北米

2026.02.25 15:00

米国のインフレ鈍化が続く理由──投資家が今知るべき「統計上のズレ」と中期債への投資機会

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最大の不確実要因である関税や労働力不足が、今後のCPIを押し上げる可能性

もっとも、この流れが確実に続くわけではない。最大の不確実要因は関税だ。ピーターソン国際経済研究所によれば、既存の在庫が消化され、企業が価格の見直しを進めるにつれて、関税の影響が遅れて表面化し、2026年半ばまでにCPIを最大で0.5ポイント程度押し上げる可能性があるという。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、この動きを持続的なインフレ圧力ではなく、一時的な価格水準の押し上げにすぎないと位置付けている。ただし、その影響が統計に完全に表れるまでには数四半期を要するとの認識も示している。

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もう1つのリスクは労働力不足だ。ピーターソン国際経済研究所によると、在宅医療など一部の分野では移民の流入減少を背景に人手不足が深刻化し、2026年初めには賃金が年率10%で上昇していた。医療サービスは価格体系が複雑で透明性も低いため、Truflationのような代替指標では十分に捉えにくい。人工知能(AI)の普及に伴う電力需要の増加も、新たなインフレ圧力となり得る。こうした動きは、すでに一部のリアルタイム指標でも反映され始めている。

住宅・通信・食品など複数分野でデフレが見られるものの、市場はリスクを十分に織り込んでいない

より想定外のシナリオは、インフレ鈍化が行き過ぎるケースだ。TruflationのラストCEOは、市場の主流的な見方が十分に織り込んでいないリスクがあると指摘する。「住宅・通信・食品など複数の分野で、すでにデフレが見られる。ウォール街や市場は、デフレが何を意味するのかを十分に織り込んでいない。デフレ環境のもとで大きな成長期を経験したことはないからだ」と彼は続けた。

これは、注視しておくべきシナリオだ。デフレは消費者にとっては歓迎すべきものに映るかもしれないが、企業収益を圧迫し、消費や投資の判断を先送りさせ、債務の負担を相対的に重くする。こうした影響は、FRBにとっても短期間で解消できるものではない。

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FRBはインフレ指標に敏感なため、市場では利下げが行われるとの見方が優勢

FRBは1月の会合で、政策金利を3.5%〜3.75%に据え置いた。市場では、インフレがこのまま鈍化を続けることを前提に、2026年6月から9月にかけて0.25ポイントの利下げが1〜2回行われるとの見方が優勢だ。1月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、FRBがインフレ指標の動きに極めて敏感であることが改めて示された。こうした状況を踏まえると、次に発表される3月のCPIは、市場の利下げ観測を左右する重要な節目となる。

消費者にとって重要なのは、物価の上昇ペースは鈍っているものの、価格水準そのものが下がっているわけではないという点だ。中古車や電子機器の価格は下落しているが、公共料金や医療サービス、外食費は依然として高止まりしている。

インフレ鈍化のトレンドが中期債への投資を後押し、住居費の動向が利下げ観測の鍵を握る

投資家にとって、本稿で挙げたインフレ鈍化のトレンドは、利下げ局面で価格上昇の恩恵を受けやすい「中期債」(米国中期国債など、満期が中程度の債券)への投資を有利にする環境といえる。

その利下げ時期を見極める最大の鍵が「住居費」である。CPIの中で大きな比重を占める帰属家賃(OER)の数値が、2月や3月の政府統計で明確に下がり始めれば、CPI全体が市場の予想以上に低下し、FRBの利下げが現実味を帯びてくる。

現在、政府の公式統計と民間のリアルタイム指標は、インフレ鈍化という「同じ方向」を指し示している。市場の焦点はもはや方向性ではなく、民間指標に遅れて動く公式統計のタイムラグが「いつ、どのように解消されるのか」というタイミングへと移っている。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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