気候変動のような大きな社会問題を解決、特定地域の洪水リスクを見極めようとした取り組み
マティアスは、グーグルのチームが気候変動のような大きな社会課題の解決に取り組むためにAIを使ってきたことにも触れた。特定地域の洪水リスクを見極めようとした取り組みを、彼は説明した。
「この分野の専門家全員と話したとき、みんな『これは不可能です』と言いました」と彼は言う。「変数が多すぎます。何かを予測するには、その予測に対して非常に高い確信が持てなければなりません」。
それでもチームは挑戦した。
「現在、約150カ国を対象に、大規模な河川洪水について最大7日前に事前通知を提供するシステムが稼働しており、20億人をカバーしています」とマティアスは語り、暴風雨や山火事などに関する追加的な取り組みにも触れた。そしてAIの能力を活かした、グローバルな水文モデル(水の循環を予測するモデル)やその他のフルスケールの分析システムの構築を呼びかけた。「試してみる。次の研究課題を学ぶ。それを繰り返す。そうしてこのインパクトにたどり着くのです」。
マティアスは、科学的方法を守るべきだと意図的に訴える
さらにマティアスは、科学的方法を守るべきだと意図的に訴えた。これは、会議の別のセッションでヌーバー・アフェヤンらからも私が聞いた主張である。
「人類として誇るべきものがあるとすれば、それは科学的方法を発展させたことです」と彼は言う。「見栄えが良いものを示すだけでは足りません。科学的方法で証明しなければなりません。発表することが重要です。検証することが重要です。誰もが挑戦できるように公開することが重要です。AIによって研究を加速させる今、これはさらに重要になると思います」。
新世代のキャリア専門家が直面している課題を議論し、学生はコーディングの原則を学ぶべきと提案
2人はまた、教育と新世代のキャリア専門職が直面する課題についても議論した。マティアスは、今日の学生はJavaやC、Visual Basicといった特定の技術的な文法スキルを詰め込むのではなく、「コーディングの原理」を学ぶべきだと提案した。また、急速に変化する世界への適応も求めた。
「おそらくすべての職業において、人々がAIをツールとして活用できるよう、何らかの適応が必要です」とマティアスは語った。
以前なら数年かかっていた「研究のマジックサイクル」が加速
最後にマティアスは、自身が未来に対して何に熱意を感じているかを述べた。
「私が本当にワクワクしているのは、解決すれば新たな科学的発見や社会的インパクトをもたらすような、本当に意味のある問題に取り組めるチャンスです。研究を行い、それを問題解決に応用するという、私が『研究のマジックサイクル(魔法の循環)』と呼ぶプロセスが、AIツールによって加速されています。科学的な側面そのものを加速でき、その展開も加速できる。これまで何年もかかっていたことが数カ月でできるようになり、さらに多くの人々に門戸を開けるということは、素晴らしいことだと思います」。
実際、私たちは岐路に立っているように見える。突然、多くの扉が開かれたのだ。私の考えでは、私たちは2つの道のどちらかに進みうる。人々が科学的方法を軽視し始めれば、これらの道具は巨大な混乱と無秩序をもたらしうる。逆に、世界に意味を確保するための根本的な手段を守るなら、これらの道具は物事を解明する能力を強力に増幅させる。今後の展開に注目したい。


