成長はしばしば、ブランドの生涯で最も危険な局面である。勢いがつくと、ラインアップを拡大したくなるのが本能だ。フレーバーの拡張。バリエーション。新たなSKU。生産的に見える。革新的にも映る。だが、多くの場合それは、増分の売上ではなく社内競合を生み出す。
小売では、商品数が増えるほど売上が増えるのではなく、社内競合が増えることが多い。棚を圧迫し、オペレーションに負荷をかけ、焦点をぼかす。拡大に見えるものが、静かにカニバリゼーション(総成長を増やさないまま、ある商品の売上が別の商品へ移る現象)へと変わることがある。
ニック・サルタレッリ、レズリー・カールズ、ジェイク・カールズの3人が創業したMid-Day Squaresは、別の道を選んだ。次に何を投入できるかを問う代わりに、より規律ある問いを立てた。顧客に真に資し、カテゴリーを拡張する形で、どこで成長できるのか。
商品を足すことから「瞬間(モーメント)」を押さえることへ。この転換が、スケールするブランドと失速するブランドを分ける。
食料品店は1つの市場ではない。複数の市場である
創業者はしばしば、「食料品店に売っている」と考える。だが違う。店内にある複数のミクロ市場に売り込んでいるのだ。
それぞれのバイヤーは、限られた棚スペースと測定可能な目標を伴う特定の売り場を管理している。責務はシンプルだ。買い物客にとっての価値を高め、増分の売上を生み出すこと。創造性を評価しているのではない。貢献度を評価している。
フレーバー拡張は社内では革新に感じられるかもしれない。だがバイヤーにとっては、多くの場合、拡大ではなく代替を意味する。インクリメンタリティがなければ、追加のSKUは既存SKUと競合し、総合的なインパクトを薄める。
バイヤーが報いるのは、ラインアップの拡大ではなく、カテゴリーの拡張である。
イノベーションから「カテゴリー思考」へ
Mid-Day Squaresは、イノベーションカレンダーを超え、カテゴリーの観点で考え始めた。
同じ棚割りの中で別のバーを提案するのではなく、まだ満たしていない「空白」──未対応の喫食シーン──を探した。
隣接カテゴリーを調べ、あるパターンに気づいた。冷凍ではPB&J(ピーナッツバター&ジャム)風の商品がよく動いている一方、冷蔵棚には同等の提案が欠けていた。ギャップはフレーバーではない。フォーマットとオケージョン(利用シーン)の問題だった。
その洞察はクリエイティブというより戦略的だった。既存の延長ではなく、買い物客の習慣の中で明確に異なる役割を担うよう設計された商品を導入したのである。
社内競合よりインクリメンタリティを
PB&J商品は、Mid-Day Squaresのチョコレートバーを置き換えるために作られたのではない。異なる瞬間のために作られた:
- 弁当箱
- 学校のおやつ
- 午前中のエネルギー補給
- 習慣に根ざした購買
顧客は商品同士で迷っていたのではない。別のニーズのために、新しい商品を追加していた。
この違いがインクリメンタリティを生んだ。
SKUを増やさずに売上は伸びた。ブランドのアイデンティティを薄めずに顧客層は広がった。既存商品の回転を圧迫せずに買い物かごの購入点数は増えた。
これが規律ある成長の姿である。
傾聴はするが、反射的に反応はしない
Mid-Day Squaresの強みは、常に顧客の声を聴くことにある。創業者たちは明確な信念で動いている。顧客なしにブランドは成り立たない。そのマインドセットが、謙虚さと規律を強いる。
顧客は頻繁にジャムを求めた。そのフィードバックは、小さな改良や目新しいSKUに結びついてもおかしくなかった。だがチームは、要望が本当に何を示しているのかを問うた。
それはノスタルジー、ルーティン、そして満たされていない喫食シーンを示していた。
フィードバックを額面通りに受けて反応するのではなく、洞察へと翻訳することで、同社はより大きな機会を見いだした。聴くことは反射神経ではなく、戦略的なフィルターになった。
棚で生き残るものを決めるのは顧客である。小売バイヤーは買い物客の需要に反応する。この影響の連鎖を理解したことが、意思決定を研ぎ澄ました。
シンプルさはスケールする
商品を増やしても安定性は生まれない。複雑さが生まれるだけだ。
ロングテールSKUは、予測リスク、オペレーション上の摩擦、バイヤーの抵抗を増やす。強いブランドはコア商品を守り、意図的に拡張する。Chobaniのような企業は、混み合ったポートフォリオよりも規律ある構成のほうが効果的にスケールすることを示してきた。
Mid-Day Squaresも同じ論理を適用し、混乱を招かずに選択肢を増やした。
圧力をフィルターにする
チョコレートやスナックの領域にある多くのブランドと同様、Mid-Day Squaresは、ココアを含む投入コストが変動する環境で事業を行っている。衝動的に反応するのではなく、創業者たちはその圧力をフィルターとして使った。どんな新しい打ち手も、短期的にではなく構造的に事業を強化するものでなければならなかった。
制約が戦略を明確にした。
Mid-Day Squaresが語る、起業家が学べること
新しいものを投入する前に創業者が心に留めておくべきことは何かと問われると、Mid-Day Squaresのチームは率直だ。成長とは勢いではなく、規律である。
- 次に何を出すかではなく、どの「瞬間」を自分たちのものにできるかを問え。
- カテゴリーを拡張しないのなら、再考せよ。
- 弱い商品を多数そろえるより、強い商品を少数持つほうが勝る。
- 顧客とバイヤーの声を聴きつつ、戦略的に解釈せよ。
創業者たちにとっては、1つの信念に集約される。最終的に、生き残るものを決めるのは顧客である。
結論
多くのブランドが誤る最大の成長施策は、商品を増やせば自動的に売上が増えると思い込むことだ。
Mid-Day Squaresはラインアップを広げて成長したのではない。関連性を広げて成長した。明確に異なる喫食シーンを見極め、カテゴリーにとって真にインクリメンタルな商品をつくったのである。その規律が利益率を守り、実行をシンプルにし、バイヤーとの対話を強化した。
成長はボリューム戦略ではない。ポジショニング戦略である。
棚スペースが有限で、注意が限られた市場では、より鋭い思考が常に、より大きなポートフォリオを上回る。
その瞬間を自分たちのものにせよ。収益は後からついてくる。



