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2026.02.25 16:30

世界最小手術針が切り開く医療の空白地帯 河野製作所の成長戦略

河野淳一|河野製作所

「ニーズがあって、技術的にも可能で、役者もそろっているということがわかってきて、社員はがぜんやる気になりました」

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とはいえ、誰もつくったことがない微小な手術針は、これまでの製造方法や装置が一切使えない。針の先端をとがらせるやすりなどの工具から、製造装置、検査機器に至るまで、すべてゼロから自社開発した。そうして2004年、ついに直径30ミクロンの世界最小の針が完成した。

ゴマ粒より小さい世界最小の手術針(写真上)。直径30ミクロン(0.03mm)で、0.5mm以下の血管や神経の縫合を可能にする唯一の手術針として、医師から高い評価を受けている。
ゴマ粒より小さい世界最小の手術針(写真上)。直径30ミクロン(0.03mm)で、0.5mm以下の血管や神経の縫合を可能にする唯一の手術針として、医師から高い評価を受けている。

ところが最初は、まったく売れなかった。当時は「500ミクロン以下の手術などやる必要がない」というのが医学会の常識だったのだ。その後、コンソーシアムの医師らが国内外で開かれる学会で、リンパ管を縫合することでむくみなどの症状が改善できたことや、細い血管を縫合することでより低侵襲な手術が可能になった症例を発表し、500ミクロン以下の組織への手術の重要性が徐々に浸透していった。

「常識を打ち破って、この針を使った治療法が世界で認められるようになるまでに15年かかりました。今では茨城県の工場に世界中からドクターが見学に来ます」

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実は河野製作所の強みは手術針だけではない。針につける縫合糸はもちろんのこと、「パッチ」や「フェルト」と呼ばれる心臓や血管の補強材など、手術後に体内で劣化しにくい特殊な素材を使った高付加価値製品を多数開発しており、これが収益の柱となっている。ニーズは存在するのに大手メーカーが参入していない「空白地帯」を徹底的にリサーチして、新商品を投入しているのだ。

「市場創造がうちの役割です。大手が見つけられない小さな需要を見つけて、市場をつくり広げていく。それが世界最小の針から続く、河野製作所のものづくりです」

現在グループの総売上高は50億円。35年には100億円を目指す計画だ。河野は今、特に「広げる」ことに力を入れている。冒頭の表参道のカフェもその一環だ。「いかに『CROWNJUN』というブランドを認知してもらうか。医療機器にこだわらず、ブランドを使ってヘルスケアなどの新しい分野にも市場をつくりたい」


河野淳一◎河野製作所代表取締役社長。青山学院大学経営学部卒業後、千代田火災海上保険を経て、河野製作所入社。1998年、代表取締役就任以降、世界オンリーワン・ナンバーワンの新製品開発や海外展開を積極的に行う。河野製作所グループとしてCROWNJUNブランド製品の新市場開拓を進めている。

文=中居広起 写真=アーウィン・ウォン

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