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2026.03.02 15:00

23・24歳の女性コンビが55億円調達、2025年創業の「Phia」が描くAIショッピング革命

Images By Tang Ming Tung / Getty Images

人間を置き換えるのではなく補完するという姿勢が、Phiaの支持を広げる

今回のPhiaのシリーズAは、同社の初期の勢いを受けてのものだ。同社は2025年9月、クレイナー・パーキンスが主導した800万ドル(約12億5000万円)のシードラウンドを発表した。このラウンドには、ヘイリー・ビーバーやクリス・ジェンナー、サラ・ブレイクリー、マイケル・ルービン、デジレ・グルーバー、シェリル・サンドバーグらの著名投資家が参加していた。

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多くのAIコマースの議論が「完全自動化」に向かう中で、共同創業者のゲイツは、Phiaが「人間を買い物体験から排除することを目指していない」と明言している。「人々がショッピングを好むのは、それが楽しい体験だからだ。エージェントが担うべきなのは、楽しくない部分だ」とゲイツは語る。

Phiaのプラットフォームは、Eコマースで課題となるサイズ選びや価格比較、素材の確認、返品といった、顧客の信頼や安心感を損なう摩擦を取り除く役割を果たす。「顧客が、自分のサイズや求める価格帯、好みに合わない商品を目にする必要をなくす。我々は、かつては一部の人しか利用できなかったパーソナルショッパーの体験を、より多くの人に開放している」とゲイツは語る。

このように、人間を置き換えるのではなく、あくまで補完するという姿勢が、Phiaの支持を広げている要因といえる。消費者はAIに主導権を明け渡すことよりも、より確かな情報と安心感を得ながら、時間を効率的に使うことを求めている。Phiaの成長が示しているのは、人々が求めるAIエージェントは、自律的な代行者というよりも、信頼できる副操縦士のような存在だということだ。

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フィンテック企業はこれまで、より速い決済やスムーズな口座開設、幅広い与信の提供といった「アクセスの改善」に力を注いできた。しかし、AIエージェントが消費者行動を左右する存在になりつつある今、問われているのは処理能力ではなく、消費者自体への理解だ。

Crunchbaseのデータによれば、2025年第2四半期の世界のベンチャー投資額910億ドル(約14.2兆円)のうち、約半分がAIスタートアップに流れていた。ここには、OpenAIやScale AIによる過去最大級の資金調達も含まれる。資本が、エージェント主導のインターフェースへと急速に集中していることは明らかだ。

AIが「選択」自体を仲介する、次世代経済インフラの基盤

一部の投資家は過熱感を警戒するが、これは次世代の経済インフラへの基盤投資だという見方もある。そこではAIが単に情報を届けるのではなく、「選択」自体を仲介する。AIエージェントの台頭は、銀行や決済会社の前提を揺さぶる。取引を処理していることと、顧客を握っていることは別問題だ。最初の接点を押さえられなければ、決済の基盤を担っていても主導権は持てない。

そうした環境の中で、Phiaの成長は象徴的だ。フィンテックが長年掲げながら十分に実現できてこなかった転換──取引量を増やすことではなく、より良い金融判断を支援すること──に近づいている。

AIエージェントは金融の副操縦士のように機能し、その設計思想こそが差を生む

この文脈でAIエージェントは、金融の副操縦士のように機能する。競争軸は、単なるスピードやパーソナライズではない。レコメンドがどのようなロジックで生成され、どのようなインセンティブが埋め込まれ、最終的に誰の利益が優先されるのか。その設計思想こそが差を生むことになる。

「便利さこそが、重視される。消費者が求めているのは、使いやすさや透明性、スピードであって、ダッシュボードが増えることではない」とキアニは語る。AIは、こうした期待をあらゆる業界で加速させている。長らく断片化し、非効率だったショッピングの体験も、再構築されるべき時期を待っていた。

「意思決定までの道のりを短くし、人々が自信を持って買い物をできるようにすることに、本当の価値がある」とキアニは続けた。金融機関にとってのメッセージは明確だ。顧客が選ぶのは、支払いを処理する会社ではない。購入前の比較や判断を楽にしてくれる存在だ。

次ページ > フィンテックを名乗ることなく金融機能を組み込む、「エンベデッド・ファイナンス」の発想

翻訳=上田裕資

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