政治

2026.03.04 14:15

片山大臣ダボス会議の英語、「行間幅切り替え」「結論繰り返し」の妙【原文引用】

Getty Images

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2026年1月ダボス会議が行われた。同会議で片山さつき財務大臣が参加したディスカッション(Japan's Turn)から、国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld代表取締役の松樹悠太朗氏が、日本のビジネスパーソンが学べるポイントについて考察する。

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ダボスでの実戦例━結論が印象を決める

片山大臣ダボス会議の英語発音と、ビジネスでの「英語暗黙ルール」「匂わせの結論」では英語の「ローコンテクスト」文化への切り替えスイッチについて解説した。本稿では、1月に行われたダボス会議での片山さつい大臣の発言から、「主張」と「結論」を繰り返し、自分のメッセージを明確にするテクニックを使って、ブレそうになった返答の軌道を見事に修正した場面を見ていこう。

ディスカッションの中で、参加者の一人から片山大臣に向けて、今後日本がどのように外国人の受け入れを行っていこうとしているのか、その姿勢についての質問が投げかけられた。

日本は高齢化が進み、労働人口不足という課題を抱えている。一方で、他国と比べて日本の移民は非常に少ない。日本にとって今後、外国人労働者はさらに必要か?それとも不要か?

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とてもわかりやすい、ローコンテクスト流の、輪郭がはっきりした質問だと感じた。学びが得られるよう、参考までにこの質問のローコンテクスト流の構成も後述しておく。参考にしていただければ幸いだ。

この質問に対し、(要約すると)大臣は次のように回答した。ローコンテクスト流の構成に当てはめて見てみよう。

1.背景:外国人受け入れは次の選挙でも議論の中心の一つを成すだろう。それほど議論の多い課題だ。

2.主張:自民党は日本に貢献する人は歓迎し、違法行為をする人は排除する立場である。

3.背景:文化の違いによる不安がある

4.結論:明確なルールのもとで日本に貢献する人は歓迎したいと思っている。

どのような印象を持つだろうか。構成は少し前後している感があるが、「主張」と「結論」を通して同じメッセージを繰り返したことで、大臣の返答では「ルール作りを行い、国民の不安を解消するというプロセスは必要だが、日本に貢献してくれる外国人は歓迎したい」ことが明確になっていた。後に続いた対話からも、間違いなくこのように伝わっていたようだ。

もし大臣が「結論」を入れなかった場合も見てみよう。すると構成は少し変化し、ローコンテクスト流に受け取ると以下のような印象となる。このような印象になるのは、前述した構成と、その「順番ルール」があるからだ。メッセージを受ける際、聞き手は、先ほどの構成と順番に当てはめて聞こうとするのだ。

1.背景:外国人受け入れは次の選挙でも議論の中心の一つを成すだろう。それほど議論の多い課題だ。

2.背景:自民党は日本に貢献する人は歓迎し、違法行為をする人は排除する立場である。

3.結論(しかしながら日本国内には)文化の違いによる不安は存在している。

このようにすると、大臣の発言は大きく印象が変化してしまう。「結論」があった時は、大臣は日本に貢献する外国人は歓迎するという考えが明確だった。

しかし、上の例だと、今はむしろ外国人は歓迎したいものの、難しいかもしれない、と考えているようにも読み取れてしまう。ローコンテクスト文化の聞き手はこの「(しかしながら日本国内には)」という部分を構成と順番ルールを整えながら聞こうとするため、頭の中で「行間」(ほのめかし、非明示的な情報)として挿入してしまうのだ。

残念ながら、ビジネスの現場でもこのように、相手に意図しないメッセージや考えを伝えているケースはとても多いのである。

次ページ > 「ローコンテクスト流」の構成をさらに掘り下げると━

文=松樹悠太朗 編集=石井節子

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