「ローコンテクスト流」の構成をさらに掘り下げると━
ここから少しローコンテクスト流の構成について少し掘り下げてみる。読者の皆さまの理解の助けになれば幸いだ。
上で引用した片山大臣のダボス会議での発言を、さらに英語のローコンテクスト流の自然な流れに整えるとすれば、以下のような展開になる。
背景:外国人受け入れは次の選挙でも議論の中心の一つを成すだろう。それほど議論の多い課題だ。
背景:文化の違いによる不安もあり、明確なルール設定に取り組み、不安の解消が必要である。
主張:しかし、自民党は日本に貢献する人は歓迎する立場である。
結論:繰り返すが、明確なルールのもとで日本に貢献する人は歓迎したい。
まず、「主張」と「結論」のメッセージは一貫性を持っている必要がある。したがって次の例は一致していない。
「主張:俺はアイスが大好きだ。」、「結論:俺は冷たくて甘いものが大好きだ」。
この「結論」だと、ジュースもかき氷も含まれてしまう。そのため、「主張」と「結論」に一貫性がなく、メッセージや考えの輪郭がぼやけてしまう。
次にどちらが「主張」でどちらが「結論」か、ということだが、先に述べれば「主張」、最後に述べれば「結論」と考えてよい。また、大臣の回答のように、「主張」と「結論」は「同じ言葉を繰り返し」ても良い。
このような点から、今回の片山大臣の返答は大変模範的であり、学べることが多いといえる。
参考までに、この回答に、さらにローコンテクスト流の手を加えれば次のような構成も可能だ。
背景:外国人受け入れは次の選挙でも議論の中心の一つを成すだろう。それほど議論の多い課題だ。
背景:文化の違いによる不安があり、明確なルール設定に取り組み不安の解消が必要である。
主張:しかし、自民党は日本に貢献する人は歓迎する立場である。
本論:高齢化社会における労働人口不足の解決を図る上で、外国人労働者の受け入れは選択肢の一つであるからだ。
議論:何もしないまま労働人口不足を黙って観察しているような政府が一体どこにいるだろうか。
結論:繰り返すが、明確なルールのもとで日本に貢献する人は歓迎したい。
上の構成だと、さらにメッセージが明確になるような印象を受けるのではないだろうか。とくに「本論」と「議論」を入れることでよりメッセージの輪郭はとてもはっきりする。すなわち「ストレートな表現」になるのだ。
ここまでの構成を瞬時に作れるようになるには、訓練が必要になる。だが、すぐにこのような返答が出来るようにならなくては、と焦る必要はない。でも、上のような構成でメッセージや考えの伝達ができるようになれば、伝えたいメッセージや考えが不明瞭になったり、間違って伝わるということはなくなるはずだ。
以下、実際の片山大臣の返答の日本語と英語を紹介しておこう。

上記の英語の<主張>と<結論>は次の通りだ。
<主張>We are in a position to welcome those who are good to us.
<結論>We would like to welcome those good people.
言いまわしは完全一致ではないにせよ、使用している単語はほぼ一致しており、メッセージも同じ内容となっている。
このような英語のコミュニケーション文化の構成に沿った返答を行ったため、途中、日本では外国人受け入れにおいて不安を感じている側面があると話しても、日本が外国人労働者受け入れに消極的になっているという印象は与えず、日本に貢献してくれる、(すなわち)外国人(労働者)は歓迎する、という考えが明確になっていた。


