リーダーシップ

2026.02.26 21:36

守るべきは「雇用」ではなく「レバレッジ」──ホワイトカラー業務の静かな終焉

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Sima Mosbacherは元航空機ジェットパイロットであり、年間成長額10億ドル超を生み出す広告会社HighScale AIのCEOである。

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長い間、企業は「動いていること」と「価値」を取り違えてきた。

ホワイトカラーの仕事には、成果を生むからではなく、非効率を吸収するために存在していた層が丸ごとあった。会議のための会議。誰も何も「持っていない」状態を調整するために設計された役割。仕事をする代わりに仕事を説明する、終わりのない文書化。

AIがこの問題を生んだのではない。露呈させたのだ。

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いま目の前で起きているのは、仕事が劇的に崩壊することではない。もともと脆弱だった「レバレッジの小さい役割」が静かにほどけていく過程である。自動化が突然それらを時代遅れにしたのではない。ただ、それらを温存する言い訳を取り払ったにすぎない。

これからの働き方の本質は、雇用を守ることではない。レバレッジを生み出し、維持することだ。この違いを理解することは、AI主導の変化を乗り越えようとするリーダー、従業員、組織にとって決定的に重要である。

これは「雇用」の話ではない──「レバレッジ」の話である

自動化が加速するたびに、リーダーは決まって同じことを言う。「雇用を守らなければならない」と。

その反応は人間として自然だが、同時に誤っている。守るべきは雇用ではなく、価値である。

情報を運ぶこと、反復を管理すること、システム間で仕事を翻訳することに主として存在意義がある役割は、構造的に脆い。個人が代替可能だからではない。機能が代替可能なのだ。

企業は長年、階層、人数の増加、複雑さによってこれを覆い隠してきた。AIは、反復的な調整をこなし、情報の流れを統合し、レポーティングを自動化することで、その幻想を剥ぎ取った。不都合な真実は、ホワイトカラーの「忙しいだけの仕事」の多くが、現実の成果を押し上げるためではなく、自らの存在を正当化するためにあったということだ。

実際に消えつつあるもの

薄れていく仕事には、3つの特徴がある。

1. 成果を所有していない。

2. 反復に依存している。

3. 意思決定と実行の「あいだ」に存在している。

たとえば、権限のないレポーティング、オーナー不在の調整、成果ではなく「動き」を監督するために築かれた管理層などだ。

こうした仕事が消えていくのは、AIがより賢いからではない。費やした労力に対して、持続的なレバレッジや長期的なインパクトを生み出してこなかったからである。単発の取引、レポート、会議の先まで残る成果のことだ。持続的なレバレッジに結びつく役割は、時間、チーム、売上をまたいで拡張する価値を生み出す。

才能の問題ではない

この変化をスキルギャップとして捉えるのは、リーダーが犯しがちな誤りである。私が見てきた中でも、最も勤勉で最も賢い人々の一部は、レバレッジの小さい役割に座っていた。彼らが失敗していたのではない。仕事のほうが機能不全だったのだ。レポートは読まれず、承認は遅れ、意思決定は滞る。人が努力しなかったからではなく、仕組みが成果よりも「動き」を報いるようにできていたからである。

いまなお重要性を保つのは、必ずしも最も学歴や資格がある人、目立つ人ではない。貢献が容易に抽象化されない人、もしその仕事を取り除けばプロセスが止まり、プロダクトが劣化し、売上が止まるような人である。

ハードスキルこそ新しい雇用保障

ハードスキルとは、誰もがコードを書く必要があるという意味ではない。それは「不可逆性」を意味する。取り消せない、あるいは容易に外注できない仕事を生み出すこと。言い換えれば、自分の貢献を不可欠にするスキルである。

自分の仕事が、他者が依存する具体的な何かを生み出しているなら、そこにはレバレッジがある。自分を外せばシステムが壊れ、売上が滞り、品質が劣化するなら、あなたは重要である。

価値あるスキルには、システムを構築すること、売上のオーナーであること、インフラを運用すること、他者が頼る判断を下すこと、何かをエンドツーエンドでスケールさせることなどが含まれうる。

肩書はもはや雇用保障ではない。可視性も同じだ。保障するのはレバレッジである。

「中間層」──仕事が死ににいく場所

現代の組織で最も脆い層は、ジュニアでもシニアでもない。中間層である。ミドルマネジャーに能力がないからではない。多くの中間的な役割は、成果のオーナーになるよう設計されておらず、「動き」を管理するよう設計されていたからだ。

AIがコミュニケーションと実行を圧縮すると、その中間層はオーナーシップへ進化するか、消えるしかない。静かな崩壊が起きるのはここである。見出しになるような出来事ではなく、再編、役割の再定義、戦略転換の中で進む。

リーダーが取るべき別の行動

誤った反応はパニックである。正しい反応は、レバレッジを中心に役割を設計し直すことだ。

問いはこうだ。

・どの役割が、実際に事業を前に進めているのか?

・どの役割が、「昔からそうだから」という理由で存在しているのか?

・オーナーシップは、本物か、それとも見せかけか?

答えは、仕事を持続的なインパクトの周りに再構築する道筋を示す。役割は、各メンバーが成果に対する明確な説明責任、意思決定権限、測定可能なインパクトを持つように設計されるべきだ。たとえば、レポートを取りまとめるのが仕事のマネジャーがいるなら、データから洞察を生み出し、戦略的提言を行う責任を持たせる。会議を調整するだけのコーディネーターがいるなら、不要な会議を防ぎつつ重要な意思決定がなされるワークフローを設計させる。

目標は、見かけを保つのではなく成果を加速させる仕事である。削減のための削減はするな。勢いを奪う仕事を取り除き、レバレッジを生む仕事に置き換えよ。

個人にとっての意味

視野を広げれば、これは実のところ「崩壊」ではない。私たちは以前にも同じことを見てきた。

社会が余剰を生み出すほど、人々が食べていける仕事の種類は変わる。1500年代には、清潔な水、定期的に肉を食べられること、個人的な快適さは贅沢だった。今日の平均的な人のように暮らすには王族でなければならなかっただろう。いまの人がより懸命に働いているからではない。システムが改善し、余剰が拡大したからだ。仕事はその余剰に追随した。

かつては、書くこと、創ること、考えることだけでお金を払う社会ではなかった。その仕事は、生存を正当化するほど生産的ではなかったからだ。いまでは、記事を書くこと、コンテンツを作ること、他者を楽しませること、アイデアを育てることは、正当な生計の立て方になっている。

仕事が崩壊したのではなく、生き延びるためのハードルが下がったのだ。そしてそれが、再び起きている。

余剰が増えるほど、過去の世紀なら無用、贅沢、非本質的に見えたかもしれない仕事で生きていける人が増える。趣味のような仕事、創造的な仕事、プレッシャーの低い仕事、さらには明確にはスケールしない仕事でさえもだ。だからといって、人々が貢献しなくなるわけではない。いまの貢献とは、生存を正当化することではなく、インパクトや喜び、アイデアを生み出すことを意味する。高強度で成果志向の仕事を選ぶ人もいるだろう。多くはそうしないし、そうする必要もない。それは道徳的な失敗でも、経済の崩壊でもない。歴史的に見れば、社会が生存から豊かさへ移るとき、まさにそうなる。

1500年代の社会には、その柔軟性を支える余裕がなかった。2026年には、私たちはゆっくりとそれを持ち始める。2050年には、どんな贅沢と可能性が待っているか分からない。

これは仕事の終わりではない。仕事が「生存」である領域と、「贅沢」である領域に分かれていくことだ。そしてその変化は、人生をより良いものにする。

forbes.com 原文

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