マーケティング

2026.02.26 10:06

AIでコモディティ化が進む時代、ビジネスを守る「堀」はストーリーテリングだ

AdobeStock

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いま起業することは、かつてとは大きく異なる。生成AIによって、製品やサービスをより簡単に、より低コストで生み出せるようになった。以前なら大きなチームと多くの時間を要した仕事が、いまではより速く、より少ない人数でこなせる。

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多くの製品が似た見た目と語り口になりがちな世界でビジネスリーダーとして学んだのは、優れた機能があるだけでは必ずしも際立てないということだ。ビジネスを守る真の「堀」は、優れたストーリーテリングである。そしてソーシャルメディアが加速度的に成長するなか、より多くの企業がその潜在的なインパクトに気づき、これらのプラットフォームを使って数百万人の顧客に自社の物語を届けている。

TVコマーシャルからショートフォームメディアへ

マーケティングは長年のあいだに大きく変化してきた。かつてはTVコマーシャル、紙媒体広告、ラジオのジングルが数多く存在し、企業は一度にすべての人へ届けようとしていた。しかし人々は、こうした広告を概ね無視するようになった。往々にして、注意を遮るもの、あるいは煩わしい売り込みに感じられるからだ。

次に登場したのが「インフルエンサーマーケティング」である。ブランドがソーシャルメディア上でフォロワーから信頼を築いている人気の人物と協業し、その信頼を活用する手法だ。インフルエンサーは、広告をより個人的でリアルなものに感じさせる傾向がある。

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いまのストーリーテリングは、人々のメディア消費のあり方、特に若い世代に合わせて進化しなければならない。彼らは、スクロールする指を止めて注目したくなる、短く目を引く動画を好む傾向がある。これがいわゆる「サムストップ(thumbstop)コンテンツ」だ。2016年にTikTokがリリースされ(その後、Instagram ReelsやYouTube Shortsなどが続いた)、ショートフォームコンテンツはさらに急速に人気が高まった。ソーシャルメディアを利用する人は56億人超に上り、世界人口の68.7%を占める。

ショートフォーム・ストーリーテリングのメカニクス

こうした動画がバイラルになる理由は、たいてい運だけではない。優れたストーリーテリングは、単に語る以上のことをする。憧れたくなるライフスタイル、感じたい感情、参加したいトレンドを「見せる」のだ。しかし、物語のタイミングと構成もまた極めて重要である。ショートフォームの優れたストーリーテリングを形づくる要素を理解すれば、自社ブランドにとって最も効果的なマーケティングに応用し始められる。

私が見てきた限り、バイラル動画の多くには共通するいくつかのストーリービートがある。最初の3秒ほどで、映像、音、あるいはテロップによってフックを提示する。次に1〜3秒のトランジションが入り、その後に再エンゲージメントのポイントが来る。ここでブランドは、そのコンテンツの「Xファクター」を明かす。ビートドロップ、製品機能、意外な展開といった要素で表現される。

全体のブランドストーリーを構築するために、連動して機能する複数のコンテンツタイプを組み合わせるのも賢明だ。オーガニック投稿は「エバーグリーン」な性質を持ちやすく、追加コストなしに時間をかけて視聴者へ届け続けられることを意味する。一方で、オーガニックコンテンツはクリック率を定量化しにくいため、ブランドは具体的な指標を得るために有料広告も配信しがちである。このように、オーガニックでブランド認知を築き、そのうえでリターゲティング広告を使い、バイラル動画を視聴した温度感の高いオーディエンスをコンバージョンへ導ける。

強いコンテンツをつくる

広告の目的は、消費者の注意が向いている場所で接点を持つことにある。そしてその注意は、ますますソーシャルに集まっている。どのソーシャルメディアトレンドが人気なのか、そして自社の業界においてどのような物語が最も前向きな注目を集めるのかを見極めれば、人を本当に引き込むマーケティングナラティブをつくり始められる。

ソーシャルメディアアカウントで投稿を運用して得た知見として、質と量の両方が重要だが、常に「量より質」を選ぶべきだ。新しいコンテンツを公開する前に、A/Bテストでバイラル化の可能性を見極める。成功する動画は、うまくいっているトレンドを自分のニッチに合わせて再構築することで生まれることが多い。ただし、参照するのは直近の時期のものに限るべきだ。私の経験では、古い形式はバイラルになりにくい。

ソーシャルメディアはパワーローで動く。例えば私たちが投稿した動画のうち20%が、総再生数の80%を生み出した。キャンペーン内のある1本は、再生数の40%を占めた。自社コンテンツのどの形式が最も再生を集めるかが見え始めたら、ブランドに合わないスタイルで大量に投稿するよりも、その形式を複製することに注力すべきである。

ユーザー生成コンテンツを活用する

特に成果が出やすい形式の1つがユーザー生成コンテンツ(UGC)である。名称が示す通り、一般の人があなたの製品やブランドを紹介するために作るコンテンツだ。オンラインレビュー、開封動画や試食動画、写真、ブログ投稿など、形式は多岐にわたる。

UGCは、ブランドのマーケティングチームが直接関与していない「自分たちと同じ誰か」からの発信であるため、公式広告よりも信頼されやすい。UGCを促し、拡散を後押しすることは、こうした好意的な注目を取り込み、消費者が自社のストーリーに共鳴していることを示す有効な方法となり得る。

ストーリーテリングを支援するAIの活用

AIは新しいビジネスの立ち上げを容易にするだけではない。ストーリーテリングにおいても助けとなる。AIツールはコンテンツのつくられ方を変え、企業がパーソナライズされたメッセージを作りやすくし、多くの人へ届けながら、より特定のデモグラフィックに狙いを定められるようにしている。

マーケターはAIを、アイデア出しやリサーチの支援として活用できる。例えば私は、Nano Banana Pro、Sora 2 Pro、Kling 3.0などのツールや他のモデルを用い、ワークフローの中でクリエイティブ全体を生成してきた。各モデルには、ディテールの質、写実性、編集オプションなど、それぞれ強みと得意分野がある。

とはいえ、人の手触りこそが王者であり続ける。コンテンツに強い脚本とビジュアルが備わっているかを担保するには、人が不可欠だ。AIは面倒な作業をスピードアップする強力なアシスタントになり得る一方で、私たちは、インパクトあるストーリーテリングには人間の「テイストメイカー」を起用することがますます重要だと見いだしている。

結論

テクノロジーによって新しい製品やサービスが登場しやすくなるほど、ストーリーテリングの技術は重要性を増す一方である。ブログやSEOがあらゆるオンラインビジネスにとって重要であるのと同様に、オーディエンスの注意を引きつけ、つなぎ留められる形式で自社の物語を確立することもまた重要だ。

forbes.com 原文

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