サイエンス

2026.03.03 18:00

数を数え、ゼロを理解する鳥「ヨウム」が人間に教えてくれること

西アフリカ原産の大型インコ「ヨウム」(Shutterstock.com)

「数を数えること」は、鳥の脳内で何を意味するのか

ただし、ヨウムがわれわれ人間と同じようなやり方で数を数えているわけではない点は、指摘しておくべきだろう。ヨウムは、記号としての数学を操っているわけではなく、無限の数列を記述しているわけでもない。そうではなく、ヨウムの能力は、発達心理学者が「基数性(cardinal number)の理解」と呼ぶものに似ている。これはつまり、数を表す単語が、特定の個数や量と結びついていることを認識しているということだ。

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重要な点として、ヨウムは、数を認識していることを伺わせるいくつかの特徴を示している:

・一対一の対応:個別の組み合わせに、単一のラベルとなる数をマッチさせられる。

・順序的理解:例えば、「4」が「3」よりも大きな数を意味することを認識できる。

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・複数のカテゴリーを統合する柔軟性:異なる物体や文脈においても、数のラベルを正しくつけることができる。

興味深いことに、『Journal of Comparative Psychology』で2005年に掲載されたペッパーバーグの研究によると、アレックスは、特定の物体が「存在しない」ことを表現する、「ない」を表現する音声ラベルを正確に用いることができたという。これは議論を呼ぶ研究結果だったが、ペッパーバーグをはじめとする研究グループは、これが初期的な「ゼロ」の概念に似ていると主張した。すなわち、抽象的な数としてのゼロではなく、「1」とは異なる、「ものが存在しない」という意味を持つカテゴリーとしてのゼロだ。

ヨウムの計数能力に関する研究の大半は、制御された実験環境で実施されているが、野外観察や比較研究によると、量を識別する能力には、生態的にも意味があることが示唆されている。野生のオウムの仲間は、数値的評価が関係する問題に直面することがある。例えば、食料が豊富にあるかを判断する、群れの仲間を追いかける、餌場でのライバルの数を把握する、といった状況だ。

重要なのは、これらの研究が、野生環境でオウムの仲間に「算数的な」能力がある、と主張したり示唆したりはしていない点だ。これらの研究はむしろ、オウムが潜在的に持つ数的な能力が、生態学的な圧力と適合した場合に現れてくることを示している。

ヨウムの認知能力が、なぜ重要なのか

この研究結果がさらに興味深いのは、哺乳類の大半と大きく異なる脳の構造を持つヨウムが、これほど複雑な認知能力を持つに至った点だ。ヨウムには、高度な論理的思考には不可欠と長く考えられてきた、層構造を持つ大脳皮質が存在しない。

比較可能な条件下で実験した場合、ヨウムは、特定の数に関するタスクについては、チンパンジーや、人間の幼い子どもと同等レベルの成績をあげた。霊長類とのこうした「近さ」は、認知能力がまったく同じことを意味するわけではない。それでもこれは、知性の進化がたどる道筋は一本道ではなく、特定の集団に限られるわけでもないことを思い出させてくれる。

ヨウムの数的認知についての研究が進んだことで、知性の進化の過程に関する科学者の理解も改められた。異なる進化の系統が、生物学的には大きく異なるルートを経ながらも、よく似た認知的ソリューションに至ったのだ。

オウムの仲間たちの例は、飛行や声真似、複雑な社会組織によって形成された脳にも、記号のような形で数を認識する能力が生じることを示している。つまりこの能力は、大脳に新皮質を持ち、比較的体が大きい、人間などの種に限られたものではないということだ。

加えて、これらの研究結果は、動物福祉やコミュニケーション、学習に関する研究の設計方法に影響を与える。オウムの仲間が、数によるラベリングや抽象的なカテゴリーを理解できるのであれば、こうした鳥たちの精神生活は、これまで考えられていたよりも豊かであることは間違いない。彼らをどう扱うべきかという倫理的な問いも、より重みを増すことになる。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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