経済・社会

2026.02.26 15:14

AIエージェントはどこに「住む」のか? コマースの未来を決める5つのフォームファクター

Photo Agency - stock.adobe.com

Photo Agency - stock.adobe.com

本シリーズの第1回では、Amazonにとって最大の競争上の脅威は小売業者ではなくAIエージェントかもしれないこと、そしてその結果として生まれる戦いが、コマースのプロトコルからリテールメディアの560億ドルの料金所(トールブース)に至るまで、あらゆるものを再形成していることを論じた。だが、コマースの世界で多くの人がまだ問い始めてもいない、さらに大きな疑問がある。こうしたエージェントは、いったいどこに「住む」のか。

その答えは、今後10年で最も多くの購買意思決定に影響を与えるのが誰かを左右する。そしてそれは、単なるテクノロジーの問題ではない。コマースの問題である。

5つのフォームファクター、5つの未来

いま、汎用(水平型)のAIエージェントのフォームファクター(形態)をめぐって、5つの競合するビジョンが存在する。それぞれが、人々が商品を発見し、購入する方法にきわめて異なる含意をもたらす。

1. アプリ、またはURL

これは、今日私たちがいる場所だ。ChatGPTは開くアプリであり、訪れるウェブサイトである。エージェントのもとへ行き、質問し、場合によっては購入する。機能はするが、意識的な意思が必要だ。Amazonを開く代わりにChatGPTを開くと決めなければならない。ハードルは高い。

自分の行動を考えてみてほしい。歯磨き粉が必要になったとき、ChatGPTを開いておすすめを尋ねるだろうか。おそらく違う。Amazonを開くか、店に行く。アプリモデルでは、汎用エージェントは毎回「意図的に、頭の中で最優先に選ぶ」という意思決定を競い合うことになる。これでは、検討型の購買──ワイヤレスイヤホン、ベビーカー、冬用ジャケットといった、調べる価値があるもの──への影響に限られてしまう。習慣的な補充購買において、アプリモデルは売り込みにくい。

2. ブラウザ

MicrosoftはCopilotをEdgeに直接統合した。PerplexityはスタンドアロンのAIブラウザCometを立ち上げた。GoogleはGeminiをChromeに組み込もうとしている。ブラウザ統合が重要なのは、あなたがすでにいる場所──ウェブを閲覧している場所──で出会えるからだ。

コンテキストを切り替える必要がない。あなたはすでに小売業者のサイトで買い物をしており、エージェントはページを離れることなく、リアルタイムの比較、代替案、価格チェックを重ね合わせて提示できる。コマースにおいて、ブラウザは汎用エージェントにとって短期的に最も強力な配布チャネルになり得る。なぜなら、消費者とあらゆる小売業者の間に同時に位置するからだ。Target.comの商品ページを見ていると、サイドバーのエージェントが静かに「同じ商品がAmazonでは12ドル安い」と指摘したり、「Walmartでよりレビュー評価の高い代替品がある」と告げたりする光景を想像してほしい。これは仮説ではない。ブラウザ拡張機能はすでに同様のことをしており、ネイティブのAI統合によってそれがシームレスになる。

3. オペレーティングシステム

Apple IntelligenceはiOSに組み込まれている。GoogleはAndroid全体にGeminiを展開している。MicrosoftはWindowsにCopilotを組み込んでいる。エージェントがOSレベルに住むと、それはアンビエント(環境に溶け込む存在)になる。何かを開かなくても、あらゆる文脈で利用できる。

Apple IntelligenceはすでにSiriから提案を提示し、アプリをまたいだタスク完了を支援できる。Appleがコマースに本気で取り組むなら(Appleに関しては常に大きな「もし」だが)、Apple Pay統合を備えたOSレベルのエージェントは非常に強力になるだろう。ここで最も説得力のあるコマース上のポジションを持つのは、ひょっとするとGoogleだ。Android上のGeminiに、Google Shoppingの商品グラフとGoogle Payを組み合わせれば、OSレベルのフルスタックのコマースエージェントが成立する。他社にはこの3つすべてが揃っていない。

4. 専用AIデバイス

OpenAIはジョニー・アイブのデザインスタジオを65億ドルで買収し、コードネーム「Sweetpea」の初のハードウェアデバイスを公開すること、そしてFoxconnが4000万〜5000万台を製造することを確認した。そのデバイスは、スクリーンなしで音声中心になると噂されている。

Humane AI PinとRabbit R1はいずれも派手に失敗したが、今年、Appleが3つの新しいAIデバイスをリリースするかもしれないという噂も出ている。OpenAI、Meta、Appleに賭けないことは、スタートアップに賭けないのとは別の話だ。歴史が示すのは、汎用デバイスが機能を吸収すると、専用デバイスは苦戦するということだ。スマートフォンに地図が載ってからのGPS端末、iPhoneにミュージックアプリが載ってからのiPodを思い浮かべればよい。とはいえ、音声中心でアンビエントなAIは本当に別物かもしれない。そのデバイスが、夕食を作りながら話しかける相手(「オリーブオイルを追加で注文して、いいやつを」)になれば、日常的な購買の相当量に影響を与える可能性がある。

5. 眼鏡

そして、コマースにおいて最も刺激的なフォームファクターはこれかもしれない。

EssilorLuxotticaは、2025年にMeta Ray-Ban AIグラスを700万本以上販売したと報告している。これは、2023年と2024年を合わせた販売本数200万本の3倍超だ。実際にレンズ内ディスプレイを備えた799ドルのMeta Ray-Ban Displayグラスは、米国で前例のない需要が発生したため、国際展開を延期せざるを得なかった。生産は年間2000万台に向けて拡大されている。

Amazonはコードネーム「Jayhawk」の消費者向けARグラスを開発しており、フルカラーの単眼ディスプレイとAlexa統合を備え、2026年後半〜2027年前半の発売を狙っている。GoogleはWarby ParkerおよびGentle Monsterと提携し、Gemini搭載スマートグラスを進めている。Appleも独自のスマートグラスに取り組んでいると報じられている。

コマースにとって、眼鏡は変革的になり得る。店内を歩いていると、眼鏡が自動的に価格比較、商品レビュー、原材料情報、あるいは競合小売業者のより良い取引条件を表示する場面を想像してほしい。友人のジャケットを見て、眼鏡にそれを探して購入するよう頼む場面を想像してほしい。レストランのメニューをスキャンし、エージェントが食事制限に合う料理をフラグ付けする場面を想像してほしい。これはSFではない。Metaの眼鏡にはすでにカメラ、マイク、Meta AIが内蔵されている。コマース用途は明らかに次のステップだ。

2025年に700万台が販売されたことは、意味のあるインストールベースである。そしてこの軌道が示唆するのは、2027年末までにAI対応眼鏡が消費者の手元に3000万〜5000万本存在する可能性だ。まだマスマーケットではないが、目新しさの段階は大きく超えている。

パターン

5つのフォームファクターすべてに共通するパターンは明確だ。エージェントが消費者のデフォルトの文脈に近づけば近づくほど──開かなければならないアプリから、すでに使っているブラウザへ、常に動いているOSへ、そして顔に載せるデバイスへ──購買意思決定への影響力は増す。

スタックを下るごとに摩擦は減る。そしてコマースでは、摩擦が「誰が意思決定に影響できるか」を決める。小売業者はこのハードウェア競争を注視すべきだ。なぜなら「グラス」を制する者が第一印象を制するからである。

勝つのは誰か

短期的には、小売業者のエージェントが勝っている。AmazonのRufusの数字は現実だ──ユーザー3億人、コンバージョン率は60%高い。小売業者は、データ、在庫精度、フルフィルメントのインフラを持ち、現時点で優れた取引体験を提供できる。そして最大手の小売業者──AmazonとWalmart──は、改善を続けるためにAIインフラへ数千億ドルを投資できる規模を備える。TrueFitのエージェンティックなフィッティング・エージェントのような新しい機能は、小売業者のオンサイト・エージェントが汎用エージェントに先んじるのを助けている。オンサイト・エージェントを提供することは極めて重要だ。急速に買い物客の期待になりつつあり、さらに小売業者には、他のエージェントからはおそらく得られないプロンプトやユーザー行動に関するデータが必要だからである。

中期的には、状況はより複雑になる。汎用エージェントは急速に改善している。これらのモデルが、GoogleのUniversal Commerce ProtocolやOpenAIのAgentic Commerce Protocolのようなプロトコルを通じて、正確でリアルタイムな商品情報を維持できるようになれば、ジャシーの「細部を間違える」という主張は弱まっていくだろう。プロトコル戦争は、エージェントが商品データにどれほどシームレスにアクセスできるかを左右する。そしてフォームファクター競争は、消費者が小売業者の玄関口にたどり着く前に、汎用エージェントがどれほど容易に購買意思決定を横取りできるかを左右する。

長期的には、汎用エージェントがより多くの購買意思決定に、より大きな影響を持つようになると私は考えている。理由はこうだ。消費者は、最初から「どの小売業者で買うか」を分かった状態で購買の旅を始めるわけではない。始まりは問題や欲求である。「アイスランド旅行用の冬用ジャケットが必要だ」「都市生活に最適なベビーカーはどれか」「子どもの誕生日パーティを計画するのを手伝ってほしい」。こうした瞬間において、汎用エージェントは自然に有利になる。特定の事業者がキュレーションした品揃えではなく、選択肢と小売業者の全宇宙を探索できるからだ。

正しい捉え方は「誰が決済を完了するか」ではない。「誰が購買意思決定に影響を与えるか」である。私はデジタルの影響を受けた売上が、実際のeコマース売上よりもはるかに重要だと主張してきたが、エージェンティック・コマースも同様に、AIエージェントのインターフェース内で完結した取引だけでなく、AIエージェントに影響されたあらゆる取引を含めるべきだ。その尺度で見れば、たとえ実際のチェックアウトの多くが小売業者のウェブサイトやアプリで行われ続けたとしても、汎用エージェントの影響力は大幅に拡大する。

いまこの点を最も理解しているのはWalmartだ。同社は「両方/どちらも」の戦略を追求している。自社エージェントSparkyを構築しつつ、ChatGPTと提携し、GoogleのUniversal Commerce Protocolにも参加している。このヘッジされたアプローチは、エージェンティック・コマースにおいて最も賢い一手かもしれない。Amazonのように堀を築くのではなく、Walmartは、顧客を送り得るあらゆるプラットフォームへの橋を築いている。

ブランドと小売業者にとっての意味

生業としてモノを売っているなら、考えるべきことは次の通りだ。

商品データの品質は、いまや最も重要な競争資産になった。UCPもACPも構造化された商品フィードに依存する。データが不完全で、一貫性がなく、古いままなら、AIエージェントは文字通りあなたを見つけられず、ましておすすめできない。不適切なデータの帰結は、もはや「不便」ではなく「存亡」に関わるものになった。

小売業者のエージェントと汎用エージェントの両方に対する戦略が必要だ。AmazonのRufusのエコシステムに参加すると同時に、ChatGPT、Gemini、Copilotを通じて商品が発見可能であることを確保するのは、もはや任意ではない。AIエージェントを最適化すべき単なるマーケティングチャネルの1つとして扱うのは本質を外している。これは、消費者が商品を発見し、評価し、購入する方法における根本的なシフトである。

リテールメディアの分散計画について考え始めるべきだ。今後3〜5年で商品発見の相当部分が汎用エージェントに移行するなら、Amazonのスポンサープロダクトに予算を集中させてきたブランドは、代替案を用意しておく必要がある。これは、収益の底上げをリテールメディア収入に依存している小売業者にも混乱をもたらし得る。真に差別化された価値提案を持つ自社ブランドに投資せよ──掲載料を払ったからではなく、価値そのものによってエージェントが推奨する商品である。

ハードウェア競争に注意を払う必要がある。自社が保有するチャネルが、音声クエリ、ビジュアル検索、エージェントに適した構造化データに最適化されていなければ、次世代デバイスでは見えない存在になる。眼鏡の中で表示されるブランドが、次の10年を勝ち取る。

最大の組織的課題はテクノロジーではない。チェンジマネジメントだ。多くの企業では、Amazon担当、D2C担当、ソーシャルコマース担当、リテールメディア担当が分断されている。まだ誰も「エージェンティック・コマース」を担っていない。こうしたサイロを打ち破り、あらゆるエージェント接点にまたがる首尾一貫した戦略を構築できるブランドは、大きな優位を得る。

そして最後に、信頼がこれまで以上に重要になる。AIエージェントが購買意思決定を媒介する世界では、消費者はエージェントと事業者の双方を信頼する必要がある。正確な商品情報、誠実なレビュー、信頼できるフルフィルメント、公正な返品ポリシーといった透明性を通じて信頼を獲得する小売業者こそ、エージェントにより頻繁に、より確信をもって推奨される存在になる。

アンディ・ジャシーが言う通り、汎用エージェントには現時点で明確な限界がある。だが軌道は明らかだ。問うべきは「AIエージェントが大半の購買意思決定に影響を与えるか」ではない。どれほど速くそれが起きるのか、そして小売業者がそのエージェントを作る側になるのか、それとも中抜きされる側になるのか、である。

私の賭けは? 答えはその両方だ。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事