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2026.02.26 11:13

なぜAI時代に「ベテラン人材」の価値が急上昇するのか

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AIが分析を無料同然にするとき、経験はかけがえのないものになる。

金融とテクノロジーの世界は長らく若さを好んできた。ベンチャーキャピタリストは20代の創業者に投資したことを誇らしげに語る。投資銀行は50代後半のMD(マネージング・ディレクター)を静かに退場させる。監査・コンサルティング会社は、ほかの知識産業では考えられないような、60歳前後の定年制を課している。

お決まりの弁護はこうだ。若い労働者は適応が速く、テクノロジーの習得も早く、よりハードに働く。AI駆動の世界では、デジタルネイティブが支配する——という論理である。

私は、それはまったく逆だと考える。

分析は安く、判断は高い

AIは一次的な分析を安価にする。優秀なアナリストは、適切なプロンプトさえあれば、DCFシナリオの作成、10-Kの要約、マージンのベンチマーク、取締役会向けメモの下書き、内部統制の文書化といった作業を数分で生成できる。かつてジュニアのアソシエイト部隊を要した仕事が、いまや1人とモデルで足りる。

安い分析は、判断ではない。

クレジットスプレッドが急拡大するとき、取引相手が破綻するとき、規制当局が方針転換するとき、収益認識が保守的なものから攻撃的なものへと静かにずれていくとき——どんなモデルも何をすべきかは分からない。AIは過去から外挿する。2008年を「覚えて」はいない。エンロンの手口を「読み解く」こともできない。取締役会がCEOの統制を失った瞬間を「感じ取る」こともできない。

そこに必要なのが経験である。具体的には、複数の景気サイクルを生き抜いてきたことで培われるパターン認識力が必要だ。

金融と会計の本質は、不確実性の下でパターンを見抜くことにある。実際の景気後退でリスク管理を経験した者なら、モデルがいかに急速に崩れるか、相関がいかに1へ収れんするか、インセンティブ構造がいかに報告を歪めるかを知っている。私は同僚との研究で、CFOはどの年でも企業の約20%がGAAPの範囲内にとどまりつつ、意図的に利益を歪めていると考えていることを示してきた。そうした歪みを検知するには、モデル以上のものが要る。過去にそれを見た経験が要る。

にもかかわらず、私たちの制度は、その能力を最も備えた人々を体系的に手放している。

監査・コンサルティング会社はその最たる例だ。定年制——一般に60歳前後——は、価値が最高潮に達したパートナーを押し出す。理屈は、異なるビジネスモデルでは成立した。持分を空け、昇進の梯子を開き、抵抗勢力になり得る者を循環させる。しかしAIはすでにそのピラミッドを平坦化しつつある。必要になるのはジュニア層の段数の削減と、判断を要する監督の強化だ。いま最も経験豊富な人々を追い出すのは、まさに逆行である。

年齢差別を逆転させる

これを逆転させるとは、どういうことか。引退したパートナーを呼び戻すのだ——古いピラミッドを回すためではなく、AIワークフローを再設計するために。収益認識がどう操作されるのかをモデルに学習させるうえで、誰が最適な立場にあるのか。経営者のバイアスがどこに現れるかを先回りして想定する監査手続きを構築するのに、誰が最適か。統制の破綻の兆候を早期に示すガバナンス・ダッシュボードを設計するのに、誰が最適か。引退したパートナーだけで構成される新しい会社が生まれるだろうか。

同じことは資産運用にも当てはまる。AI時代のポートフォリオ構築で勝つのは、代替データを最も多くかき集める者ではない。シグナルとノイズを見分けられる者、レジーム転換がバックテストを無効にすることを理解する者、流動性が常に「晴天の友」にすぎないと知る者である。モデルは歴史に基づいて最適化する。歴史がなお正しい道しるべなのかを問い直せるのは、経験だけだ。

財政政策

ここには、ニューヨークとニュージャージーが真剣に受け止めるべき財政上の論点もある。高い限界税率と懲罰的な相続税は、裕福な退職者をすでにフロリダへと押しやってきた。しかし、これは単なる税収の話ではない。退職した監査パートナーや、元マッキンゼーのシニアパートナー、投資銀行家が移住するとき、ニューヨークが失うのは納税者だけではない。メンターになり得る人材、リスク委員会の委員長になり得る人材、取締役会の助言者になり得る人材、AIワークフローの設計者になり得る人材を失う。こうしたネットワークは重要だ。知識のクラスターはそこに依存している。経験の層が空洞化すれば、エコシステム全体が弱体化する。

だからといって、若いプロフェッショナルに反対する議論ではない。彼らはAIを試し、レガシーなプロセスを解体することに関しては確かに優れている。しかし金融と会計の世界では、判断を欠いた実験は危険である。誤りはあっという間に複利で膨らみ、信頼の回復は容易ではない。

新しいモデル

あるべきモデルは世代間の協働である。28歳のアナリストはプロンプトを設計し、大規模データセットから数秒で洞察を引き出す。65歳の元監査パートナーは、どの洞察が重要か、どれがモデル由来の見かけにすぎないか、どれが規制や訴訟リスクに企業をさらし得るかを即座に見抜く。両者が組めば、どちらか一方だけよりも生産性は高い。

この論理に基づく新しいタイプの会社すら想像できる。引退したパートナーが創業し、AIを前提にゼロから設計された、助言・会計の事務所である。レガシーな報酬ルールや定年制から解放される。こうした会社は、品質とコストの両面で競争できる。売るのは時間ではなく、判断だ。

AIが分析のコストをゼロへと押し下げるとき、希少な投入要素になるのは知恵である。

金融は信認で動く。信認は判断に依存する。そして判断は、ダウンロードされるものではなく、蓄積されるものだ。

AI革命は、経験豊かなプロフェッショナルをさらに周縁へ追いやるべきではない。これを認識し——行動に移す——組織は、その分だけ強靭になる。

forbes.com 原文

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