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2026.02.24 11:22

富裕層への課税強化がグローバルな資産設計に迫る変革

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2億5000万ユーロの資産を運用する欧州のファミリーオフィスが最近、4カ国にまたがって保有資産を再構築した。これは、金融アドバイザーの多くが対応しきれていない拡大傾向を象徴している。18カ月前、この一家は3世代にわたり母国に確固として根を下ろしていた。だが現在、3つの法域で居住権を維持し、さらに2つの地域へ資産を迅速に再配置する計画を実行できる態勢を整えている。

ノルウェーの2025年9月の議会選挙は、予想外にも富裕税をめぐる国民投票の様相を呈し、1世紀の歴史を持つこの税が主要争点として浮上した。選挙戦は、税の維持を目指すヨナス・ガール・ストーレ首相の労働党と、減税または廃止を訴える右派政党の対立となった。最終的に労働党が勝利したが、その結果と激しい論戦は、世界の富裕層向けアドバイザーにとって重要な示唆を与えている。

いま顕在化しているのは、グローバルな金融センターの姿を塗り替えかねない、資本の体系的な再配分である。

政策環境

各国政府は、より連動性の高い富裕層課税戦略を追求しており、ノルウェーの経験は、こうした政策が現実世界で資本にどのような影響を与えうるかについての洞察を提供している。なお、これはあくまで一例であり、推奨を意図するものではない。個別の状況については、金融アドバイザーに相談されたい。

2022年、ノルウェー政府は富裕税を0.85%から1.1%へ引き上げた。Fortuneが報じたデータによれば、合計純資産約460億クローネ(43億ドル)に上るノルウェーの富裕層82人が、2022年から2023年にかけて国外へ移住した。

ノルウェー税務当局によると、ノルウェーに10年超居住した個人は、海外に移住して永住した後も、3年が経過するまで税務上の居住者でなくなることはできない。ノルウェーはまた、一定の条件下で未実現利益に対して出国税も課している。こうした出国に関する規則により、物理的に移転した後であっても、ノルウェーの納税義務が数年間継続し得る。

このパターンには歴史的な前例がある。フランスが2013年に「スーパータックス」を導入した際も、著名人の国外流出が相次いだ。この措置は、企業が年俸のうち100万ユーロを超える部分に50%の税を支払う仕組みで、既存の所得税と社会保障負担を合算すると、総負担率は約75%に達した。2013年と2014年のみに適用される2年間の時限措置として設計されたこの政策は、税収が4億2000万ユーロ(2013年に2億6000万ユーロ、2014年に1億6000万ユーロ)にとどまり、2015年初頭に失効した。それでも、フランスのビジネス環境に対する懸念は、その後も長く残った。

資本移動の新たな現実

現在、富の移動を支えるモビリティのインフラは高度化しすぎており、政府が富の移動を止めることは難しくなっている。かつては数年がかりの計画を要したことが、いまや数カ月で実行可能だ。

最近のデロイトの調査は、ファミリーオフィスが世界的に拡大していることを裏づけている。2024年の世界のシングルファミリーオフィスは推定8030で、2019年の6130から31%増加した。アジア太平洋地域は約2290のファミリーオフィスを擁し、欧州の2020を上回る一方、北米が3180で最多である。アジア太平洋地域は、現在から2030年にかけて、成長率で北米を上回る見通しだ。

このモビリティは個人にとどまらない。ノルウェーの銀行は顧客を追って動いている。ノルウェー最大の金融機関であるDNB銀行は、移住したノルウェー人顧客に対応するためチューリッヒに駐在員事務所を開設した。投資銀行のArctic SecuritiesとABG Sundal Collierも新たな拠点を開いた。

変化する情勢を理解する

他の法域は、移動性の高い資本を積極的に誘致している。その対比は鮮明である。

シンガポール金融管理局(MAS)の公式発表によると、MASの税制優遇を認定されたシングルファミリーオフィスは、2020年のわずか400から2023年末には1400へと3.5倍に増加した。2024年8月までに、その数は1650に達している。

UAE、スイスなど他の法域も同様の流入を報告している。こうした動きは税だけが動機ではない。政治的安定性、法制度、銀行インフラ、そしてライフスタイルに関する考慮も、多くの超富裕層(UHNW)ファミリーの意思決定において同等に重要な要因である。

富裕層ファミリーが問うべき6つの質問

この情勢を乗り切るには、包括的なプランニングとしていくつかの重要な問いに向き合う必要がある。

1. 自分たちの資産構造はどれほど脆弱か。資産、法的ストラクチャー、事業運営の拠点が、いかに単一の国に集中しているかを評価することを意味する。

2. どの法域が、家族の長期計画と整合するか。税務上の考慮は重要だが、事業運営、家族の教育ニーズ、医療へのアクセス、事業承継の計画も同様に重要である。

3. 必要になった場合、どれだけ迅速に資産を再配置できるか。デジタル資産、ポートフォリオ保有、柔軟な企業ストラクチャーは、迅速な再配置を可能にすることが多い。

4. ある法域が一夜にして敵対的になったらどうなるか。銀行インフラは重大な脆弱性をもたらす。その国が口座を凍結する可能性はあるか。資本規制を課すか。報告基準額を変更するか。配当の流れを制限するか。複数の法域における最近の事例は、政治・経済危機の局面で、銀行アクセスや資本移動のルールが急速に変わり得ることを示している。複数の安定した法域において銀行取引関係と流動資産を維持することは、ある国が突如として金融アクセスを制限したり、予期せぬ資本規制を導入したりした場合に備える上で不可欠な選択肢を提供する。

5. 複数法域にまたがるストラクチャーには、どのようなコンプライアンス要件が伴うか。複数の法域で事業を行うことは、複雑な報告義務を生む。

6. モビリティと運用効率のバランスをどう取るか。法域の複雑性が過剰になると非効率を生む。目標は戦略的なポジショニングであり、複雑さそのものではない。

変化し続ける環境に備える

この分析は、富裕層課税が本質的に欠陥があると示唆するものではない。いくつかの法域は、数十年にわたり富裕税を成功裏に維持してきた。すべての超富裕層ファミリーが、他の要素より税務最適化を優先するわけでもない。問うべきは、政府が富に課税すべきか否かではなく、いかなる税率・制度設計が持続可能であり、そして家族が避けられない変化にどう備えるかである。

国際機関が富裕層課税に対する協調的アプローチを引き続き発展させる一方で、移動性の高い資本をめぐる法域間競争は激化しており、コンプライアンス要件はますます複雑化している。

鍵となるのは、今日の変化する環境に迅速に適応できる柔軟な戦略を構築することだ。家族とそのアドバイザーにとっての問いは、この新たな「地理」と向き合うべきかではなく、どのように向き合うかである。

ここで提供する情報は、投資、税務、または金融上の助言ではない。個別の状況に関する助言については、資格を有する専門家に相談されたい。

forbes.com 原文

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