毎朝いきいきと出社するメンバーと、静かに燃え尽きに苦しむメンバー。その違いはリーダーシップにある。燃え尽きの兆候がある30,768人の個人貢献者と、高いエンゲージメントを示す119,338人の直属部下を比較した包括的な分析により、両者を一貫して分けるマネジャーのリーダー行動を10項目特定した。
この研究が重要なのは、燃え尽きが組織にとって重大な課題になっているからだ。朗報もある。データは、リーダーがエンゲージメントと燃え尽きに及ぼす影響が、多くの人が考える以上に大きいことを示している。そして違いを生む行動は、本当に大切なことに注意を向けようとするあらゆるリーダーの手が届く範囲にある。
結果:燃え尽きと高いエンゲージメントを分けた10の行動
分析により、10のリーダー行動が4つの明確なテーマに集約されることがわかった。いずれも有効なリーダーシップを構成する基本次元を表している。
テーマ1:インスピレーションとエネルギー
3つの行動が、リーダーが熱意を生み出し卓越した成果を引き出す方法を定義する。高いエンゲージメントの社員を率いるリーダーは、周囲を高い努力とパフォーマンスへと鼓舞し、卓越した結果を達成するためのエネルギーを人々に与える。
- 彼らは単にタスクを割り振るのではなく、取引的な関係を超えて仕事への感情的なつながりをつくる。
- また、期待値を上回る成果を目指して人々が自らを押し上げるような、継続的な改善の雰囲気をつくる。
- 外側から圧力をかけるのではなく内発的な動機を育み、成長を義務ではなく機会として感じられるようにする。
テーマ2:目的と方向性
4つの行動は、燃え尽きの主要因の1つである「仕事が無意味に感じられる」「より大きなものとのつながりがない」といった感覚に対処する。
- エンゲージメントの高い社員は、明確な方向性と目的意識を提供するリーダーのもとで働き、
- 組織のビジョンを理解できるよう支援されることで、それを意味ある目標へと落とし込める。
- さらに、自分の仕事がより広い事業目標にどう貢献しているかを理解できるようにし、日々の業務と組織の成功を結びつける。加えて、
- 最優先の目標に集中させることで、ノイズをふるい落とし、不必要な注意散漫からチームを守る。この明確さが、現代の仕事に特有の「あらゆる方向に引っ張られる消耗」を抑える。
テーマ3:協働と信頼
2つの行動が、エンゲージメントの関係的基盤を定義する。エンゲージメントの高い社員を率いるリーダーは、職場グループの全メンバー間に高い協力レベルを促進し、協働が自然に感じられ、メンバー同士が足を引っ張り合うのではなく支え合える環境をつくる。誰か1人でも「自分はよそ者だ」と感じれば、エンゲージメントは大きく低下する。
そして最も根本的には、こうしたリーダーは職場グループの全メンバーから信頼されている。信頼は、他のあらゆるリーダーシップの有効性が築かれる基盤である。信頼があれば、人々は善意を前提に捉え、ミスを許し合い、困難な時期であっても関与し続けられる。
テーマ4:可能性を伸ばす
最後の行動は、先の3テーマすべてに関わる。有効なリーダーは、人々が当初は不可能だと思っていた目標へと背伸びするよう促すことに長けている。燃え尽きた社員は、刺激が少なく退屈しているか、挑戦が過剰で圧倒されているかのどちらかになりがちだ。一方で、エンゲージメントの高い社員は適切に「伸ばされて」いる。能力の限界付近で取り組みながらも、自信を壊すのではなく育てる形で働いている。
結論:部下に燃え尽きの兆候が見られるとき、リーダーは何をすべきか
データは、燃え尽きたチームメンバーという課題に直面するリーダーに明確な指針を与える。燃え尽きを個人の問題として扱うのではなく、状況を変えるうえで自分が決定的な役割を担っていることを認識すべきだ。
信頼とつながりから始める
介入を試みる前に、信頼の土台を評価することだ。信頼を築くには、良好な関係性、言行一致と専門性、仕事の技術的側面を理解しそれを的確に遂行する力が必要である。直属の部下と、実際の会話を持つことだ。パフォーマンスだけでなく、実際にどう感じているのか、何が仕事をより良くするのかについて話す。
仕事を「意味」に再接続する
燃え尽きは、目的の喪失から生じることが多い。各人が日々の仕事を、自分にとって重要なより大きな目標に結びつけ直せるよう支援する。問いかけたいのは次の点だ。そもそもなぜこの仕事を選んだのか。どの部分が最も意味を感じるのか。現在の仕事はミッションとどうつながっているのか。具体的な業務が顧客の成功や組織目標にどう貢献するかを、継続的に伝える。
シンプルにし、焦点を絞る
リーダーとしての権限を行使し、チームの集中を守る。やらないことを決める難しい選択を行い、組織のノイズからチームを守り、何が最重要かを明確にする。業務量を率直に見直し、「多くを雑に」ではなく「少なくをうまく」できる余白をつくる。
協働が生まれる条件を整える
孤立は燃え尽きを強める。本物の協働の機会をつくり、助けを求めやすいと人々が感じられるようにする。チームの力学に注意を払い、協力が自然で有益だと感じられる文化を能動的に育てる。
圧倒させずに鼓舞する
卓越性を鼓舞することと、疲弊へと追い込むことのバランスを身につける。成果だけでなく進捗を称えよ。結果だけでなく努力を認めよ。試し、失敗できる安全性をつくれ。持続可能な働き方を自ら実践して示せ。
すぐに行動する
燃え尽きの兆候に気づいたなら、今すぐ動くことだ。
- 燃え尽きの兆候がある一人ひとりと、率直で思いやりのある会話をする
- 本研究で特定された10の行動と照らして、自分自身の行動を点検する
- 影響の大きい行動を1つか2つ選び、具体的な改善コミットメントを置く
- 業務量調整や役割変更について、組織の支援を取り付ける
- 実行し切る——会話そのものより、会話の後の行動のほうが重要である
結論
リーダーの行動は、直属部下が燃え尽きを経験するか、エンゲージメントを保つかを左右する最も強力な決定要因の1つである。本研究で特定した10の行動は、生まれつき備わるか否かの性格特性ではない。意図と努力によって身につけられる実践である。
燃え尽きが蔓延しているチームを率いているなら、状況を変える力が自分に想像以上にあることを認識すべきだ。信頼から始め、人々を目的に再接続し、集中を守り、本物の協働を育み、持続可能な卓越性を鼓舞する。データは、これらの行動が結果を変えることを示している。あなたのリーダーシップは人生を変えうる。



