経営・戦略

2026.02.26 21:44

グローバル展開で創業者がつまずく4つの盲点

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Jack Thorogood(Native Teams創業者兼CEO)。業務の支払いと雇用に関するグローバルプラットフォームを展開し、85カ国以上で事業を運営している。

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プロダクトローンチや資金調達のサイクル、大量採用を乗り越えてきた創業者にとって、グローバル展開は次なる当然の一手に映るかもしれない。

しかし、SaaS、フィンテック、AI、プロフェッショナルサービスの分野にまたがる100人超の創業者から得た知見に加え、グローバルに活動する3,000社超の運用データも踏まえてまとめた当社の「Global Expansion Report」は、グローバル展開が創業者の想定以上に繊細なテーマであることを示している。

データセットには、アーリーステージとグロースステージのスタートアップ、スケールアップ、さらには拡大が停滞したケースも含まれており、示唆は幅広く適用できる。そこからは、創業者が繰り返しつまずく4つの盲点が浮かび上がった。これらを理解することが、効率よくスケールするか、手応えのないまま資本を燃やすかの分水嶺になり得ると私は考えている。

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1. 法務・税務・銀行実務の複雑さを過小評価する

拡大とは、異なるタイムゾーンにいる人材を雇うだけではない。税務、給与、法人統治(ガバナンス)にまたがる規制が、管轄区域ごとに異なる形で常時の運用負荷としてのしかかり、新市場に入るたびに複雑性が増幅していく。

私たちが検証した19の法域では、法人設立までの期間は15〜23日と幅があったが、公証、資本金の払い込み、現地銀行での確認といった手作業の要件がある市場では、数週間の事務作業が追加され、コストも押し上げられ得る。

後からコストが雪だるま式に膨らむのを避けるためにも、創業者はコンプライアンスを前倒しで設計しておくほうが得策である。初回採用の前に税務と銀行手続きの道筋を検証し、現実的なタイムラインを設定しておけば、海外でチームが拡大する局面でのオペレーション寸断リスクを下げられる。

2. 採用モデルを誤解する

グローバル採用に「既定の定石」はない。それでも私は、多くの創業者が業務委託に安易に寄せたり、法人設立を急いだりする場面を目にする。当社データでは、ある市場のチームが3〜7人を超えると、EOR(Employer of Record:雇用代行)のような仲介型モデルの総コストが、現地法人を運営する平均年間コストに並ぶか、それを上回ることが少なくない。

法定届出、給与計算、税務登録、継続的なコンプライアンスといった追加の間接費も考慮し、私は50%のコスト・バッファーを見込むことを勧める。そうすると損益分岐は、市場あたりおおむね4〜10人へと移る。

創業者は、いつ業務委託を使うのか、いつ市場検証のためにEORを活用するのか、そしていつ法人設立が財務面・運用面の双方で合理的になるのか、採用モデルを自社仕様で整理すべきである。

3. 法人を早すぎる段階で、あるいは頻繁に設立しすぎる

現地インフラを自社で保有することは強力だが、時期尚早な保有は焦点を逸らし、手元資金の余命(ランウェイ)を削りかねない。

当社の調査では、企業が法人保有の恩恵を得やすいのは、一般に4カ国以上で事業運営しているか、グローバル従業員が50人を超えた後であることが示されている。地域差も重要だ。北米と西欧では、規制と市場の期待から、参入時のセットアップをより迅速に求められることが多い。一方で、東欧、中南米(LATAM)、アジア太平洋(APAC)では、初期の実験により柔軟性がある。

実務上は、法人設立を「需要の実証」と「運用の準備完了」の結果として捉えるということになる。総じて、最もレジリエントな企業は、収益の予見性と社内キャパシティがインフラ保有を正当化するまで、法人設立を遅らせていると私は見ている。

4. 多文化・分散チームのマネジメント準備が不足している

法務と運用の障壁を超えて、当社調査はより微妙でありながら重大なリスクも浮き彫りにした。すなわち、リモートで多文化なチームをマネジメントする難しさである。実際、創業者の15%はこれを主要な課題として明確に挙げ、特にメンバー同士が一度も対面したことのない分散チームには固有のニーズがあると強調した。

データと私自身の経験を踏まえると、コンプライアンスに適合したグローバルインフラに現地リーダーシップを組み合わせることが、分散チームに「理解され、つながっている」という感覚をもたらすうえで最も有効だといえる。現地文脈の理解と意図的なオンボーディングは、法務や給与の問題が表面化するずっと前から、運用上の摩擦や実行遅延を減らし得る。

意図と実行のギャップを埋める

グローバル展開は、人材へのアクセス、新市場、戦略的なレジリエンスをもたらす。しかし、現実の複雑性を無視すれば、時間、資本、士気を失うことになる。

上述のパターンは抽象論ではない。実在の創業者たちが直面してきた運用上の真実である。思慮深く拡大する企業は、法務、採用、人材の戦略を現実的に組み立て、グローバル展開を意図的な意思決定の連続として扱っている。

効率的なスケールと資本の焼失を分けるのは、これらの盲点を認め、成長前にインフラを計画し、柔軟な体制から恒久的な体制へ移行するタイミングを見極めることにある。謙虚さ、適応力、そして運用面の厳格さをもって、戦略的に進めるべきだ。

forbes.com 原文

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