ローレン・リヴァク・ギルバートは、業界変革を推進するコマースコミュニティであるDigital Shelf Institute(DSI)のエグゼクティブディレクターである。
1994年に最初のeコマース取引が行われて以来、目標は、画面の向こうにいる誰かが商品を購入できるようにデジタル化することにあった。そして、多くの組織はデジタル変革をまだ完了できていない。そこにAIの時代が到来し、すべてが変わる。
組織はAIを活用して効率を高め、規模を拡大しながらより多くのことを行っている。一方、消費者はAIエージェントを使って商品を発見しており、これが消費者の購買ジャーニーを根本から変えつつある。組織には適応が求められる。いま私たちは、デジタル変革とエージェント変革が同時進行する「二本立ての時代」に入っている。
次の10年の成長は、新たな顧客カテゴリー、すなわちAIエージェントによって牽引される規模拡大とパーソナライゼーションの拡張から生まれる可能性がある。企業はいま、人に対してだけでなく、代わりに買い物をし、調査し、情報をキュレーションする自律エージェントに対しても販売している。この成長を取り込むには、組織が方向転換しなければならない。
なぜ人間では追いつけないのか
この転換が必要な理由を理解するために、今日競争するのに必要な作業量を考えてみよう。仮にあなたの組織が、3000SKUという控えめな商品カタログを持っているとする。多くの組織は商品詳細ページ(PDP)を年に1回更新している。しかし競争力を維持するには、PDPを四半期ごとに更新すべきだ。
3000SKUを1つのチャネルで四半期ごとに更新すると、年間1万2000回の更新になる。1SKUの更新にチームが10分かかるなら、作業は2000時間──従来の9時〜5時勤務で年間フルタイム(FTE)1人分に相当する。だが販売チャネルは1つではない。30チャネルなら、30FTEに膨れ上がる。
さらに、ハイパーパーソナライゼーションが求められ、コンテンツを毎月更新しなければならない世界を考えてほしい。この作業量は、通常、人間だけでは処理できない。だからこそ、AIを有効活用する組織とAIエージェントが、前進の道筋を示す。
恐れへの対処
解決策を論じる前に、この議論全体に漂う「メタセシオフォビア(metathesiophobia)」──変化への恐れ──に向き合わなければならない。
働き方は変わるのか。変わる。
明日、世界はロボットに乗っ取られるのか。そうではない。
いくつかのタスクは自動化されるが、これは絶滅ではなく進化の局面である。焦点を当てるべきは、常に人間固有であり続けるもの──共感、批判的思考、コミュニティ、そしてつながり──だ。
新たな時代
私たちは、デジタル変革の時代からエージェント変革へ移行しつつある。デジタル変革は、仕事をデジタル化することが目的だった。しかし、多くの人にとって、それは「後付け」の機能になってしまった。
エージェント変革は異なる。仕事をするのが誰(あるいは何)なのかを変える。人間がシステムを操作する状態から、感知し、判断し、行動する知的エージェントを人間がオーケストレーションする状態への転換である。
ゼロベースで作り直すアプローチ
組織は、壊れたプロセスにAIを単に付け足すことはできない。エージェント変革には、仕事の進め方そのものを書き換えることが必要だ。
会社全体を横断して調整を行うAI存在としての「スーパーエージェント」を想像してほしい。いま、あるブランドマネジャーが5月の製品ローンチを計画していても、姉妹ブランドが同じ日にローンチし、メディア投下が相食いする可能性があることを把握できていない場合が多い。
エージェント型組織では、企業全体のデータで訓練されたスーパーエージェントが、こうした衝突を即座に検知して警告できる。サイロがデータを囲い込むのではなく、共有された知識と意図へと移行するのだ。
ハイブリッドな労働力
未来の労働力は、人間、テクノロジー、そしてエージェントのハイブリッドになる。成功の鍵は、仕事のスペクトラムの中で各プレーヤーがどこに位置するかを理解することにある。
1. AIが行う仕事(単純作業):高ボリュームで反復的、データ集約的なタスクである。PDPの更新、市場シグナルに基づくリアルタイムの価格調整、自動化されたメディアバイイングなどが含まれる。
2. 人間によるエージェントのオーケストレーション(中間領域):人間がガードレールを設定し、シグナルを解釈する領域である。プロンプトエンジニアリング、ビジネス文脈に照らしたAI提案のストレステスト、AIの確信度が低いときの「例外」対応などが例だ。
3. 人間が行う仕事(戦略と心):ビジネスの、混沌として不完全で感情的な部分に充てる。複雑な事業計画の交渉、本物のコミュニティとのつながりの構築、長期的なクリエイティブビジョンの定義などである。
実行のためのプレイブック
この転換に備えるため、以下の3領域に注力したい。
1. データの再設計
エージェントの性能は、与えられるデータ次第で決まる。エージェントが自社商品を「読める」ようにするAPIファーストのアーキテクチャと、構造化データ標準に注力すべきだ。アンサーエンジン最適化──AIエージェントがブランドを見つけ、引用できるようにコンテンツを構造化すること──を最適化する。
2. 人材の再配線
これは大規模なカルチャーシフトである。忙しさ(作業量)を価値とする状態から、スループットと判断を価値とする状態へ移行しなければならない。
AIリテラシーは新たなデジタルリテラシーであり、リスキリングが重要になる。さらに、「オーケストレーター」「エージェント体験デザイナー」「AIトレーナー」といった新しい役割も登場するだろう。
3. 成功指標の再定義
古い指標は機能しない。代わりに、次を測定する。
・社内:自動化されたタスク数、削減された時間、従業員の利用・定着率
・社外:AI回答における引用の出現、AIプラットフォームからのリファラルトラフィック、AI最適化ページからのコンバージョン率
進歩が生む摩擦
エージェント変革への道のりは、多くの変化を伴う。組織は、エージェント変革の要素を加えつつも、デジタル変革にも引き続き注力する必要がある。
データはしばしば「アナログなサイロ」や非構造化フォーマットに閉じ込められている。エージェントの知性はアクセスできるデータの質と量に依存する。データが乱雑なら、変革は「自動化されたカオス」になりかねない。
もう1つの課題は、決定論的なマインドセットである。多くの企業文化は「もし〜なら、〜する」という決定論的計画の上に築かれている。AIが二択の答えではなく、確信度やシナリオを提示する確率的な世界へ移行するには、経営の意思決定の転換が必要となる。
リーダーへの助言
まず、白紙の発想を採用することだ。壊れ、サイロ化したプロセスにAIを付け足すところから始めてはならない。代わりに、「もし今日この会社を立ち上げるなら、このワークフローをどう設計するか」と問うべきだ。
実行よりオーケストレーションに重心を置く。従業員の役割は、実行者から編集者・ガバナーへ進化しなければならない。リスキリングを優先することも重要だ。深いドメイン専門性を持ちながら、人間とエージェントのハイブリッドな労働力をマネジメントできる幅広い能力も備えた「T型」のリーダーが必要になる。
そして最後に、事業計画だけでなく「変化のストーリー」を構築することだ。変革の取り組みは、従業員の抵抗によって失敗することが多い。各機能に「変化の推進役」を見いだし、この転換が戦略、共感、コミュニティ形成といった高付加価値の仕事に人間の能力を解放するためのものだと強調して、恐れに正面から対処したい。
AIを「付け足す」ツールとして見るのをやめ、エージェント変革を、ビジネスの進め方を全面的に配線し直すものとして捉えるべきだ。個別の実行から、集合的なオーケストレーションへ移る時である。



