海外展開が成功したのも、こうした工夫が横展開できたからだった。「僕たちの企画が国境を越えられるのは、万国共通の『感情』に根ざしているから。文化の違いの前に、人間なので喜怒哀楽があるのは同じ。『いい人だな』と感じる心に、国籍は関係ないんですよね」。実際に各国の文化や風習に合わせて新たに追加した“いい人”の展示は全体の1-2割程度で、大半は日本の展示内容をそのまま翻訳したか、微調整を加えたのみ。例えば、日本で展示された“いい人”の「歯にネギがついてるよ、と教えてくれる人」は、ネギの部分を韓国では“唐辛子の皮”に置き換えた。
ただ、海外進出時には苦労もあった。初海外となった24年のソウルの展示は、約大赤字に終わったという。その失敗の原因を明円は「『日本で人気です』という“ノイズ”が、コンテンツの本質的な魅力を邪魔してしまった」と分析する。
「そのときは、展示パネルの韓国語の下に日本語を併記して、『日本から来た人気の展示』という見せ方をしようとしてしまったんです。しかし、読めない言語は鑑賞の妨げでしかない。そこで2度目のソウルでは、現地の言葉だけで構成したところ大きな反響があった。コンテンツそのものの力だけで勝負するのがいいんだと学びました」
明円の強みは、クリエイティブだけでなく、低資本で高利益率を得られる仕組みまでデザインしたことだろう。ENTAKU produceは広告制作事業も請け負っているものの、それに頼らずにオリジナル企画事業が自走。得た利益を新たな企画へと再投資している。極力外部資本を入れないのは、意思決定を自由にしてクリエイターとしての純度を守るためだ。
「クリエイターにとっての最高の環境は、自由なものづくりができること。そのためには、きちんと自分たちでお金を稼がなければならない。既存のIPをきちんと育てて、そこで生まれた利益が次の創作を支えていく。この循環こそが自分自身を含めたクリエイターの心の健康を守り、新しいものを生み出し続ける力になります」
今後はこの展示IPのフランチャイズ方式での展開も視野に入れる。現地でプリントアウトさえできれば制作できるため、まずは26年に予定するアメリカ、ヨーロッパでの展示で、現地の個人パートナーにギャラリー運営を任せることを構想する。


