住居費は構造的なゆがみを抱えており、住宅市場の動きを反映しているわけではない
CPI全体の約35%を占める1月の住居費の上昇は、前月比でわずか0.2%、前年比でも3.0%にとどまった。この数字だけを見れば、インフレは落ち着きつつあるようにも映る。だが、住居費はCPIの中で最も構造的なゆがみを抱える項目であり、足元の住宅市場の動きをそのまま反映しているわけではない。今後のインフレの方向性を見極めるうえでは、この点を踏まえる必要がある。
米労働統計局(BLS)は、住宅コストを主に2つの項目で測定している。1つは実際の賃料を反映する賃貸住宅の家賃だ。もう1つは「持ち家の帰属家賃(OER)」で、持ち家世帯が自宅を借りるとした場合に支払うと想定される家賃を推計したものだ。全米経済研究所(NBER)の研究は、この算出方法では住宅市場の動きが統計に反映されるまでに時間差が生じると指摘している。
賃貸契約の更新や統計手法で遅れが積み重なり、住居費は今後のCPIを押し下げ要因になるとの予想
賃貸住宅の約60%は12カ月契約で運営されているため、市場の家賃の変動は、契約更新時までCPIに反映されない。また、家主は既存の入居者に対して家賃を1度に市場水準まで引き上げるのではなく、段階的に引き上げる傾向がある。BLSは、現在の家賃を6カ月前の家賃と比較する手法を用いており、ここでも統計上の遅れが積み重なる。
その結果、1月の統計における3.0%の住居費上昇率は、直近の状況を示したものではなく、実際には主に2023年から2024年前半にかけての住宅市場の状況を反映している。例えば不動産データベースZillowのリアルタイムデータを見ると、直近の家賃の伸びは大きく鈍り、1年前を下回る水準にある。今後2〜4四半期にかけて、低い水準で更新された家賃が順次統計に反映されていく。そのため、住居費は2026年のCPIを押し下げる要因になると予想されている。


