上院で提出された超党派の新法案は、中小企業向けのAI研修提供を目的としている。
法案名は「AI For Mainstreet Act」で、1月上旬にトッド・ヤング上院議員(共和党・インディアナ州)とマリア・キャントウェル上院議員(民主党・ワシントン州)が提出した。狙いは、中小企業庁(SBA)が追加予算なしに既存の支援サービスを拡充し、全米各地の既存の中小企業開発センター(SBDC)を通じてAI研修を提供することにある。内容は、導入、業務運営の効率化、知的財産の保護といった分野をカバーする。
「本法案は、進化する今日のデジタル経済で競争するために必要なツールを、より多くの米国の中小企業が備えられるよう、研修、指導、支援を提供する」とヤング議員は声明で述べた。
中小企業とAIをめぐる誤解
企業向けテクノロジーのコンサルティング会社を経営する立場から言えば、敬意を払いつつも、政府関係者は一般的なカリキュラムがこの急速に変化する環境に追随できないことを、真に理解していないと私は考えている。こうした研修を提供するのに必要な専門性の水準も、理解していないと思う。そして、人気のAIチャットボットに単純なプロンプトを投げる以外で、企業においてAIが実際に使われる領域を3つ挙げられるかどうかも疑わしい。
中小企業は、このような形でAIを使うことにはならない。ごく短期間のうちに、AI機能は会計、顧客関係管理(CRM)、人事、受注管理など、彼らのソフトウェアアプリケーションの大半に組み込まれていく。賢い経営者はそこに目を向ける。中小企業にとっての本当のAI革命は教室で起きるのではない。すでに使っているソフトウェアの中で起きるのだ。
ChatGPT(あるいはCopilotやClaudeなど)にメールの文章を整えてもらうのは便利だ。しかし、最も優秀な経営者は、自社の基幹業務システムに搭載されたAIツールを活用して、営業サイクルの短縮、生産時間の短縮、現場作業員の再配置、コミュニケーション管理をいかに実現するかを学んでいる。
中小企業が実際にAIを活用する方法
彼らは、拡張現実(AR)ベースの建築設計にMetaのスマートグラスを使い、セキュリティと安全の監視にIntenseyeを使い、需要とサプライチェーンのボトルネック予測にEpicorを使い、梱包作業の自動化にBoston Dynamicsのロボットを使い、RingCentralのバーチャル受付を使うようになる。そして、AnthropicやOpenAIが提供するツールを用い、特定の問題を解決するための、いわゆる「バイブコーディング(vibe coding)」(自然言語でAIに指示を出してコードを生成する手法)による特化型アプリケーションを開発していく。中小企業のオーナーは、Webサイト作成にWixのようなAIアプリケーションを使い、会議管理にOtterを使い、プログラマーがアプリケーションを作るために使う最新ツールの入手先としてGitHubを活用するだろう。
建設業の中小企業は、危険なエリアを点検するために、AI搭載ドローン、AI搭載3Dメーカー、AI搭載ロボット犬をどう使うかを知りたがるだろう。小売業や飲食店の中小企業は、AI搭載のレポーティングツールやAI搭載の経理ソリューションを積極的に導入したいと考えるだろう。専門サービスを提供する中小企業は、AI搭載のスケジューリングプラットフォームやAI搭載の請求アプリケーションの使い方を学びたいと思うだろう。小規模メーカーは、収益性を予測するAI搭載の原価計算アプリケーションや、メンテナンス時期を知らせるために機械に取り付けるAI搭載センサーを求めるようになる。
では、こうした重要なことを誰が中小企業に教えるのか。SBAの官僚か。米国上院議員か。そうはならない。この知識はソフトウェアベンダーが共有すべきものだ。そして中小企業のオーナーには、自社の事業運営を支える基幹テクノロジーの提供者に働きかけ、ソフトウェアパートナーが自社の収益性向上のためにどのようなAI機能を導入しているのかを、よりよく理解する責任がある。SBAにそれはできない。
政府が中小企業のAI活用を支援できる方法
SBAのAI研修を拡充する法案を通すのは、非現実的だ。それは、SBAに原子力工学の研修を拡充しろと言ったり、中小企業オーナーにベストセラー小説の書き方を教えろと言ったりするのに近い。SBAに悪意はないが、同機関はただでさえリソースも人員も不足している。しかも、現スタッフが今日のAI技術に詳しいわけではない。多くの選挙で選ばれた代表者と同程度にすぎない。
では答えは何か。政府は邪魔をしないことだ。中小企業のオーナーがこの技術の重要性に気づけないほど賢くないなら、気づいている競合相手と渡り合うのは難しくなる。それが自由市場であり、勝者と敗者が生まれる。
私の中小企業は業務ソフトウェアを販売している。将来は他社製ソフトウェアを売るのではなく、新しいAIツールを使って、より良いアプリケーションをより手頃に開発できる機会が、私のチームに訪れると私は信じている。間違っているかもしれないが、少なくとも私は注意深く見ている。私たちは自分たちで学んでいる。すべての経営者が同じことをする必要がある。これを代わりにやってくれる政府機関など存在しない。そんな選択肢を検討することすら私には想像できない。
政府関係者への助言はこうだ。AI時代に中小企業が競争できるよう支援したいなら、最善の一手は「追加のプログラム」ではない。「摩擦を減らすこと」だ。規制負担の軽減、許認可の迅速化、税制ルールの明確化、民間のイノベーションを促す政策。AI研修はソフトウェアベンダーとその顧客に任せればよい。



