欧州

2026.02.26 07:00

プーチン大統領が作り上げた「戦争物語」、信じた先に待ち受けるもの

ロシア・モスクワで開催された「ロシア諸民族団結の年」記念式典で、国内各地の民族衣装を身にまとった参加者に向けて演説する同国のウラジーミル・プーチン大統領(左から2番目)。2026年2月5日撮影(Contributor/Getty Images)

戦死者、徴兵、戦争に縛られた体制

ロシアの死傷者数は第二次世界大戦以来の最高水準に達しているとの推計もある。これは決定的な効果を達成するより、時間を稼ぐために兵士の命を犠牲にしていることを示唆している。多大な犠牲者数とわずかな領土獲得は、制約された作戦行動、不均一な適応、そして力ずくの消耗戦への依存を示している。

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ロシアの新兵募集はその状況を裏付けている。同国軍は刑務所から大量に動員し、債務者を強制的に徴用したほか、外国籍の人員を募集した。ロシア軍の兵員動向に関する分析によれば、ロシア大統領府(クレムリン)は現在、現役兵士の給与支払いや新兵募集に充てる費用より、戦死した兵士の遺族への補償に多くの資金を費やしている。これらは持続的な強さではなく、負担の指標だ。

プーチン大統領は単に領土のために戦っているわけではない。同大統領は政治的な生き残りを懸けて戦っている。ロシアにとって侵略を存亡の危機と位置付けたことで、同大統領は自らを存亡の危機に陥れた。プーチン大統領には、結果を成功と再定義せずに方針転換する余地はほとんどない。戦争が長引くほど、同大統領の政権の正当性は疑問視されるようになる。この力学が、ロシアが異常な損失を吸収する意思を持つ理由の一端を説明している。戦争を具体的な成果なしに終結させれば、既に発生した莫大な人的・経済的損失が明らかになる危険がある。

したがって、私たちが目撃しているのは、必然的な勝者の姿ではない。私たちは、命を犠牲にして時間稼ぎをする政権を目の当たりにしている。同政権は、西側の倦怠感や政治的分裂、あるいは経済的誘惑が、戦場での成果では得られなかったものをもたらすことを期待しているのだ。

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経済的利益に関する物語

最近の報道は、戦争をロシアに有利な条件で終結させた場合、米国との経済関係の改善についてロシア側が示唆している点を強調している。その含意は明らかだ。ロシアは敵対国であると同時に機会でもある。戦争を妥当な条件で終結させれば、米企業は天然資源や復興事業のほか、新たな商業的機会を得る可能性がある。

これは、取引成立と経済的見返りを優先する層に訴求するよう設計された戦略だ。その裏の意図は明白だ。なぜ正常化によって経済的利益が得られる可能性があるにもかかわらず、ウクライナに多額の支援を続けるのか?

だが、この議論は必然性という言説と同じ幻想に基づいている。第一に、ロシアは優位な立場ではなく、消耗戦による膠着(こうちゃく)状態から交渉している。第二に、プーチン大統領が経済的「機会」として提示しているものは、実際には西側諸国による強制的な地政学的圧力の結果だ。それは協力関係ではなく、支配力だ。第三に、侵略行為に対して再統合で報いることは、軍事力によって領土獲得だけでなく、最終的には経済正常化ももたらされるという誤ったメッセージを世界、特に中国に送ることになるだろう。

プーチン大統領のメッセージは必然性と機会を融合させようとしている。それは商業的な言葉に包まれた心理的な圧力だ。

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翻訳・編集=安藤清香

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