トップの時間の使い方は、会社の経営と深く関係していると言われます。何に、どのくらいの時間をかけているのか。その配分が、日々の意思決定や組織の方向性に影響を与えているケースはよくあります。
中でも就任から1年ほどのCEOの方々と対話を重ねていると、「想像以上に時間が足りず、重要だと分かっているのになかなか対応できないことがある」と悩まれている方が目立ちます。
今回ご紹介するクライアントは、サービス業で数万人の社員を抱える上場企業の60代CEOです。30代半ばで現企業に中途入社し、主に営業畑で経験を積んだ後、いくつかの役職を経てCEO就任。それからおよそ1年が経った頃、セッションのテーマとして「自身のタイムマネジメントについて整理したい」と話してくださいました。
「必要とされる喜び」に潜む罠
鈴木:今日はなぜ、このテーマを持ち込んでくださったのでしょうか。
CEO:社長になって一番驚いたのは、こんなにも時間がないのか、ということです。「この案件の会議に出てほしい」「この顧客との会食に同行してほしい」と言われ、とにかく次から次へと予定が入ります。いつの間にかスケジュールが埋まっていて、中長期の視点で経営について考える時間がほとんど取れていないと気が付いたんです。
鈴木:このままで良いのだろうかという違和感をお持ちなのですね。実際、トップの方でタイムマネジメントをテーマにされる方は、とても多くいらっしゃいます。社長の周囲では、その時間をめぐって「奪い合い」が行われます。社長はある意味で公的な存在であり、その時間は会社の共有資源のように扱われやすいのです。
CEO:必要とされている感じがして、最初は嬉しいんですよね。できる限り応えようとしているうちに、1年くらい経って、ふと思いました。経営戦略について考えられていないし、外部の会いたい人に会う時間も取れていないと。
鈴木:現状のまま進むと将来、何が起きるのでしょうか。業績は良いと伺っています。
CEO:今は良いと思いますが、5年後、10年後を考えると不安がありますね。今から種を仕込んでおかないと、どこかで急ブレーキがかかる気がします。もちろん自分だけが考えるわけではありませんが、やはり自ら中長期の戦略を描いていかないと、その議論を起こすこともできないですよね。
CEOが時間に追われ、短期的な対応に終始してしまうこと。それは個人の問題ではなく、組織としての問題です。すなわち会社が中長期のリスクを放置し、未来への投資を怠っている状態にあるのです。



