3. 目的意識をもったアップスキリング
アップスキリング(既存の知識・スキルを更新・強化するプロセス)を行うためには、自分が働く業界の方向性と、自分の成長の方向性を合わせる必要がある。見通しもなくやみくもに資格を取得するのではなく、次のようなスキルは何かを見極めよう:
・目指している職務の求人情報に、必ず列記されているスキルか。
・現在の専門知識を補うスキルか。
・より価値の高い問題を解決する能力が身に着くスキルか。
・プロジェクトや難易度の高い課題に、すぐさま応用できるスキルか。
今は多くの企業が、従業員向けの学習プラットフォームや研修補助金制度を整えている。たとえばアマゾンは、AWS機械学習大学やテクニカル・アプレンティス制度(技術見習い制度)といったプログラムを提供し、従業員がより需要の高い技術職や、クラウド関連の職務に移行できるよう支援している。
このような体系的に学べる仕組みがあれば、従業員は恣意的に資格を取ることなく、本当のビジネスニーズに結びついた、市場価値の高いスキルを身に着けることができる。
小売りチェーンのWalmart(ウォルマート)は、現場で働く従業員が高報酬のキャリアに移行できるよう、明確なキャリア機会に結びつくキャリアパスの構築とアップスキリングを後押しし、スキル重視型労働力の取り組みに投資している。
また、マクドナルドには、「Archways to Opportunity(チャンスへの道)」というプログラムがある。この取り組みにより、多数の従業員が高校卒業資格や大学の学位を取得したり、マネージメント研修を受けたりすることが可能となった。
あなたの勤務先企業も、似たような支援を提供しているなら、ぜひ活用してほしい。忘れないでほしいのは、履歴書にただ箔をつけることではなく、自分を前進させるのは何かに焦点を合わせることだ。
4. 必要に迫られる前に、リスキリングを検討する
アップスキリングは、現在の職務のなかで成長していくための取り組みだ。一方でリスキリングは、新しい仕事に向けて備えるための取り組みだ。AIが業界を再編するなかで、職務のなかには、内容が激変し、一つずつスキルを積み重ねていくだけでは間に合わないこともあるだろう。その場合は隣接業界や、まったく新しい業界に進出する方が賢い選択肢となることも多い。
世界経済フォーラムの報告書によると、世界の労働力のうち、スキル需要の変化に付いて行くために2030年まで何らかの研修が必要となる者は59%に上るという。そうした研修は多くの人にとって、現行の職務を強化するだけにとどまらず、再定義するものとなるだろう。
製造業を例に挙げよう。反復的な作業が自動化されるにつれ、企業は、従業員に再教育を施し、AIを活用したシステム監視や製造データの処理、自動化されたワークフローの管理などをさせるようになっている。そして、そうやって組織内で蓄積された知識を、より価値の高い職務へと振り向けている。
金融や医療、カスタマーサービスといった業界でも同じような流れが起きており、従業員は定型的な処理業務に代わって、監督業務や分析作業、複雑な問題解決業務などを担うようになりつつある。
リスキリングは最終手段ではない。それは、変化に対してただ受動的に反応するのでなく、次なるチャンスを自ら形作るための戦略的な動きなのだ。


