チームの誰かを解雇する正当性があると感じていても、常に思い通りにいくとは限らない。取締役会メンバーとつながりがある人物かもしれない。あるいは自分が着任したばかりで、仕事を回す人員が必要なため、部署を丸ごと立て直すような動きは取れないのかもしれない。
採用した、あるいは引き継いだ問題社員のせいで痛い目に遭った経験は、ほとんどの人にあるだろう。1人の採用ミスが企業にもたらすコストは、その社員の初年度年収の30%に上ると推定されており、人事関連の調査機関によっては、1人あたり24万〜85万ドル(約3600万〜1億2750万円)と試算しているところもある。
私は社員の解雇の進め方について書籍を書いたが、それでも、私自身にも、同僚にも、そしておそらくあなたにも、解雇が不可能な局面はあった。
人事判断を先送りするような状況では、政治的資本を投入したい段階ではないこともある。人事異動にはコストがかかるものとそうでないものがあり、1〜2人のために資本の大半、あるいはすべてを使い切りたくない場合もある。いまは失敗が許されないのかもしれない。あるいは政治的資本を使いすぎて、次の一手を打てない状態かもしれない。
ここで、あなたとチームにとってこれが緊急の優先課題であり、政治的資本を投入する意思も余力もあると仮定しよう。それでも、問題社員の解雇が実現しないことはある。本人の仕事は一貫してひどく、態度も目に余る。だが深呼吸してほしい。こうしたケースでは、取締役会、CEO、より上位の経営層、寄付者、株主など、上層部との関係において、その人物のほうがあなたよりも権力や影響力を持っている。これは、思いたくはないが、いまでも起きている。誰かを解雇する際の社内政治のせいで、自分自身と組織を危険にさらしてはならない。
抱え続けざるを得ないときの対処法
責任範囲を縮小する。厳格な境界線を設け、影響(周囲への悪影響)が広がらないよう内側に封じ、同時に問題(本人のパフォーマンスや行動)が外に漏れ出さないようにする。
さらに隔離する。中核業務を絞り込んでも狙いどおりの結果が出ないなら、プロジェクト、会議、議論の場から外す。「その人がいないと回らない」状態をつくらないことが重要だ。
率直なフィードバックを行う。これはあなたの主観の話ではない。あらゆる観点から見たときに、本人がどう評価されているかを明確に映し出して示す必要がある。データに基づく形で、周囲にどう受け止められているか、そして本人の自己認識が周囲の認識とどの程度一致しているかを提示する。
何度でも繰り返す。自分の立場を崩さず、しっかりと腰を据え、心地よいと感じる以上に「ノー」と言う覚悟を持とう。会話ややり取りがうまくいかず、繰り返し設定した境界線が守られないときのための計画を立てておこう。
報告ラインを変更する。後述するように、その人を異動させるのは望ましくないが、報告ラインをチーム内の別の人物に変更することは可能だ。そもそも、あなたがその人をマネジメントするのに適した人物ではなかったのかもしれない。あなたの怒りは、もはや役に立たない。次の上司のほうが、邪魔をさせない運用に成功する可能性もある。別の相手とのほうが健全な関係を築け、変化が起きる(たとえ小さな変化でも)こともあり得る。
可能ならコーチングを行う。Forbes Human Resources Councilのエキスパート・パネルによる記事では、問題社員を解雇する前に試すべき15の戦略が紹介されている。パーク大学のケイティ・アーヴィンは、叱責よりもコーチングの重要性を強調している。「社員と向き合い、何が起きているのかを理解しようとすれば、サポートやリソースを提供できるようになります」と彼女は述べている。
戦略を立てる。Wilder HR Management & EEO Consultingのブリジット・ワイルダーは、雇用主に3段階の戦略を提案している。「I(調査):社員に質問して、問題の背景にある『なぜ』を調査する。スキルの問題か、意欲の問題か、リーダーシップに関連する問題かを見極める。C(伝達):基準と現状のギャップ、改善期限、支援のためのリソースを伝える。E(評価):定められたスケジュールで評価し、解雇の最終決定を下す前にさらなる介入が必要かどうかを判断する」
やってはいけないこと
組織内の別チームに異動させない。優れた企業は問題社員を異動させない。そうするのは、手を抜くリーダーだ。
給与に手をつけない。誰かの給与を減らすことは合法的に可能な場合もあるが、これは愚かなリーダーシップであり、思いやりに欠ける行為だ。
肩書に手をつけない。給与に手を出すべきでないのと同様に、肩書をいじるのも思いやりのない行為だ。
これは勝ち負けの問題ではない。恨みを持ち続けてはいけない。小さなことも大きなことも手放し、あなたも相手もできる限り最善の形で成功できるよう助けることを目標にすべきだ。
謙虚さと地に足のついた姿勢を忘れずに。信頼されるリーダーとしての評判とブランドを築いていこう。



