「アート作品との出合いをより有意義なものにするためには、見て、考え、反応し、もう一度見る、という行動を繰り返すのに十分なだけの時間が必要です。そうするためには、数秒ではなく数分がかかります」
より長い鑑賞時間は、内省的な思考とも関連づけられる。だが、美術館を訪れる人たちの大半は実際のところ、作品の鑑賞にどのくらい時間をかけているのだろうか?
前述のWHO協力センターのディレクターも務めるファンコートによると、「平均27.2秒」だという。『Art Cure』の中で彼女はこの点について、ニューヨークのメトロポリタン美術館が2001年に行った調査結果を引用、さらに次のように述べている。
「シカゴ美術館がその15年後に行った調査で示されたのは、驚くほどよく似た結果でした。作品が来場者たちの注意を引きつけておけたのは、28.6秒でした」
作品鑑賞と「セルフィー」
ファンコートによると、新たな研究の結果、鑑賞する人の35%が「自撮りためにより長い時間を使うようになっている」ことも明らかになったという。つまり、「実際に作品を鑑賞する時間は、さらに減少している」ことになる。
だが、アートはセルフィーよりも(私たちにとって)良いものであり、「注意力をそぐための方法が無数に生み出されてきた世界で、その注意力を鍛える方法になる」という。そうしたスローな鑑賞は、反すう(ネガティブなことを延々と考え続ける「ぐるぐる思考」)を減らすことにもつながる。
「スロー・ルッキング」を推奨
美術鑑賞に関連のあるさまざまな活動を行ってきたクレア・ブラウンは、自ら立ち上げたThe Thinking Museumを通じて、「スロー・ルッキング」のコンセプトを広めるための運動を推進している。
ブラウンがすすめるのは、「関わること」を中心にした美術館での体験だ。その方法の基本となるのは、「観察し、気づき、視覚的な探究の結果と個人的な発見を共有すること」。スロー・ルッキングには、忍耐力を養うこと、忙しさから離れること、好奇心を刺激することなど、「12のメリット」があるという。


