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2026.02.25 11:29

逆風下のアメリカン・ウイスキー業界、協会トップが語る現状と展望

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米国のウイスキー業界はいま、強い逆風に直面している。10年以上ぶりに消費者需要がわずかながら減少し、関税が輸出市場を揺さぶった。需要の鈍化、若年層を中心とする嗜好の変化、過剰在庫を背景に、「業界は近く終焉を迎える」といった見立てを掲げる否定的なニュースが雪崩のように押し寄せている。報道では大手生産者における生産停止が素早く取り上げられ、深刻な業界問題の証左として、在庫の大きな不均衡が喧伝されてきた。

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だが現実は、大衆メディアの暴露記事や30秒のTikTok解説が示すほど単純ではない。状況を明らかにするため、筆者はこのほど、新たに設立されたAmerican Whiskey Association(AWA)の会長、マイケル・ビレロに話を聞き、アメリカン・ウイスキー業界の「いま」を探った。

JM: Kentucky Distillers' Association(KDA)によれば、ケンタッキー州では約1600万バレルが熟成中だという。ケンタッキーは米国のウイスキー生産の85〜90%を占めるとも言われており、全米では約1800万バレルになる計算だ。これは正確でしょうか。

MB: 幅広い業界関係者と話してきたが、ケンタッキー以外で熟成中のアメリカン・ウイスキーの樽数について、全国ベースで単一の決定的な数字は見つかっていない。ケンタッキー州に限れば信頼できるデータポイントはある。しかしケンタッキーを離れると、データは生産者、州、カテゴリーごとに分断され、比較可能な形で一貫して追跡されていない。

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ケンタッキーはバーボンウイスキーの本拠地であり、アメリカン・ウイスキー産業の中心だが、それが米国ウイスキーの全体像のすべてではない。KDAによれば、現在ケンタッキー州では約1600万バレルが熟成中である。¹ また、歴史的にケンタッキーは世界のバーボン生産のおよそ85〜95%を占めてきた。¹

とはいえ、アメリカン・ウイスキーの生産はケンタッキーにとどまらない。Jack Daniel's(テネシー・ウイスキー)のような大手ブランド、MGP(インディアナ)のような生産者、そして全50州で操業する2700以上のクラフト蒸留所は、いずれも業界の不可欠な構成要素だ。²

こうしたギャップこそが、American Whiskey Association設立の理由の一部でもある。特定の地域や産業セグメントだけでなく、アメリカン・ウイスキーのサプライチェーンをより明瞭に捉え、カテゴリー全体のインテリジェンスと、より完全な全体像を提示するためだ。

このためAWAは、前例のないアメリカン・ウイスキーの社会経済的インパクト報告書の作成を委託している。目的は、穀物からグラスまで、業界のフットプリント全体を捉える信頼性が高く反証可能な全国データポイントを整備することだ。生産とサプライチェーンへの影響、雇用、さらに農業、製造、樽製造、ホスピタリティ、観光、輸出にまたがるアメリカン・ウイスキーの経済価値を網羅する。

JM: 1樽あたり9リットルケース換算で23ケース、販売が3000万ケースとして、年間のデプリーション(出荷・販売に伴う在庫減少)が約200万バレルという推計がある。一方で、約400万バレル、あるいは6000万ケースに近いという見方もある。これらの数字は信頼できるのか。

MB: 業界データによれば、アメリカン・ウイスキーの世界市場は年間およそ6000万〜6200万の9リットルケースであり、3000万ではない。³ それだけでも計算は大きく変わる。

加えて、1樽から得られる最終数量は、樽詰め時のアルコール度数、ボトリング時の度数、エンジェルズ・シェア(熟成中の蒸発損失)、熟成期間、製品構成によって大きく変動する。「1樽23ケース」という言い回しは大まかな目安であり、固定ルールではない。

いわゆる概算は見出しを生みやすいが、実務としてこのビジネスがどう動くかを反映していない。この業界は複雑で、消費には山と谷がある。言うまでもなく、4年後、7年後、10年後、さらには20年後の需要を完璧に予測するのは事実上不可能だ。

各社は生産予測の調整に最善を尽くしている。蒸留業者はそれを200年以上にわたり磨き続けてきた。予測が完璧ではないからといって、関税や健康志向、景気循環といった24時間ニュースサイクルの語り口が正しいことにはならない。

例としてBuffalo Traceを挙げよう。主力製品の平均熟成年数が約7年なら、その蒸留所は現在、概ね7年分の予測販売量に相当するウイスキーを樽で熟成させている必要がある。この計算は蒸留所ごとに異なる。

そして「生産停止」という語り口については、ケンタッキーにおけるBeam Suntoryの操業調整を考えてみてほしい。設備増強のために稼働を移し替えながら生産を組み替えるのは、窮地ではなく規律ある資産管理だ。⁴ 派手な見出しにはなりにくいが、熟成が前提のカテゴリーにおける長期サイクルの設備投資計画を反映している。

JM: カナダ市場は米国の蒸留業者にとってどれほど重要なのか。

MB: カナダはアメリカン・ウイスキー輸出総額の約1%を占める。⁵ 割合としては小さいが、カナダは米国の蒸留業者にとって重要で、歴史的にも強い貿易パートナーであり続けている。米国の消費者はカナディアン・ウイスキーを楽しみ、カナダの消費者はアメリカン・ウイスキーを楽しむ。緊密な貿易関係だ。政治が貿易の流れを乱すと、国境の両側の消費者と生産者が影響を受ける。

JM: インドとの通商合意はどれほど重要か。在庫にどのような影響があり得るのか。

MB: インドは数量ベースで世界最大のウイスキー市場だ。⁶ 2047年――インド独立100周年――までに、インドの中間層は10億人を超えると予測されている。⁷ この規模は大きい。世代をまたぐ需要だ。インドは長期的に見て、プレミアム領域の主要な成長機会になる。

2023年、インドは米国産バーボンに対する関税を150%から100%へ引き下げたが、それでも他の世界市場と比べれば高水準のままだ。⁸ 適切な関税体系と市場アクセスの改善があれば、アメリカン・ウイスキーは対等な競争条件で戦える。

持続力のあるインドとの通商合意は、関税および非関税障壁を引き下げ、数十年にわたる安定した競争的アクセスを生み出す。AWAが重視しているのは、今日の在庫見出しではなく、長期の市場アクセスである。

JM: 生産一時停止はどの程度広がっているのか。米国の生産はどうなっているのか。

MB: 責任ある生産管理は、ウイスキーのカテゴリーでは標準的な実務だ。これは規律あるマネジメントの表れであり、危機のシグナルではない。来年のウイスキー需要を予測するのは難しい。10年先、20年先となれば、難しさは指数関数的に増す。

米国の蒸留の歴史において、長期需要を完璧に予測した例はない。年単位の熟成を要するカテゴリーでは不可能だ。ではどうするのか。調整する。生産を一時的に落とす。樽をより長く熟成させる。試し、革新する。ブランドの一貫性を守る。

そして何より、アメリカン・ウイスキーの新市場を開拓する。これこそ私たちが日々取り組んでいることである。成熟産業は、長期サイクルの商品をそのように管理する。

JM: 在庫が需要と整合するまで、どれくらいかかるのか。消費者にとっては何を意味するのか。

MB: 蒸留所やブランドごとの戦略による。比較的早く調整できる生産者もいれば、時間がかかる生産者もいる。長期在庫を持つところもあれば、そうでないところもある。全体としては、数年がかりの正常化プロセスになる可能性が高い。それはプレミアムな熟成カテゴリーでは珍しくない。

消費者は混乱を想定する必要はない。むしろ恩恵があるかもしれない。イノベーションの増加、よりプレミアムな表現の拡充、そして樽がより長く倉庫に留まることで、より長い熟成年数表記が登場する可能性もある。

熟成在庫の増加は危機ではない。年単位、時に数十年を要する製品を管理するうえでの一部だ。本当の論点は「ウイスキーが多すぎる」ではない。業界が長期サイクルを責任ある形で運用しつつ、次の世界的成長フェーズに向けて態勢を整えている、ということだ。

米国独立250周年が近づき、アメリカン・ウイスキーの深い歴史的ルーツを祝うなか、私たちの会員は四半期ではなく世代で考えている。

私の立場から見ても、アメリカン・ウイスキーの長期的な基盤は依然として強固である。

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