AIは、商業用不動産(CRE)業界全体の意思決定のあり方を、静かに作り替えつつある。
市場には、AIや大規模言語モデル(LLM)を活用してプロセスを効率化すると謳う企業が溢れている。スタートアップも上場企業も、「AI駆動型企業」を標榜することでより高い企業評価と投資の増加につながり得ることを理解している。資本を呼び込む強力なバズワードなのだ。
しかし、こうした主張の一部は、存在感を保つために小さなAI要素を付け足しただけの「機能の言い換え」に過ぎないと感じることがある。経営者としては、AIの活用を誇示する顧客、ベンダー、不動産テック(プロップテック)企業を積極的に評価し、具体的で測定可能な成果を示せるかどうかを確認する必要がある。
とはいえ、喧騒の下では、真に力強い変革が進行している。Dealpathが商業用不動産投資家100社を対象に実施した調査(レポート全文の閲覧には登録が必要)によれば、「機関投資家はAIを任意の実験ではなく、競争優位のための基盤能力として捉えている」という。
AIが不動産オペレーションに与える影響
広く見れば、多くの業界でAI導入は加速している。マッキンゼーによれば、業界横断でCレベルのリーダーの31%が、今後3年でAIによって10%超の収益増を見込んでおり、企業の92%がAI投資の増加を計画している。言語を理解し生成する能力を持つ汎用の大規模言語モデルは、多くの人が語る「最先端」の能力を体現するものだ。プロップテック企業がプラットフォームにLLMを組み込むにつれ、これらのツールは不動産投資マネジメント(評価、引受審査、物件分析など)の将来を大きく変える可能性があると、私は考えている。
不動産領域では、AIが創造的な共同操縦者としての役割を強め、ワークフローの退屈な部分を担いながら、人間の創造性を増幅している。書類中心の反復業務で効率を生み出すことで、従来のオフィス中心の職務にも圧力をかけている。リース抄録や法務レビュー、取引のデューデリジェンス、テナントとのコミュニケーション、予測分析、マーケティングコピーの生成、定型文書の自動化を合理化し、案件のスピードを高める用途に活用できる。
これまで商業用不動産における若手アナリストの「腕試し」とされてきた、簡単な物件説明の作成やデータ分析といった業務は、AIが即座に実行できるようになった。その結果、AIを使うシニアアナリスト1人で、以前なら若手チームが必要だった成果物を生み出せるようになり、エントリーレベルの求人が減る可能性があると私は見ている。人材の必要性がなくなるわけではないが、組織がチーム構成をどう設計し、リソースをどう配分するかに変化が生じることを示唆している。
AIはコンプライアンス面でも役割を果たしている。例えば当社では現在、コンプライアンスの枠組みに適合する民間向けエンタープライズソリューションの試行を進めており、より広範な戦略目標との整合、規制上の義務の充足、責任ある事業慣行の積極的な採用を図っている。
AIが市場全体に与える影響
AIが不動産の内部オペレーションを作り替える一方で、外部の市場ダイナミクスにも影響を及ぼしている。AI関連企業は、今日のリース需要全体の大きな部分を牽引している。CBREの報告によると、AI関連企業は2030年までにサンフランシスコで最大1600万平方フィートを占有する見通しだという。テック大手からスタートアップまで、AIインフラを拡張し、チームを収容するためにオフィスや研究開発(R&D)スペースを賃借している。
「大規模で確立された企業は通常、クラスAのスペースを求める一方、成長や潜在的な買収に対応する柔軟性を必要とするスタートアップは、即入居可能なクラスBスペースでの短期契約を望む傾向がある」と、全米不動産投資信託協会(NAREIT)は指摘する。これは、AI駆動型企業がビルクラスごとに需要を形成しており、それぞれが全く異なるスペース要件を持つことを浮き彫りにしている。
将来を見据えた資産の位置づけ
長期的には、オフィス不動産に対するAIの最も持続的な影響は、一時的なものではなく構造的なものになる可能性が高い。リースや契約レビューから日々の運用まで、バックオフィス機能の効率化と自動化は急速に常態化し、ワークフローを合理化して業界全体の摩擦を低減している。
同時に、AIはテナントの期待も変え続けていく。私は日々、テナントが柔軟なインフラを求める傾向を強めているのを目にしている。可変的なフロアプランから、プラグ・アンド・プレイの電源・冷却システムまで、ニーズの変化に応じて規模を拡大し、構成を組み替えられる環境を求めているのだ。こうした変化は、テクノロジー、AI、R&Dなど、専門的でレジリエントかつ適応性の高いスペースを求めるデータ集約型セクターに比重が置かれるテナント構成の拡大とも一致する。さらに「スマートビル」機能に対するプレミアムの高まりも加わり、予知保全ツールやエネルギー最適化、建物全体のインテリジェンスといったAI駆動のシステムが、しばしば期待される標準となっている。
将来は、「インテリジェントなラボ/オフィスのハイブリッド」、モジュール型のR&D環境、高密度レイアウトへの需要がさらに高まる可能性がある。AI重視のテナントは、従来型のオフィス構成よりも、低遅延の電力供給、光ファイバー接続、冷却、そして超柔軟なフロアプレートを求めるかもしれない。
不動産リーダーへの教訓
複数の市場サイクルと技術の転換を乗り越えてきた当社は、AIの台頭を、不動産の根幹を揺るがす破壊ではなく、もう一つの変曲点として捉えている。将来にわたりオフィス資産が進化するテナントニーズと働き方の文化に応え続けるためには、慎重な統合が求められる。
第一に、テスト&ラーニングのアプローチを採用することだ。全面展開の前に、単一の資産でAIツールを試験導入する。判断は慎重に、データに基づいて行うべきである。オーナーであれば、テナントの成長や縮小に合わせて調整できる柔軟な「将来対応型」フロアプランを取り入れること。AIやR&Dなどデータ集約型ユーザーを呼び込むため、プラグ・アンド・プレイのインフラ(電力、光ファイバー、冷却など)を提供すること。運営者であれば、テナント向けヘルプデスクのチャットボット、予知保全、エネルギー最適化ツールなどを含め、物件運営にAIを探索・組み込み、コスト削減とサービス改善につなげること。引受審査では、柔軟性、アップグレード余地、テナント構成のレジリエンスを織り込むべきである。
AIは、つながり、協働、コミュニティという深く生得的な人間のニーズを置き換えるものではない点も重要である。人には対面でのつながり、メンタリング、文化的一体感が必要だ。私の見立てでは、これは「オフィスは終わった」ということではない。むしろ、その役割が再定義されているのである。最も成功する企業は、AIを活用して柔軟な働き方を後押ししつつ、同時に、テクノロジーでは再現できない人間同士の相互作用のために設計された、高品質で目的志向の物理空間に投資すると私は考えている。
最後に、AIには前例のないスピードと拡張性をもたらす可能性がある一方で、その活用は強いリーダーシップと均衡させなければならない。最も効果的な戦略は、AI駆動の効率性と、ブランドのアイデンティティ、真正性、そしてブレークスルーとなるイノベーションを維持するために必要な人間の洞察を組み合わせるものである。



