筆者は最近、米シンクタンク大西洋評議会で開催された討論会に出席し、極めて重要な問題、すなわちロシアのウラジーミル・プーチン大統領による偽情報作戦が及ぼし得る影響について議論した。核心的な問題はこれだ。「ロシアによるウクライナ侵攻の軍事的事実は何か、そしてそれは私たちに伝えられている内容とどのように異なるのか?」
答えは重要だ。戦争は戦場だけで行われるものではなく、政治的意志や経済的な期待に影響を与える認識や物語の中で繰り広げられる。
プーチン大統領はこれを理解している。同大統領の戦略は今や、戦場での決定的な勝利に依存するより、むしろ世界、特に米国に対し、ロシアの勝利は必然であること、ウクライナへの継続的な支援は無益であること、そして長期にわたる対立より利益をもたらす正常化に備える方が賢明であることを納得させようとしている。欧州連合(EU)の外相に当たるカヤ・カラス外交安全保障上級代表はミュンヘン安全保障会議で「ロシアがもたらす最大の脅威は、戦場での成果以上に交渉の場で同国が多くの利益を得ることだ」と警告した。
ロシアの勝利が必然的に見えるのは事実ではない。それは1つの物語だ。戦場の現実と照らし合わせると、その物語は崩れ去る。
ウクライナで実際に起きていること
軍事的観点から見れば、ウクライナ侵攻は消耗戦と化しており、ウクライナは巨大な圧力にもかかわらず、ロシアの戦略的成功を阻止し続け、持ちこたえ、適応している。戦争のあらゆる局面で、ロシアは核心的な目標を達成できていない。
戦略面では、ロシアはウクライナの首都キーウを迅速に占領し、同国政府を打倒した上で自国の勢力圏に組み込み、北大西洋条約機構(NATO)を分裂させることを目指した。だが、これらの目標はいずれも達成されていない。キーウは依然として主権国家ウクライナの首都だ。同国政府は今も機能し続けている。NATOはウクライナ侵攻前より規模が大きく、強力になった。
今から5年前、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するとは誰が予想しただろうか? 両国は現在、NATOの加盟国だ。筆者は最近、フィンランドの軍人がF35戦闘機の操縦訓練を受けている米空軍基地を視察した。ウクライナ侵攻前は、いずれも想像すらできなかっただろう。
作戦面では、ウクライナ軍は約1000キロの戦線にわたり、ロシア軍を押しとどめている。これにより、ロシア軍は黒海の利用を阻止され、ウクライナ支配地域上空の制空権も奪われた。近代的と見なされていたロシア空軍にとって、これは驚くべき失態だ。
戦術面では、ウクライナ軍は有利な損害交換比率を維持しており、その比率は2.5対1から7対1と報告されている。一部の戦闘ではさらに高い比率が記録されている。たとえロシア軍が数キロ前進したとしても、その代償は計り知れない。
死傷者数は2つの核心的な事実を浮き彫りにしている。第一に、ロシアはわずかな領土を得るために多大な人的代償を払うことをいとわない。第二に、ウクライナの防衛力がロシアの人員・生産基盤の消耗速度を上回る速さで弱体化する場合にのみ、時間はロシア側に有利に働く。
それがこの戦争の中核を成す力学だ。それは急展開ではなく、忍耐力、産業能力、そして政治的意志の問題だ。実際のところ、ロシアの主張は必然性を約束しているが、戦場では勢いなく消耗が続き、損失が積み重なり、決着なき暴力が続いている。ウクライナ側の意志は疑う余地もない。不確定要素は西側の決意だ。



