスク、手戻り、そして潜在的なビジネス機会の損失を招く。

「ISOは大企業のものだ」という言葉の裏には、より深い懸念が隠れていることが多い。この異議は一般に、時間の制約、コンプライアンス部門の不在、コスト面の考慮、あるいはISO導入によって機動力が低下するのではないかという不安に由来する。

企業が「コンプライアンス部門がない」と言うとき、ガバナンスはぜいたく品のように扱われがちだ。企業が「そんな余裕はない」と応じるとき、認証は大きな投資だと受け止められている。組織が「うちはアジャイルだ。ISOは足かせになる」と主張するとき、プロセスは官僚的なものと見なされがちである。

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こうした懸念はもっともだ。しかし、可能性があるのはフルスケールでエンタープライズ級のISOプログラムだけだと決めつけるのは誤りである。

隠れたコスト

認証取得を目指さない場合でも、ISOに沿った実務を怠ればコストが発生し得る。

1. 能力構築ではなく「コンプライアンスの火消し」に費用を払うことになる

明確なマネジメントシステムがなければ、コンプライアンスは後追いで反応的になる。依頼が来てからポリシーを書き、製品の意思決定をした後でリスク評価を実施し、監査やデューデリジェンスの直前に慌てて証跡を集める。これは、シンプルで再現可能な仕事の進め方を構築するよりも高くつく。

2. エンタープライズ調達で案件(または利益率)を失う

ミッドマーケット企業が、より大きな組織へ販売するケースは増えている。買い手は構造を求める。ガバナンス、役割、統制に関する基本的な質問に答えられなければ、長期化するセキュリティ・コンプライアンス審査で足止めされるなどの障害に直面しがちだ。重い契約条項を押し付けられるかもしれない。あるいは競合に敗れることもある。

3. キーパーソンリスクを生む

「プライバシーのやり方」「インシデント対応」「ベンダー評価」を1人が握っていると、単一障害点をつくることになる。ISO流のガバナンスはオーナーシップを分散し、組織を強靭にする。

4. チーム間で実務が不整合になる

企業が成長すると、不整合が常態化する。チームごとに要件の解釈が異なる。ISOは共通言語と構造を提供し、成長が混乱を生まないようにする。

オペレーティングシステムとしてのISO

ISO認証は「バッジ」である。ISO 27701(プライバシー)、ISO 9001(品質)、ISO 42001(AIマネジメント)などの規格は、組織が再現可能で監査可能かつスケール可能な実務を構築できるよう設計されている。ミッドマーケット企業にとっての目的は書類づくりではない。目的は、明確な説明責任、一貫したプロセス、そして大げさな騒ぎを起こさずに迅速に提示できる証跡である。

実務的な進め方

認証から始める必要はない。まずは現実に機能するものを構築し、その後で、自社の市場や顧客にとって証明書が本当に必要かどうかを判断すればよい。

1. スコープを定義する

今日実際に統制が必要な範囲を決める。どの製品、データ、チーム、システム、地域か。例えばSaaS企業であれば、すべての社内ツールではなく、本番プラットフォームとカスタマーサポートから始めるとよい。

2. オーナーを置く

「ITがやってくれるだろう」と想定するのではなく、重要領域ごとに説明責任を負う担当者を1人ずつ指名する。例えば、エンジニアリング責任者がプロダクトセキュリティを、COOがベンダーリスクを担う、といった具合だ。インシデントが起きたとき、あるいは大口顧客の質問票が届いたとき、誰が対応を主導するのかが即座にわかる。

3. 実用最小限のポリシーセットをつくる

人々が実際に使える短く実務的なポリシーを少数書く。各2〜3ページ程度で、明確な「やる/やらない」のルールと、シンプルな例外を示す。例えば「共有アカウントは禁止。アクセス権は四半期ごとに見直す」と定めたアクセス制御ポリシーのほうが、100ページの文書よりはるかに有用である。

4. 影響の大きいプロセスをいくつか実装する

それらのポリシーを、少数の高価値なルーティンに落とし込む。例えば次のとおりだ。

• リスク評価:シンプルなテンプレートを使い、主要なシステムやプロジェクトについて、プライバシー、AI、ベンダーのリスクを見直す。例えば、どのデータを使うのか、誰が出力を見るのか、何が問題になり得るのかを文書化する。

• サプライヤーマネジメント:ベンダーを高・中・低リスクに分類する。顧客データを扱う、またはAIサービスを提供するベンダーには追加のチェックを適用する。

• 研修と意識向上:自社の現実や、チームが実際に直面しているAI誤用のシナリオを題材に、短時間でシナリオベースのセッションを実施する。

実務上は、慌ただしい「フルISO導入」よりも、これらを実行するほうがリスクを低減できることが多い。

5. 証跡を蓄積する

これらのプロセスを回す中で、主要な成果物を1つの構造化された場所に保存する。例えば、ポリシー、リスク評価、インシデントログ、ベンダーレビュー、研修の出席記録といったサブフォルダを備えたシンプルなフォルダを維持する。見込み顧客から「セキュリティとプライバシーを管理していることを証明できますか」と尋ねられたとき、メールを探し回るのではなく、整った証跡パックを数時間で提示できる。

6. 内部レビューのサイクルを回す

数カ月後に、軽い内部レビューを実施する。「うまくいったことは何か」「何が人々の足を止めたか」「無視されたのは何か」「どこで実益があったか」を問う。重すぎる手順は簡素化し、まだ不安が残る領域は強化するために、このレビューを活用する。

7. 認証取得を判断する

ここで初めて、ISOに準拠したままにするのか、正式な認証取得を目指すのかを決める。顧客が主に求めるのが、安心感とセキュリティ質問票への適切な回答であるなら、準拠と堅牢な証跡パックで十分な場合がある。大企業向け案件や規制産業の案件を獲得したいなら、認証への投資が戦略的な商業判断になり得る。

このアプローチは、労力を適正な規模に保ちながら、ビジネス価値を提供する。

30〜60日で実現し得る「実用最小限のISO」とは

多くのミッドマーケットのチームにとって、現実的な最初のマイルストーンは「認証を取ること」ではない。むしろ次の状態であるべきだ。

• 明確なガバナンス構造(役割、責任、エスカレーション)

• 関連するISO規格について、FoundationまたはImplementerとして認定された1〜2人

• 実際の働き方に合致した、6〜10の実用的なポリシー

• 再現可能なリスク評価プロセス

• ベンダーのデューデリジェンス用チェックリスト

• シンプルな研修計画

• 再利用可能な証跡をまとめた共有フォルダ

実用最小限のISOだけでも、リスクを低減し、営業サイクルを短縮できる。

最後に

「うちはISOには小さすぎる」は、多くの場合「構造をつくるには忙しすぎる」を意味する。この実務的アプローチはリスクを減らし、営業を効率化し、強靭性を高める。認証取得が必要かどうかは後からいつでも判断できるが、ISO的な考え方を早期に取り入れることは、即効性のあるビジネス価値をもたらす。

forbes.com 原文

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