サイエンス

2026.03.03 08:15

鬼滅の刃 禰豆子の口かせは実在の竹か? 近畿大学教授が本気で研究した結果

yu_photo - stock.adobe.com

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マンガ『鬼滅の刃』に登場する竈門炭治郎の妹、竈門禰豆子(かまどねずこ)がくわえている口かせは、竹のように見えるが不自然だと感じた近畿大学農学部の井上昭夫教授は、それを科学的に分析し、論文『Nezuko’s bamboo muzzle differs from actual bamboo』(禰豆子の竹の口枷は実際の竹とは異なる)を発表した。

鬼に襲われたことで鬼に変身する危険性のある禰豆子は、人に危害を加えないよう口かせを着けられている。節のある緑色の竹のような棒だ。節の間隔は、真ん中が長くて両脇が短い。実際の竹は、節間は、稈(竹の幹)の中央がいちばん長く、その上下は次第に短くなる性質がある。禰豆子の口かせを見ると、両脇の節間が短いため中央の長い部分が稈の中心部だと考えられる。

だが、禰豆子の口かせの節間は、中央の長さに比べて両脇が短すぎる。違和感を覚えた井上教授は、まず禰豆子が正面を向いている場面から約150例を抽出し、口かせの節間を測定した。作画や縮尺の違いによる影響を排除するために中央の節間に対する両脇の節間の比率(節間比)に着目した。

竹の節間をモデル化、グラフ化したもの(『Nezuko’s bamboo muzzle differs from actual bamboo』より)
竹の節間をモデル化、グラフ化したもの(『Nezuko’s bamboo muzzle differs from actual bamboo』より)

次に、『鬼滅の刃』の舞台になった大正時代に国内に広く分布していたマダケ属の竹(モウソウチクとハチク)計112本の実測データを用いて、稈中央部の最大節間長とその両側の節間長との平均の節間比を求め、禰豆子の口かせの節間比と比較した。すると、口かせの節間比が0.45だったのに対して、実際の竹は0.94と約2倍という有意差が見られた。この結果は、数理モデルによる解析でも支持された。

また、実際の竹の最大節間長の平均は、モウソウチクで35センチメートル、ハチクで25センチメートル。日本人を含む女性の顔の長さは平均18.28センチメートルなので、節間長のほうが顔よりも長くなるはずだが、マンガでは口かせと顔の長さの比率は0.66と節間のほうが短い。このことからも、口かせは実際の竹とは違うことがわかった。

口かせ、モウソウチク、ハチクの節間比の比較。
口かせ、モウソウチク、ハチクの節間比の比較。

この研究論文は、竹に関連するオランダの学術誌『Advances in Bamboo Science』に掲載された。しかし、なぜこんな研究を行ったのかと言えば、井上教授が『鬼滅の刃』のファンであったこともあるが、この作品が歴史学、哲学、文学、民俗学、宗教学、ポストヒューマニズムなどの観点から研究されているのに対して、自然科学、植物科学分野の研究が少なかったためだそうだ。

もちろん、これはマンガを批判するものではなく、あくまでこの作品を通じて竹への関心を呼び起こし、科学リテラシーの向上に貢献することを目指したものだとのこと。また、実際の竹と禰豆子の口かせの比較には、関数や微分を用いた数理計算も使われているため、「微分や極値の概念を理解するための数学教育にも活用できる」としている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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