機関投資家が活用する民間指標Truflation、労働統計局を大きく下回るインフレ率「0.97%」を示す
こうした局面では、政府統計を補完する民間のリアルタイム指標が先行シグナルとして機能することがある。機関投資家が活用するデータプロバイダーのTruflationは、オンライン市場のAPIや公共料金事業者、保険データベース、検証済みの取引記録などから収集した1300万件超の価格データをもとに日次のインフレ推計を公表している。2月21日時点で、同社が算出した米国のインフレ率は0.97%と、BLSが発表した2.4%を大きく下回っている。
なぜこれほど差が生じるのか。最大の要因は住宅コストの扱いだ。Truflationは、BLSの手法で大きな比重を占める調査ベースの帰属家賃(OER)ではなく、足元の市場家賃を重視している。季節的な値引きや販促キャンペーンもリアルタイムで取り込むため、月次の聞き取り調査では捉えきれない動きも反映されやすい。もっとも、BLSのCPIは長年の手法に基づいて厳格に構築された政府統計であり、政策判断の基準となる指標だ。Truflationは、公式統計の方向性を先取りするための速報的な推計にすぎず、両者は役割が異なる。
「消費者はこれ以上の値上げを受け入れない」──インフレ圧力を弱める要因
Truflationのステファン・ラストCEOは、同社のデータが映し出しているのは消費行動の構造的な変化だと指摘する。「消費者はこれ以上の値上げを受け入れない。もう余裕資金が残っていない。賃金が上がるか、価格が下がらない限り、支出は増えないだろう」と同CEOはコメントした。小売業者が価格を引き上げにくくなっていること自体が、インフレ圧力を弱める要因になっている。こうした動きは月次の調査データでは捉えにくいが、リアルタイムの取引データにははっきりと表れている。
中古車価格の下落や労働市場の減速に加え、計算上の「ベース効果」もインフレ鈍化を後押し
住居費の正常化に加えて、ほかにも2つのインフレの押し下げ要因が挙げられる。中古車価格は、2022年のインフレ急騰を主導した要因の1つだったが、サプライチェーンの混乱が収まりつつある中、1月だけで前月比1.8%下落し、前年比でも2%下回っている。労働市場にも減速の兆しが見える。2025年の年間雇用増加数は18万1000人に下方修正され、過去10年で最も低い水準の1つとなった。賃金の伸びが鈍れば、外食や小売など人件費の比重が高いサービス業では価格転嫁の圧力が弱まる。
3つ目の要因は、いわば計算上の問題だ。2025年初めの月次インフレ率は比較的高い水準だった。これら数値が過去12カ月の計算対象から外れ、代わって2026年初めの前月比0.2%前後の穏やかな伸びが組み込まれれば、今後の物価動向にかかわらず、前年比のインフレ率は自然と低下していく。経済学ではこれを「ベース効果」と呼ぶ。少なくとも2026年前半は、この統計上の要因がインフレ鈍化を後押しする。


