量子コンピューターの実用化を見据え、既存の暗号技術が突破される「Q-Day(Qデー)」の脅威が現実味を帯びている。米国では国家安全保障局(NSA)や国防総省(DoD)が、2030年から2035年を期限とした耐量子暗号への移行を義務付けるなど、官民を挙げた対策が加速している。これは単なる技術的予測ではなく、国家レベルでの「暗号の賞味期限」に対する共通認識だ。
こうした中、ビットコイン開発者コミュニティも具体的な対抗策に乗り出した。米国時間2026年2月11日に公開された改善提案「BIP 360(P2MR)」は、将来の量子攻撃から資産を守るための技術的な第1歩となる。
実際、全流通供給量の約31%に相当する4150億ドル(約64.7兆円。1ドル=156円換算)もの巨額資産がリスクにさらされている。分散型システムゆえに意思決定と合意形成に時間を要するビットコイン特有のガバナンス構造を考えれば、今すぐ準備を始めることは避けて通れない急務だ。
ビットコイン開発者たちが、量子コンピューターから資産を守る具体的な行動を発表
米国時間2月11日、世界最大級の暗号資産であるビットコインを量子コンピューターから守るために、ビットコイン開発者たちがこれまでで最も具体的な行動を取ったことが発表された。ビットコイン・コア開発者のマーチはX(旧ツイッター)の自身のアカウントに「BIP 360:Pay to Merkle Rootが公開された」と投稿した(GitHub)。この提案は今、正式にBitcoin Improvement Proposal(ビットコイン改善提案、BIP)リポジトリの一部となり、レビューと議論、そして最終的な実装に向けて公開された。これは、今後数十年にわたりネットワークの安全設計を作り替え得るステップを示すものであり、公の議論で最も多く取り上げられてきた脅威の1つに対処するものだ。
筆者は2025年10月からこの脅威を追ってきた。そのときは、ビットコインの17年の歴史で最大の挑戦になり得るものとして取り上げた。2025年12月には、2026年に注視すべきビットコインの主要テーマの1つとして量子コンピューティングを挙げた。BIP 360は、その両方の警鐘に対する最初の正式な回答だ。
量子耐性を備えるための提案が、公式の技術ロードマップに初めて掲載
この提案は、変更をすぐに行うものではない。危機対応でもない。だが、量子耐性をビットコインの公式な技術ロードマップに初めて載せた。関係するタイムラインを考えれば、その意味は見た目以上に大きい。



