和歌山ニットを世界に
今後について山下に尋ねると、A-GIRL’S個社ではなく和歌山ニットの価値を上げていきたいという。その取り組みのひとつが「WAKAYAMA KNIT PROJECT(WKP)」。ニッターや染工場、裁縫工場などの有志メンバー10社が「WKP」ブランドを立ち上げ、キャラバン方式で世界を回っており、3年目に突入。その取り組みのなかで「海外輸出の方法や販売価格の付け方、POP UPの演出方法など、僕らが20年かけて積み上げた経験を次世代メンバーへ伝えながら、和歌山ニットのブランド力を磨いている」と山下は言う。これは、A-GIRL’Sが地元への恩返しだけで行っているのではない。繊維産業が分業構造であるためその弱点を補うために横連携で補うだけでなく、分業構造の強みを横につなぎ、和歌山ニットという「面」で勝負し、勝ち筋を増やして世界との戦いを有利にする狙いだ。
同じ理由で、山下は高付加価値を生み出す職人たちのブランディングにも力を入れる。「三つ星シェフのようになれば、彼らに憧れる人が入ってくるじゃないですか。だから職人には高級車に乗ってほしい。例えば、ポルシェを降りたら頭にタオル巻いているとか。かっこいいでしょう」と笑う。すでに尾崎のように有名になった人物もいるが、例えば、A-GIRL’Sの協力工場であるコメチウを率いる南方俊二というすご腕の職人もいる。70年以上前の編み機を自分で調整し、カシミアなど繊細な糸を使って、この編み機でしか編めない極上の生地を生み出している。まさに高付加価値を生み出している職人で、こういう人が和歌山ニットの世界にはまだまだいる。山下はこう続けた。「海外の人は、そこでしかつくれないもの、その人しか演出できないことを見ていますからね。だから、和歌山までわざわざ会いに来るわけです。そういう意味で、他産地もやるべきです。それが、日本の産業全体を強くすることですからね」
山下智広◎エイガールズ代表取締役社長。大学卒業後、丸紅香港支店にて7年間、国際ビジネスの最前線で経験を積む。2004年より海外輸出事業を牽引、17年社長就任。独自の美意識と価値観を軸に事業を展開し、和歌山ニット産地の魅力発信にも尽力している。
※本誌をご購入いただいた皆様へ
【お詫びと訂正】2026年4月号(2月25日発売号)31頁に掲載した山下智広氏の英語表記に誤りがございました。
正)TOMOHIRO YAMASHITA
ここに訂正し、ご本人様ならびに関係者の皆様、読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。


