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2026.02.25 11:16

AIの価値を引き出す前に知るべき「不都合な真実」

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AIという列車は猛スピードで走っており、「乗り遅れればビジネスは終わりだ」と言い聞かされている。もちろん、これはFOMO(取り残されることへの恐怖)を生み、組織は計画のないままAIゲームに飛び込んでしまう。私は以前の記事で、このゲームに参入する人々が誇大宣伝をうまく乗り切るための所定のプロセスを提示してきた。私は企業クライアントとの会議に多く同席し、AIの価値がどこにあるのかを見極める支援をしているため、市場の現実がどこにあるのかを現場で目の当たりにしている。

そうしたワークショップの場から私が典型的に得る主要な観察は2つある。1つ目は、変革的に考えることが十分ではないこと。2つ目は、現在のプロセスへの理解がほとんど、あるいはまったくないことであり、それが思考の幅を狭めているという点だ。AIの熱狂のなかで、私たちはモデルやデータ、飛ぶ鳥を落とす勢いのNVIDIAによるGPUチップなどについて耳にする。しかし、AIで成功するうえで基盤となる「プロセス」や「ビジネスの変革」といった要素については、ほとんど語られない。

変革的思考の欠如

私の観察に具体性を与えるため、これらをそれぞれ少し分解してみよう。まずは「変革的に考えられていない」点からだ。最前線において、多くの組織はAIに関する明確に定義された戦略とロードマップを持っていない。その結果、組織内のイノベーターたちが、会社にとってのAIの価値を自分たちで見定めようとする。これは立派な姿勢ではあるが、私の経験上、往々にして目標設定が低すぎる。

よく見られるのは、部門単位での活用で、たとえば経理や人事における時間短縮といった効果が得られるケースだ。こうした取り組みはAIの「勝ち」とみなすこともできるが、得られた事業価値は何か。時間短縮によって利益は増えたのか。おそらく答えは「ノー」である。なぜなら、雇用を削減しない限り確実なコスト削減にはならず、生産性向上を定量化するのは難しいからだ。そして、現在のレイオフにまつわる見せかけの煙幕にもかかわらず、そうした削減は実際には起きていない。

私がクライアントと取り組む際には、議論をより変革的な方向へと強制的に導く。そうしなければ、私たちはAIを事業価値ではなく虚栄のために使うことになる。私が言う変革的とは何か。すべての業界はAIによって破壊的な影響を受ける、と言われているのなら、どのように組織を拡張し、新たな収益源を生み出すのか。あるいは、市場開拓の方法を変えて、定量化可能なコスト削減を実現するにはどうすればよいのか。多くの場合、これは仕事への向き合い方を考え直すことを要求するが、それは簡単ではない。しばしば、私たちがキャリアの中で経験してきたあらゆる変化と同様に、「それは我々のやり方ではない」というマインドセットに行き着く。

明確さの欠如

ここから2つ目の主要な障害につながる。自社のプロセスを理解していない、あるいは可視化できていないのなら、いったい何にAIを適用するのか。これは、あらゆるAI施策、特に変革的ユースケースにおける出発点であるべきだ。テクノロジーを優先し、その後で問題を探すという罠に陥ってはならない。いま自社のビジネスがどのように動いているのかを、より深く理解する方向へと発想を転換すべきである。

プロセスの話など誰もしたがらないことは理解している。売り物にならないし、それが本当は何なのかを誰もよく分かっていないからだ。私たちの支援の現場では、プロセスを説明してほしいと依頼する相手の人数だけ、異なる答えが返ってくることが少なくない。通常、文書化されておらず、仮にされていたとしても、あまりに多くの改訂を経てきたため、組織内の誰もがそれぞれ異なるものとして捉えている。しかし、AIがもたらし得る成果を実現するには、プロセスを基盤として据える必要がある。そのうえで初めて、望ましい成果を実現するために必要なテクノロジーが定まる。だが、単にテクノロジーを当てはめるだけでは、期待外れの成果しか得られず、組織全体にスケールしない。

私がよく繰り返す言葉がある。「AIから価値や成功を得られない原因はテクノロジーではない。組織にある」。もし白紙から組み立てられるなら確かに簡単だろう。しかし、それは現実ではない。私たちは皆、理由があって存在するレガシーなテクノロジー、プロセス、役割を組織内で共有している。したがってイノベーションを実現することは、飛行中の飛行機を組み立てるようなものだ。良い出発点は、組織内の痛点や摩擦点を特定し、それに関わるプロセスを視覚的にマッピングすることである。こうして可視化すると、事業に成果をもたらすまでに何が起きているのかをチームがよりよく理解する「ひらめきの瞬間」になることが多い。

提言

ビジネスのために革新的でゲームチェンジとなるテクノロジーソリューションを提供したいなら、強固な基盤を築く必要がある。誰もが見たがる「華やかさ」を実現するには、それを可能にする「配管」に投資しなければならない。私はイノベーション・インテグレーターを率いてきた経験の中で、私たちが価値を引き出そうとして追いかけるバズワード的テックが何であれ、常にこれを見てきた。残念ながら、多くの人は逆の順序で取り組み、なぜ組織として定量的な成果が得られないのかと不思議がる。厳しい現実確認をしたいなら、AIに関連する成功率やROIの不足に関して最近公表された調査の多くを読んでみるとよい。これはAIに限った話ではない。単に、誤った適用がなされ、乏しい結果に終わる最新のテクノロジーがAIだというだけである。

最後の提言は、「大きく考え、小さく始め、勝ち筋が見えたら迅速にスケールせよ」ということだ。適切な基盤を築くことから始め、クイックウィンやクイックフェイルを狙い、成果を「テクノロジーが動くかどうか」ではなく「定量化可能な事業成果」で測定する。これが、あなたが求める結果をもたらす。定量的な事業成果のためのイノベーションは気の弱い人には向かない。しかし、忍耐強く粘り強く、小さな勝ちに集中するなら、一定の成功は達成できると私は確信している。

forbes.com 原文

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